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P‐LOG ホワイト編

#9
スズシロはサンヨウジムに来た。ブレイブ(ミジュマル♂)Lv.9、ヨーテリー(♀)Lv.9、ミネズミ(♂)Lv.7の3匹で挑む。

前とは違い、入口に少年が立っている。黒いベストと白いウエストエプロンのウェイターだ。前髪をピンと立て、緑の蝶ネクタイを締めている。階段を上り、声をかける。
「こんにちは!ジムリーダーさんはどちらですか?」
「……え?僕がこの街のジムリーダーですけど。君は……?」
「スズシロといいます。今日はあなたを、倒しに来ました!」
スズシロは少年をびしりと指差した。少年は冷静に受け流す。
「そうですか、ジムに挑戦。それで君……最初に選んだポケモンは何ですか?」
「フン……ブレイブ!」
スズシロは自信満々にブレイブを出してみせた。
「……」
「なに?返事くらいしてよ!」
ボールに戻す。
「ミジュマルか……なるほど、草タイプが苦手なんですね。きちんと対策しておいたほうがいいと思いますよ。例えば、夢の跡地でポケモンを鍛えるとか」
「私には必要ありません。今すぐ勝負してください!」
「では、失礼しますね」
少年は微笑み、中に入っていった。スズシロはますますもって不機嫌だ。
「なにあの態度!?許せない!!」

ドアを開け、中に入る。
「いらっしゃいませ!こちらはトレーナーに合わせたメニューが自慢です!」
レジのウェイトレスが声をかける。あの白髪交じりの男がいる。
「どうも!自分はポケモンジムに挑戦するトレーナーをガイドする、ガイドーといいます。ジムに挑戦、ありがとうございます。記念にこれを差し上げますよ!」
ボトル入りのおいしい水をもらった。
「どうも」
左右にはモンスターボールを象徴化したオブジェがあり、台座の前面に金属製のプレートがついている。
『サンヨウポケモンジム ジムリーダー・コーン&ポッド&デント 認定トレーナー』
下に名前が続いている。ジムリーダーに勝利すれば、ここに名前が刻まれることになる。

正面には赤いカーテンがあり、炎のマークが描かれている。その前の床には緑・赤・青の丸いパネルがあり、それぞれ草・炎・水のマークが描かれている。左右にはテーブル席が設けられ、客がいる。
スズシロは気にすることなく、中央の赤のパネルを踏んだ。
「ブッブー!」
パネルが点灯し、ブザーが鳴った。
「なにこれ!?外れってこと?」
ガイドーがここぞと声をかける。
「ポケモン勝負の基本はタイプの相性なんですよね。相手のポケモンに対して、有利なタイプのポケモン、有利なタイプの技を選べば勝利は目の前っすよね。ということで、このジムはカーテンに描かれたポケモンのタイプに対して、相性のいいポケモンのタイプのスイッチを踏めば先に進めるっす!!」
「端から踏んでいけば、どれかは当たるよね!」
ガイドーはあ然とした。客席がざわつく。スズシロは左から右へとパネルの上を歩いていく。
「ブッブー!」 「ブッブー!」 「ピポピポーン!」
チャイムが鳴り、カーテンが開いた。青の水が正解だった。
「よし!」

次の部屋に入る。黒いウエストエプロンのウェイターが声をかけた。
「ようこそいらっしゃいませ、サンヨウジムへ!ここでは勝負の基本を味わっていただきます」
ウェイターは銀の盆に載せたモンスターボールからヨーテリー♂Lv.11を出した。ジムトレーナーだ。ポケモンジムの長であるジムリーダーに挑戦するには、まず門下のジムトレーナーに勝たねばならない。
スズシロもヨーテリーを出す。睨みつけるで防御を下げられ、体当たりで攻撃する。相手のHPはほとんど減っていない。Lv.2の差は想像以上に大きい。噛みつく攻撃で立て続けに怯まされ、スズシロのヨーテリーはたちまち追い詰められた。
「なんとかして、ブレイブ!」
ブレイブに替え、体当たりを受ける。2発目の水鉄砲が急所に当たり、相手のヨーテリーは倒れた。ブレイブはLv.10になった。
「よし!」
「タイプの相性を気にせず、強く鍛え上げたポケモンで勝ち進むのもありだと思います」
またカーテンとパネルがある。カーテンは青で、水のマークが描かれている。パネルは同じだ。また左から踏む。
「ピポピポーン!」
今度は緑の草だった。

ウェイトレスと戦う。ヨーテリーとブレイブでミネズミ♀Lv.10とチョロネコ♀Lv.10を倒し、ヨーテリーがLv.11になった。
「サンヨウジム自慢のトレーナーフルコース!最後はジムリーダーです」

ポケモンセンターで回復し、ジムに戻ってきた。カーテンは緑で、草のマークが描かれている。
「ブッブー!」 「ピポピポーン!」
赤の炎のパネルを踏むと、最後のカーテンが開いた。舞台があり、ジムリーダーが立っている。スズシロは階段を上った。

「ようこそ。こちら、サンヨウシティポケモンジムです」
少年がお辞儀すると、分身したかのように後ろから少年が現れた。髪を逆立て、赤の蝶ネクタイを締めている。
「俺は炎タイプのポケモンで暴れるポッド!」
さらにもう1人現れた。長い前髪で右目を隠し、青の蝶ネクタイを締めている。
「水タイプを使いこなすコーンです。以後、お見知りおきを」
3人が横一列に並び、最初の緑の蝶ネクタイの少年が話す。
「そして僕はですね、草タイプのポケモンが好きなデントと申します」
「ジムリーダーが増えた……!?」
スズシロはあっけに取られている。3人はくるりとターンし、ポーズを決める。緑が少し遅れた。
「あのですね……僕たちはですね、どうして3人いるかといいますと……」
「もう!俺が説明するっ!」
デントののろさに痺れを切らしたポッドが割って入る。
「俺たち3人はっ!相手が最初に選んだポケモンのタイプに合わせて、誰が戦うか決めるんだっ!」
「そうなんだよね。そして、あなたが最初に選んだパートナーは水タイプなんだよね」
コーンが続ける。ポッドとコーンが後ろに下がった。
「はい……というわけで、草タイプのポケモンが好きな僕、デントがお相手します」
「なんだよーっ!俺、暴れたかったのになー!!」
「よかったですね。相手がこのコーンじゃなくて」

「相手が誰だろうと、勝つだけのことです!」
「はい。僕でよろしければ、真心を込めてお相手させていただきます」
デントはヨーテリー♂Lv.12を出した。
「いけっ、ヨーテリー!」
「キャンキャン!」
スズシロもヨーテリーを出した。今度はLv.1しか違わない。そう苦戦はしないはずだ。
「ヨーテリー、噛みつく攻撃!」
スズシロのヨーテリーのほうがわずかに速い。デントのヨーテリーが怯んだ。
「ああ!僕のポケモン!」
デントが声を上げる。だが、どこか空々しい。2匹は噛みつく攻撃で削り合い、押されたデントが傷薬を使う。最後は素早さに勝るスズシロのヨーテリーが押し勝ち、Lv.12になった。
「よし!」

「……あれ?もしかして、僕のポケモン、あと1匹?」
「それを倒せば、私の勝ちということですね!」
デントはヤナップ♂Lv.14を出した。
「キルキキッ!」
猿のような姿で、頭には樹木に似た房があり、細長い尾の先端は葉のような形をしている。頭と下半身が緑色、鼻から腹にかけてがクリーム色をしている。
見たことないポケモン。レベルも高い……でも、こっちは3匹いる。とにかく攻撃すれば!
ヤナップは身軽な動きで跳び回り、ヨーテリーは追い切れない。ヤナップが頭上で体をひねった。振り下ろされた尾のつるの鞭がヨーテリーの背中を打つ。
「噛みつく攻撃!」
かろうじて耐えたヨーテリーは振り向き、ヤナップに噛みつく。
「がんばって!」
「キャウッ!!」
つるの鞭が打ち払う。ヨーテリーは弾き飛ばされ、気を失った。
「ヨーテリー!……くっ、ブレイブ!」
スズシロはヨーテリーをボールに戻し、ブレイブを出す。ヤナップは奮い立てるを使った。攻撃と特攻が上がる。
「水鉄砲!!」
水流がヤナップを直撃する。飛び散るしぶきが視界を遮る。

「やったか……?」

視界が晴れる。ヤナップは悠然と立っている。
「なに……!?」
ブレイブ最大の技も、ただ体を濡らしたに過ぎない。デントは微笑み、ヤナップはふてぶてしく笑った。

「スズシロ」
ブレイブが初めて口を開いた。
「ブレイブ!」
「ポケモンじゃんけん、覚えてるか?」
「ポケモンじゃんけん……!」

『ねえねえ、ポケモンじゃんけんしようよ!』
『うん、いいよ!』
『じゃあ、いくよ!ポケモンじゃんけん、いっせーの……』
『みず』 『くさ』
『あなたがみずで、あたしはくさ……みずタイプはくさタイプによわい!ということで、あたしのかち!』
『負けちゃった』

空気を裂く音がし、一筋の衝撃が走る。袈裟掛けにつるの鞭を受けたブレイブは、ゆっくりと崩れ落ちた。
「……俺たちは……この場に立った時点で負けていたんだ」
「なんで、なんで先に言ってくれなかったの!?そうすれば!」
「お前は……言い出したら聞かないから……な……」

「ブレイブーーっ!!」

バッジ 0個  ポケモン図鑑 見つけた数 7匹/捕まえた数 4匹  おこづかい 5380円  プレイ時間 6:07



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#10
「ここは……」
ブレイブは目を覚ました。暗い。ベッドの上だ。周りではスズシロ、ヨーテリー、ミネズミが眠っている。いつの間にか夜になっていたようだ。
スズシロの頬には涙の跡がある。ブレイブは指の背でそっと拭い、再び眠りについた。

ポケモンセンターを朝日が照らす。スズシロとポケモンたちは黙々と朝食を済ませ、部屋に戻った。
「ごめんなさい!私のせいで、みんなにつらい思いをさせてしまって……ごめんなさい」
スズシロは深くうなだれた。ヨーテリーとミネズミはしゅんとしている。ブレイブが言った。
「わかればいいさ。俺がやられた後のことを話してくれ」
「うん……残ったミネズミは何もできずにやられて、私はお金を払って、ポケモンセンターへ走って……」
「そうか……スズシロ、俺たちに足りないものは何だと思う?」
「足りないもの……?」
「俺は水タイプ、ヨーテリーとミネズミはノーマルタイプ、ヤナップは草タイプのポケモンだ」
「うん」
「ジムリーダーに最初に選んだポケモンを聞かれた時点で、それに強いタイプのポケモンを使ってくると気づくべきだった。ご丁寧に『対策したほうがいい』とまで言っている。用意しているのは最初に選んだポケモンに的確に対応できる組み合わせ、同じ草・炎・水だと推測できる。つまり、ジムリーダーが使うのは、水タイプに強い草タイプということになる」
「うん」
「草タイプのポケモンは水・草・電気・地面タイプの技に強く、炎・氷・毒・飛行・虫タイプの技に弱い。草タイプの技は水・地面・岩タイプのポケモンに強く、炎・草・毒・飛行・虫・ドラゴン・鋼タイプのポケモンに弱い。それがタイプの相性という知識だ」
「知識……」
「だが、俺たちには草タイプのポケモンに強い技もなければ、草タイプの技に強い者もいない。ならば、相性にこだわらず、純粋に力で勝負するしかない。それがレベルという力だ」
「力……」
「俺たちにはその両方が足りなかった。では、お前が今すべきことは何だ?」
「ポケモンを知り、ポケモンを鍛えること」
「そうだ。下を向いて立ち止まっているんじゃない。前を向いて歩き出すんだ!」
「うん!」
スズシロはすっくと立ち上がった。3匹が見つめる。
「ブレイブ、ヨーテリー、ミネズミ。私、みんなの力を引き出せるように、ちゃんと勉強する!だから、私といっしょに戦って!」
「おお!」 「キャン!」 「キャック!」


トレーナーズスクールへ行き、ポケモンについて基礎から勉強する。
「タイプは17種類あり、それぞれ相性がある。与えられるダメージは相性が良いとき2倍に、悪いとき2分の1になる……」
「能力はHP・攻撃・防御・特攻・特防・素早さの6つに分けられる。技は攻撃技・特殊技・変化技の3つに分けられる……」
「状態異常には毒・麻痺・眠り・凍り・火傷がある。状態変化には混乱・メロメロ等がある……」
覚えることはたくさんある。それは午後まで続いた。


次は街の人に話を聞き、情報を集める。
マンションで若い男女に。
「僕は好きで炎タイプのポケモンばかり育てているのさ。だけど、水タイプのポケモンにまるで歯が立たなかったのさ……はあ
……他のタイプのポケモンも育ててみようかな」
「6匹もポケモンを育てるのはなかなか大変だから、3匹ぐらいを重点的に強くするトレーナーもいるそうよ」
「なるほど」

少年に。
「上はダメダメ!!今実験中なんだって!マコモ姉ちゃん、すっげー顔して言ってたもん!」
マコモ?どっかで聞いたような……

男に。
「おっ!トレーナー!モンスターボールは足りているかい?遠慮しなくていいから、これを持って行きなよ!」
「ありがとうございます!」
スーパーボールをもらった。上半分が青く、赤い突起がついている。モンスターボールの上位品だ。
「ボールはいくらあっても困らないったら困らない!アドバイスとしては、できるだけいいボールを使ったほうがポケモンは捕まえやすいね!」

路地裏で強面の男に。
「暗いところにもポケモンはいる。そんなときは、このダークボール!お前にも1つ分けてやるよ!」
「ありがとうございます!」
ダークボールをもらった。全体が黒く、緑の模様が入っている。
「夜や洞窟の中でダークボールは効果を発揮する。あと名前がいいよな!ダークだぜ、ダーク!」

道で少女に。
「夢の跡地で鍛えているトレーナーたちもいるわ。よければ、あなたも行ってみれば?何か発見があるかもよ」
「夢の跡地……そういえば、ジムリーダーも夢の跡地がどうとかって言ってたっけ。ありがとう!」

『この先、夢の跡地 新米トレーナーの遊び場所』
夕方、スズシロは街の東にある夢の跡地に来た。使われなくなった工場の跡だ。塀の前で少女と少年がポケモンを出し、ブロックに少女が腰かけ、それを眺めている。

「こんにちは!練習中?」
「アタシたち!ここで修行してるの!ね!アナタもいっしょにポケモン鍛えましょ!」
「うん!よろしくね!」
少女はチョロネコ♀Lv.8、スズシロはミネズミを出す。
「体当た「ニャアーッ!!」
ミネズミは鳴き声を受け、体当たりする。攻撃を下げられたため、チョロネコのダメージは小さくなっている。
「こういうときは、睨みつけるで相手の防御を下げればいいんだよね」
「そうだ。攻撃を下げられた分、相手の防御を下げれば相殺できる」
ブレイブが答える。ミネズミは引っかく攻撃を受け、チョロネコを睨みつける。
「体当「ニャアーッ!!」
再度の鳴き声で、ミネズミはさらに攻撃を下げられてしまった。体当たりする。
「またあ!」
「素早さで負けているんだ。そう思うようにいくもんじゃないさ」
「体「ニャアーッ!!」
三度鳴き声を受ける。体当たりが急所に当たり、チョロネコは倒れた。ミネズミはLv.8になり、我慢を覚えた。
「やっとか……」
「攻撃が急所に当たると、自分の下がった攻撃・特攻、相手の上がった防御・特防を無視して、2倍のダメージを与えることができる」
少女が2匹目のチョロネコ♀Lv.8を出し、スズシロはブレイブに替えて鳴き声を受ける。
「水鉄砲!」
ブレイブは水鉄砲を放ち、引っかく攻撃を受ける。
「いいぞ。水鉄砲は特攻に依存する特殊技だ。攻撃を下げられても関係ない」
「うん!水鉄砲!」
チョロネコを倒した。スズシロの勝ちだ。
「よしっ!」

続いて少年のミネズミ2匹、ヨーテリーと戦って勝ち、ミネズミがLv.9になった。
「オレには目標がある!ポケモンたちがいてくれる!だから、どこまでもがんばれる!」
スズシロは、その言葉に感じるものがあった。

もう1人の少女に話しかける。
「君はどう?」
「ねえねえ、あなた!初めてもらったポケモンはなあに?」
「え?ミジュマルだけど」
「ミジュマルなのね!じゃあ、このバオップはぴったりよ。あなたのミジュマルが苦手な草タイプのポケモンに有利なタイプのポケモンだもん!」
少女はバッグからモンスターボールを出し、スズシロに見せた。
「ねえねえ、あなた。このバオップが欲しい?」
「……」
スズシロは少し考え、答えた。
「ううん。今はいい」
「あらら。欲しくなったら、また話しかけてね!」
「ありがとう!」


スズシロは街へと戻る。ブレイブが聞いた。
「よかったのか?せっかくの炎タイプだったのに」
「そりゃあ、いたほうがいいに決まってるよ?でも、私はこの勝負を君たち3匹といっしょに戦って勝つって決めたんだから。だからいいの」
「まったく、言い出したら聞かないな……」
「この辺もうトレーナーいないみたいだし、明日の午後は草むらで特訓かな。覚悟しといてよ!」
「おお!」

夕食後、ロビーのパソコンを使い、スクールで学んだことを復習する。自分のパソコンをチェックすると、新着メールがあった。
「ベルからだ!えーと……」
『勝負してくれてありがとう!ドキドキで、とってもよかったです!また勝負しようね!BYEBYE  トレーナー・ベル』
「緑の便せんも絵文字もかわいい!……ありがとう、ベル」

勉強と実践の日々が続く。スズシロは再戦への自信をつけていった。

バッジ 0個  ポケモン図鑑 見つけた数 7匹/捕まえた数 4匹  おこづかい 5620円  プレイ時間 7:52



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#11
『次回まで、ごきげんよう!』
「ごきげんよう!」 「キャン!」
「じゃあ、行こうか!」
「おお!」 「キャン!」 「キャック!」
スズシロはテレビを消し、ポケモンたちをボールに戻す。バッグを肩にかけ、ポケモンセンターの個室を出る。
「その前に朝ごはん!」


『サンヨウシティポケモンジム リーダー・…… トライアルトライアングル』
ジムの建物を見上げる。あれから4日が経ち、ブレイブはLv.12、ヨーテリーとミネズミはLv.13になった。
「勉強した。みんな強くなった……今なら、勝てる!」


奥の部屋でジムリーダー3人と対面する。
「真心を込めてお相手させていただきます」
「よろしくお願いします!」
デントはヨーテリーを。
「いけっ、ブレイブ!」
「むんっ!」
スズシロはブレイブを出す。ヨーテリーは奮い立てるを使い、攻撃と特攻を上げる。
「水鉄砲!」
「おおっ!」
ブレイブは水鉄砲を放つ。さらに奮い立てるを使ったヨーテリーが噛みつき、ブレイブが怯んだ。
「くっ!」
「がんばって、ブレイブ!」
ヨーテリーが噛みつき、ブレイブのHPがわずかになった。
そのとき、ブレイブの体に変化が起きた。全身に激しい水の力がみなぎる。
「……来たぜ!激流!」
ポケモンが持つ特有の性質「特性」。ブレイブの特性・激流は、HPが3分の1以下のとき、水タイプの技の威力が1.5倍となるのだ。
「うん!水鉄砲!!」
「おおっ!!」
激しい水流が放たれる。それはヨーテリーを吹き飛ばし、壁に叩きつけた。デントは驚き、振り向く。ヨーテリーは完全に気を失っている。

デントはヤナップを出した。
「ご苦労さま、ブレイブ。いけっ、ミネズミ!」
「キャックウ!」
スズシロはブレイブをミネズミに替え、つるの鞭を受け止める。
「砂かけ!」
ミネズミは攻撃を耐えつつ、ヤナップの顔めがけ砂をかける。狙いを定めることができず、つるの鞭が空を切り始めた。ヤナップは後退し、一撃に賭けるべく奮い立てるを繰り返す。
「がんばったね、ミネズミ。いけっ、ヨーテリー!」
「キャンキャン!」
ミネズミをヨーテリーに替える。ヨーテリーは睨みつけるで相手の防御を下げ、体当たりで攻撃する。
ヤナップが攻撃に転じる。威力を増したつるの鞭は一振りでヨーテリーを追い詰め、ヨーテリーもまた体当たりでヤナップを追い詰める。デントは傷薬を使い、ヤナップを回復させた。スズシロはその隙を見逃さなかった。
「とどめの体当たり!!」
「キャン!!」
ヨーテリーの体当たりが腹に決まる。ヤナップは後ずさりし、仰向けに倒れた。
「……えーっと、終わっちゃいました?」

「ジムリーダーに、勝ったーー!!」
スズシロは歓喜の声を上げ、ヨーテリーが飛びつく。ブレイブはLv.13になった。
「キャキャン!」
「よくやったね、ヨーテリー!」
「スズシロ、お前もよくやったな」
「うん!ありがとう、ブレイブ」

「……驚いた。君、すっごく強いんだね。ポッドやコーンでも勝てない相手だったみたい……」
デントはコーンが持ってきたケースからジムバッジとバッジケースを取り、スズシロに手渡した。ジムバッジは菱型が縦に3つ連なったような形をしており、金の地に青・赤・緑の色が入っている。
「きれい……ありがとうございます!」
バッジケースを開き、8つある窪みの一番左にはめ込む。
「ジムバッジはトレーナーの強さの証です。バッジを1つ持っていれば、人と交換したポケモンでもLv.20までなら命令を聞いてくれます。あと、これももらってください」
今度はポッドが持ってきたケースから小型の光ディスクと長円形をした機械を取り、手渡した。ディスクには「技マシン83」と書かれている。ポケモンに技を覚えさせる機械「技マシン」のセットだ。
「ありがとうございます!」
「その技マシン83の中身は『奮い立てる』といいます。『奮い立てる』を使えば、攻撃と特攻が上がります!ちなみに、技マシンは何度でも使えるんですよ」
「技マシンは何度だって使えるということはっ!連れているポケモンすべてに同じ技を教えることだってできるんだぜっ!!」
「もし、サンヨウシティのジムリーダーが17人兄弟だったら、それぞれがタイプごとのスペシャリストになってるのかもね」
ポッド、コーンが言った。デントが締めくくる。
「僕たち、イッシュ地方ではまだ駆け出しのジムリーダーです。ということは、他のジムリーダーはもっと強いってことですよね。ふう、がんばらないと……ですね」
スズシロは頭を下げた。
「ポッドさん、コーンさん、デントさん、ありがとうございました!」


ガイドーはプレートの打刻を終え、オブジェに取りつけた。
『サンヨウポケモンジム ジムリーダー・コーン&ポッド&デント 認定トレーナー  スズシロ』
「私の名前……!」
喜びを新たにするスズシロに、ガイドーは言った。
「ジムバッジを手に入れたその素晴らしい瞬間を、いつまでも覚えていてほしいっすね」

ジムを出る。
「次のジムがあるのはシッポウシティか。私たち、かなり強くなったよね。今度は楽勝かな!」
「おいおい、あんまり調子に乗るなよ。修行は一生なんだからな」
「ちょっとくらい乗らせてよ。そのほうがいい結果が出るんだって!」
「はいはい」
階段を下りたところで、スズシロは白衣の女と目が合った。ストレートの黒髪は非常に長く、膝裏まである。黒い下縁の眼鏡をかけ、花の髪留めをつけている。
「ヤッホー!アタシはマコモ。アララギ博士に頼まれて、アナタに渡すものがあるんだ」
「……思い出した!アララギ博士が会うようにって言ってた!」
「ちょっとついてきて!」
「はい!」


スズシロはマコモの後をついていき、通り沿いのマンションに入った。この前に来たところだ。
「アナタたち、イッシュ地方のすべてのポケモンと出会うんだって?」
「はい、そう言われてます」
「あっ、階段はこっちよ!アタシの部屋、この上なんだ。さ、上がって!」

階段を上ると、大きな機械が目に入った。多数のケーブルが延び、ベッドにつながっている。ポケモンセンターと同型のパソコンもある。
2人はテーブルに着いた。少女が紅茶を出す。髪を二つ結びにし、青い下縁の眼鏡をかけている。
「あらためて自己紹介するね。アタシはマコモ。見てのとおりの研究家」
「スズシロです」
「ちなみに、研究しているのはトレーナーについてなの!で、アララギ博士とは大学時代からの友達でね、アナタたちの手助けを頼まれたんだ」
「そうだったんですか」
「ということで!アタシからのバックアップよ。この秘伝マシンをどうぞ!」
マコモはディスクを差し出した。「秘伝マシン01」と書かれている。
「ありがとうございます!」
「ポケモンが覚える技には、戦っていないときでも使える技があるの!その秘伝マシンで、居合い切りという細い木を切ることができる技を覚えさせることができるわ。しかも、秘伝マシンも技マシンと同じで何度でも使えるのよ!すごいでしょ!……ただ、秘伝は覚えさせると忘れるのが大変だけどね」
「そうなんですか」
スズシロはカップを口に運んだ。
「……で、手助けじゃなくて、お願いしてもいいかな?」
「どんなことですか?」
「あのね、サンヨウシティの外れに夢の跡地っていわれてる場所があるんだけど、そこにいるポケモン、ムンナが出す『夢の煙』が欲しいんだ。それがあれば!ゲームシンクといって!いろんなトレーナーのレポートを集めることができるようになるの!」
マコモは大げさな身振りで言った。
「ゲームシンク……?」
「アララギからポケモン図鑑の完成を頼まれているんでしょ?……定期的に図鑑を更新するのも大変ね」
そういえば、ずっとほったらかしだったっけ……まずいな。
「あっと!話がそれちゃった!夢の跡地にいるムンナが出す『夢の煙』を取ってきてね!お願いします!お願いします!」
マコモは手を合わせ、必死の形相で懇願する。
「わ、わかりました!わかりました!私に任せてください!」
採取器を預かる。先ほどの少女が来て、スズシロに話しかけた。
「あなた、トレーナー?」
「はい」
「じゃあ、ポケモンセンターのパソコン使っていますか?あたし、あのボックスを管理しています、ショウロです」
「『誰かのパソコン』の『誰か』って、あなただったんですか!ベルに教えてあげなきゃ!……あ、スズシロといいます。ボックスは、まだ1回しか使ったことがなくて……」
「あのう……あなた、バトルボックスご存じですか?」
「いいえ」
「では、簡単に!バトルボックスには、対戦でよく使うポケモンを登録しておけるの!ぜひぜひバトルボックスを使ってね。そこのパソコンからでもポケモンを登録できるから!」


ポケモンセンターに行き、ポケモンたちを回復させる。
「お昼ごはん!……は、あそこだよね」
スズシロとポケモンたちは、ジムリーダー3人が給仕するサンヨウジムでランチを満喫した。
夢の跡地に向かう。そこに忍び寄る影とは。

バッジ 1個  ポケモン図鑑 見つけた数 7匹/捕まえた数 4匹  おこづかい 7300円  プレイ時間 8:37



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#12
スズシロは夢の跡地に来た。門は柵で塞がれている。横を見ると、コンクリートの塀に大きな穴が開いている。前に生えている細い木を切れば通れそうだ。
「これは居合い切りだよね」
バッグから技マシンのドライブを出す。取扱説明書を片手に、カバーを開けて居合い切りのディスクを入れる。手持ちの中ではブレイブとミネズミが覚えられるようだ。
「ノーマルタイプの技だし、ミネズミでいいかな」
モンスターボールをセットする。ポケモンは技を4つまで覚えることができる。ミネズミはすでに体当たり・噛みつく・睨みつける・砂かけを覚えている。あまり使わなかった睨みつけるを忘れさせることにする。ボタンを押すと技のデータが上書きされ、ミネズミは居合い切りを覚えた。ボールを外して技マシンをしまい、ミネズミを出す。
「お願い、ミネズミ。この木を切って。居合い切り!」
「キャックウ!」
爪が鋭く光る。ミネズミは前足を一振りし、木を切り払った。
「おー!すごい!」
ミネズミは得意げだ。スズシロに人影が迫る。

「あっ、スズシロも不思議なポケモンを探すの?」
「ベル!」
ベルは穴をくぐり、先に入っていった。相変わらずマイペースだ。スズシロとミネズミも続く。

「……ふーん。ベルもマコモさんに会ったんだ。じゃあ、ショウロさんにも会ってるよね」
「それにしても、夢を見せるって、どんな仕組みなんだろう?」
2人と1匹は辺りを見回す。
「ムウウ……」
「ねえねえ!なんだか壁の向こうから物音聞こえなかった!?」
「うん、聞こえた!」
「ねえねえ、行ってみようよ!」
「うん!」

大きな建物に入る。屋根はほとんど落ちている。ドラム缶が無造作に置かれ、床には穴が開き、草も茂っている。爆発でもあったかのような壊れ方だ。
ピンク色をした丸いポケモンが1匹、ふわふわと浮いている。つぶらな目は赤く、体には薄紫の花柄がある。
「……ムウウン」
「このポケモンの鳴き声だ。これがムンナ……」
ムンナはゆっくりと遠ざかっていく。
「あっ、待ってえ!」

「ムンナ、見っけ!」
柱の陰から2人組が現れた。ペールブルーのフードをかぶった男女だ。胸にはシンボルマークがある。カラクサタウンでの出来事がスズシロの脳裏をよぎる。
「プラズマ団!」
2人組はムンナの行く手を塞いだ。男が声を荒らげる。
「ほらほら!夢の煙を出せ!」
「……ムウ!」
ムンナは怯えている。ベルが声を上げた。
「ちょっと!!あなたたち、だあれ?なにしてるの!?」
「私たちのことか?私たちプラズマ団は、愚かな人々からポケモンを解放するため、日夜戦っているのだ」
「なにをしてるのか?ムンナやムシャーナというポケモン、夢の煙という不思議なガスを出して、いろんな夢を見せるそうじゃない。それを使い、人々がポケモンを手放したくなる……そんな夢を見せて、人の心を操るのよ」
「そんなことをたくらんでいたなんて……」
男がムンナを蹴りつけた。
「!!」
「ム……ニュ……」
「おら!夢の煙を出せ!」
「夢の煙を出させるためにポケモンを蹴っているの?ひどい!どうして?あなたたちもトレーナーなんでしょ?」
女はベルに言った。
「そうよ。私たちもポケモントレーナー。だけど、戦う理由はあなたたちと違って、ポケモンを自由にするため!」
「そして、私たちがポケモンを自由にするとは!勝負に勝ち、力ずくでポケモンを奪うこと!」
男がモンスターボールを取り出す。
「というわけで、お前たちのポケモン、私たちが救い出してやる!」
「えええ!助けて、スズシロ!」

「プラズマ団……その正体、確かに見た!!」

スズシロは指を差し、言い放つ。男はミネズミ♂Lv.10を出した。
「いけっ、ミネズミ!噛みつく攻撃!」
男のミネズミは我慢し、スズシロのミネズミが噛みつく。我慢は2度の行動の間に受けたダメージを2倍にして返す技だが、力の差は歴然としている。スズシロのミネズミが体当たりし、返す間もなく男のミネズミは倒れた。
「プラーズマー!ゆ、夢が!」
「子供だと思って見くびったか?まあいい。次は私だ」
女はチョロネコ♀Lv.10を出した。ミネズミは引っかく攻撃を受け、体当たりする。体当たりでチョロネコを倒した。
「プラーズマー!これは悪夢ね!」
「……まさか、2人して負けるとはな!だが、夢の煙は手に入れないといけない!」
男は再びムンナを蹴った。
「おら!夢の煙出せ!!」
「やめたげてよお!」
ベルが悲鳴を上げる。
「プラズマ団!今すぐやめないと……!」

一瞬、視界が白く染まる。左から法服の男が現れた。
「……お前たち、何を遊んでいるのだ?」
「ゲーチス!」
スズシロは身構える。右からもゲーチスが現れた。
「我々プラズマ団は、愚かな人間とポケモンを切り離すのだぞ!」
「これはいったい……」
左右のゲーチスが消え、中央からゲーチスが現れた。
「その役目、果たせないというのなら……!」
語気を強めるゲーチスに、プラズマ団の2人組は狼狽する。
「こ、これは……!仲間を集めるとき……演説で人を騙して操ろうとするときのゲーチス様じゃないわ!」
「ああ……作戦に失敗したとき、そして処罰を下されるときのゲーチス様……」
「とにかく、今すぐ謝って許してもらいましょう!」
2人組は足早に去っていった。再び視界が白く染まる。


「ムニャア!」
ポケモンはいつの間にかそこにいた。ムンナと似ているが、首から下が薄紫色をしており、大きさは2倍近い。額の穴からピンク色のガスが棚引いている。ゲーチスの姿がない。
「……今のってなあに?あのゲーチスって人、あちこちにいたし、本物じゃあないよね……もしかして、夢?」
「そうか、これが夢の煙の力……!」
「それにあのポケモン……」

「わっ!」
2人は背後からの声に振り返った。
「マコモさん!」
「待ちきれなくて来ちゃった。って、ムシャーナ!?」
「ムシャ?」 「ムニィ」
2匹のポケモンは連れ立って奥へと消えていった。
「何があったの?」
「あっ、マコモさん。あのですね、ムンナがいて……でも、プラズマ団がムンナを……で、ムシャーナが来て……なんだか夢?を見せたのかな。そうしたら、プラズマ団が……」
ベルが説明する。
「……なるほどね。ムシャーナはね、ムンナが進化したポケモンなの。で、仲間のムンナのピンチを知って、夢を現実にする力でムンナを助けたのね……って、ちょっと待って!」
マコモは、まだ残るピンク色のガスに気づいた。
「これって夢の煙!?」
スズシロから採取器を受け取り、ガスを採取する。
「これでアタシの研究が完成するわ!アナタたち、後でアタシの家に来てねー!!」
マコモは上機嫌で駆けていった。

「ふええ。なんだか、すっごくドタバタしちゃったねえ」
「うん、大変だったね……」
「スズシロはマコモさんの家に行ってみたら?」
「ベルは?」
「あたし?あたしはね、さっきのポケモン探すんだから!」
「そう。じゃあ、がんばってね!」
ベルは残り、スズシロはマコモの家へ向かった。

ついに本性を現したプラズマ団。その野望が動き出す。

バッジ 1個  ポケモン図鑑 見つけた数 7匹/捕まえた数 4匹  おこづかい 8100円  プレイ時間 9:38

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