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P‐LOG ホワイト編

#13
スズシロはマコモの家に戻ってきた。
「お待たせしました!」
マコモは満面の笑顔で大きな機械を示した。
「じゃじゃーん!アナタのおかげで夢の煙が手に入って、いろんなトレーナーのレポートを集められるようになったわ!本当にありがとうね!」
「どういたしまして!」
「感謝の気持ちとして、Cギアを使えるようにするね!Cギアとは、赤外線や無線、Wi-Fiなど、通信に関係するデバイスよ」
マコモが棚からCギアを取り、2人はテーブルに着いた。小さめのノートほどの横長の長方形で、全面がタッチパネルになっている。電源を入れると、赤・青・黄の3色のハートと様々なアイコンが表示された。
「ほら!Cギアが起動して画面が現れたでしょ!その画面の右下にある?マークにタッチすれば、Cギアの説明が読めるわ」
「ありがとうございます!」
「さてと、ゲームシンク……トレーナーのレポートを集めるシステムについて説明したいの。もうちょっとつき合ってくれる?」
「はい」
「ゲームシンクって、夢の煙を利用して、眠っているポケモンの記憶を取り出せるようになったの!そう!世界中のトレーナーのレポートを集められるの!!」
マコモは立ち上がった。
「更にすごいことがわかって、ゲームシンクで眠らせたポケモンは、寝ている間に夢を見るの。で、ゲームシンクで眠らせたポケモンを起こすと、そのポケモンが見た夢は、イッシュ地方の中心にあるハイリンクという空間で現実となっているのよ!!」
「夢が現実に……!?」
「ゲームシンクってすごいでしょ!どう、興味出た?」
「はい!」
「興味が出たら、アナタもレポートを送ってみてね。詳しいことは奥のパソコンにまとめているから、よければチェックしてね!」
ショウロが来た。
「あっ、トレーナーさん!お姉ちゃんのお手伝い、どうもありがとうです!これはあたしからです。遠慮せずにもらってください」
「ありがとうございます!」
小さな電子手帳だ。
「そのともだち手帳に登録したお友達と、Wi-Fiコネクションを使って、ポケモン対戦やポケモン交換を楽しむことができるのよ。登録の仕方を詳しく説明するとね、バッグの大切なものの中のともだち手帳を使って、友達から教わったコードを直接入力するか、CギアのIR通信を使えば、ばっちり登録できます!」
スズシロはCギアとともだち手帳をバッグにしまった。
「マコモさん、ショウロさん、色々とありがとうございました!」

スズシロは再び夢の跡地に来た。ベルは、まだムンナを探している。ポケモン図鑑を埋めるのも、この旅の目的の一つだ。
草むらに入り、まだ見ぬポケモンを探す。ミネズミやチョロネコが多い。手持ちの先頭にしているミネズミ(♂)の特性は逃げ足、素早さ・技・特性にかかわらず、野生のポケモンから必ず逃げることができる。ポケモン探しには適した特性だ。


「ムウウン」
「ムンナだ!」
しばらくして、ムンナ♀Lv.8が現れた。ミネズミは体当たりし、ムンナはあくびをする。相手を眠りに誘う技だ。スズシロは距離を詰め、モンスターボールをそっと投げる。無事捕獲できた。図鑑を確認する。
「ふーん、エスパータイプなのか。そういわれれば、それっぽいかも」

「なんだろ?」
草むらが大きく揺れている。スズシロは注意深く足を踏み入れた。
「ムシャアアン」
「ムシャーナ!」
ムシャーナ♂Lv.11が現れた。ミネズミの体当たりにもHPはほとんど減らない。ムシャーナの催眠術は幸いにして外れた。
「さすがは進化形、手ごわい……!エスパーに強いのは悪だから、噛みつく攻撃!」
ミネズミはムシャーナに噛みつく。今度はさすがに効いている。ムシャーナは丸くなるで防御を上げ、サイケ光線を放つ。虹色の光を受け、ミネズミのHPがたちまち半分を切った。
スズシロはモンスターボールを投げる。しかし、吸い込まれたムシャーナはすぐに出てきてしまった。乱獲防止のため、一度捕獲に失敗すると、モンスターボールは機能を停止してしまう。ミネズミは催眠術で眠らされた。2個目も失敗し、ミネズミはサイケ光線に倒れた。
「……クゥ」
「ああっ!ミネズミ!」
スズシロは急いでミネズミをボールに戻した。ブレイブ(ミジュマル♂)を出し、3個目のモンスターボールを投げる。
「お願いっ!」
ムシャーナを吸い込んだボールが揺れ、スズシロは祈るような気持ちで見つめる。ロックがかかり、ボールの動きがぴたりと止まった。捕獲成功だ。
「やった……早くポケモンセンターに行かなきゃ!ごめん、ベル!また今度ねー!」
うらやましげなベルを後に、スズシロはポケモンセンターへと走った。

「キャックウ!」
「ごめんね……」
サンヨウシティポケモンセンター。回復が終わり、ミネズミは元気になった。肩を落とすスズシロに、ブレイブが言った。
「捕まりやすいポケモンもいれば、捕まりにくいポケモンもいる。これからは眠りや麻痺にする技が必要になるな」
「うん。あくびが使えるムンナを連れていくことにするよ。まずは、みんなと同じくらいにレベルを上げないとね」
捕獲した2匹をチェックする。スズシロは思い出した。
「そうだ!ゲームシンク、試してみよっ!」
Cギアの電源を入れ、ヘルプに目を通す。パソコンのボックスにムシャーナを預け、眠らせる。そして、ムシャーナが見ている夢を覗く……
「これ……ただのゲームだ」
ディスプレイには空に浮かぶ小さな島が映し出された。家の前でポケモンの絵がぎこちなく動いている。
スズシロは淡々と操作する。畑に木の実を植える。虹の橋を渡って大きな島に行く。森を進んでいると、ポケモンが現れた。ミニゲームをして仲よくなる。難易度はそこそこだ。
「……まあ、マコモさんって、ちょっと変わった人だったしね」
終了し、ムシャーナを起こす。

「気を取り直して、GTSでも試してみるか!」
GTS、グローバルトレードステーションは、Wi-Fiコネクションを利用し、自動的にポケモンの交換を行うシステムだ。交換に出すポケモンを預け、希望するポケモンの条件を指定する。閲覧者が条件に合うポケモンを出せば交換が成立する。
スズシロは階段を上り、2階デッキの右の窓口に来た。大きな地球儀が回っている。
「グローバルターミナルへようこそ!Wi-Fiコネクションをご利用ですか?」
「はい!GTSをお願いします!」
奥のエレベーターに乗り、地下に降りる。小さな部屋には操作パネルが設置されている。チョロネコをポカブ希望で預けた。
次はこちらから探してみる。ディスプレイにトレーナーと預けているポケモンが表示される。聞いたこともない名前ばかりで、条件に合うものはさっぱり見つからない。終了し、エレベーターで上に戻る。
「気は取り直せなかった……」

「ムウン」
3日が経った。草むらでのトレーニングの結果、ムンナはLv.12になった。技は新たにサイケ光線を覚えている。ヨーテリー(♀)がスーパーボール、すごい傷薬を拾ってきた。ヨーテリーの特性は物拾い、戦闘中・戦闘後に道具を拾うことがある。


ポケモンセンターに戻ると、青い制服の配達員が来ていた。
「こんにちは。スズシロさんですね」
「そうですけど」
「不思議な贈り物をお預かりしています。こちらをどうぞ!」
「当たったんだ!ありがとうございます!」
クリーム色の封筒と小さなダンボールを受け取った。
「またのご利用をお待ちしております」

「へー、懸賞も応募してみるもんだね」
封筒はフラップがオレンジ色のVの字になっている。中には灯台の絵が描かれたチケットが入っていた。
「リバティチケット」
ヒウンシティの港から出る観光船の乗船券で、行き先はリバティガーデン島となっている。
ダンボールの中には赤一色のボールが入っていた。ポケモン図鑑をかざす。
「クマシュンか」
クマシュン♂Lv.15、小熊のような姿で、頭は水色、体は白い。鼻水をたらしている。氷タイプのポケモンだ。
「ふーん、鼻水が技の元なんだ」
とりあえず、ボックスに預けておく。

GTSをチェックする。交換が成立し、ポカブが送られてきた。♂のLv.1だ。
「交換してくれた人の名前は、まっちゃんか。ありがとう、まっちゃん!……まっちゃんさん?まっちゃんちゃん?」
捨てる神あらば拾う神あり。その後、ツタージャも手に入った。

バッジ 1個  ポケモン図鑑 見つけた数 10匹/捕まえた数 9匹  おこづかい 8100円  プレイ時間 20:40



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#14
「次はシッポウシティか。今度はどんな街なんだろ」
サンヨウシティの西には水路がめぐらされた公園がある。中央には水が流れ落ちるオブジェがあり、周囲には低木を刈り込んで作られたポケモンのトピアリーがある。
「これ、ピカチュウだ!」
ずんぐりとした体から長い耳とギザギザの尾が延びている。スズシロはテレビ番組で、遠くカントー地方にいるというその黄色いポケモンを見たことがあった。


つる棚をくぐり、3番道路に入る。並んで建つ大小の建物が見えてきた。
『ポケモン育て屋 大切なポケモン預かります』
右の小さな建物は育て屋だ。柵に囲まれた庭ではポケモンたちが駆け回っている。育て屋にポケモンを預けると、トレーナーの代わりにレベルを上げてくれる。また、相性のいいポケモン2匹を預けると、タマゴが見つかることがある。
中に入る。パソコンが置かれたカウンターには老婆がいる。
「わしは育て屋ばあさんじゃ。お前さんの代わりにポケモンを育ててあげるよ。何か育ててほしいのかい?」
「いえ、どんなところか見てみたくて。今度預けに来ます」
「それじゃ、また来ておくれ」

「この保育園ではポケモン勝負が大人気!その先の庭に入ると、勝負をせがまれますよ!」
エプロン姿の女性が言った。左の大きな建物は保育園だ。庭には遊具や砂場があり、園児たちが遊んでいる。スズシロはない袖をまくった。
「どーれ、この私がポケモン勝負というものを教えてあげよう!」
「子供とポケモンたち、たくさんの笑顔に囲まれて、無敵のアタシでーす!」
「大人!?」
一番に駆け寄ってきたのは保育士の女性だった。勝負をせがまれると聞けば、普通は園児のほうを想像するだろう。スズシロはブレイブを出し、ヨーテリー♀Lv.10とムンナ♀Lv.10を水鉄砲で軽く倒した。
「おいっ、トレーナー!ボクとしょうぶしろ!!」
男児はヒヤップ♂Lv.10を出した。サンヨウジムリーダーのデントが使っていたヤナップに似ているが、色は水色をしており、頭の房は噴き上がる水のような形をしている。スズシロはムンナを出す。ヒヤップは水鉄砲を放った。
「やっぱり水タイプか。ムンナ、サイケ光線!」
「ムウ!」
ムンナは虹色の光を放つ。ヒヤップを倒し、Lv.13になった。
「どうだ、思い知ったか!」
「くそー!こどもあいてに、ほんきだしやがって!きらいじゃないぞ!そーゆーの!」
女児は赤色で頭の房が燃え上がる炎のような形をした炎タイプのバオップ、もう1人の男児はヤナップを出してきた。
ポケモン図鑑を開く。一覧には草・炎・水の猿が並んでいる。デントがヤナップということは、ポッドはバオップ、コーンはヒヤップなのだろう。

園舎の中で保育士にポケモンを回復してもらう。園長の女性が言った。
「あたくし……実は隣でポケモン育て屋を営んでいる夫婦の娘でございまして。そうなんです!親子揃って育てるお仕事をしておりますの。ポケモンも人も、育てるのって素晴らしいことですものね!」
「はい!私もポケモンを育てるの、楽しいです!」
「お前を育てているのは俺だけどな」
ブレイブがつけ加える。
2人の男児が追いかけっこをしている。
「わーわー!」
「ぎゃおー!!にげるから、おいかける?おいかけるから、にげる?それぞれのたちばで、じじつってかわるよな!!」
「ほんと、だんしって、おこちゃまなんだから」
女児は冷めた目でそれを眺めている。

保育園を出たところで、双子の女児が立ちはだかった。
「あたしたち、ちからをあわせてがんばるから、みててください!」
「えーっとね……1たす1は2だよね!」
2人はそれぞれチョロネコ♀Lv.10を出した。
「2人いっしょ!?これってダブルバトルになるのかな?よーし、ヨーテリー!ミネズミ!」
「キャンキャン!」 「キャックウ!」
場にポケモンを2匹ずつ出して戦う「ダブルバトル」。1匹ずつ出す通常の「シングルバトル」とは異なる戦略性が必要になる。スズシロにとっては初体験だ。
ヨーテリーは左のチョロネコに体当たりし、チョロネコ2匹はミネズミを引っかき、ミネズミは右のチョロネコに体当たりする。
「集中攻撃か。やるな、あの子供たち。複数同士の勝負においては、速攻が重要になるからな」
「そうなんだ」
ヨーテリーは体当たりで左のチョロネコを倒し、右のチョロネコはミネズミを引っかき、ミネズミは体当たりでそれを倒した。
「とちゅうでキズぐすりとかつかえば、かててたのかな?」
「ダブルバトルは1ぴきたおれると、かつのがむずかしいんだね」
「勉強になったよ。ありがとうね!」


3番道路を西へ進む。背後から声がした。
「スズシロ、ストップ!」
「チェレン……!」
『君に負けるとは、まだまだ未熟だね』
トレーナーズスクールでの彼の言葉が脳裏をよぎる。チェレンはバッジケースを出し、開いて見せた。そこには3色に輝くジムバッジがあった。
「トライバッジを持つ者同士、どちらが強いか確かめるよ」
「わかった……」
2人はモンスターボールを投げる。チェレンはツタージャ♂Lv.14、スズシロはヨーテリーだ。2匹は互いに睨みつける。ヨーテリーのほうが早い。
「噛みつく攻撃!」
ヨーテリーは素早く接近し、噛みつく。攻撃は急所に当たり、ツタージャが怯む。噛みつくは、先制すれば相手を怯ませることがある。ツタージャは持っていたオレンの実を食べてHPを回復し、ヨーテリーは物拾いでオレンの実を拾う。
「クッ!あいかわらずいい技を選ぶよね」
ヨーテリーは噛みつき、つるの鞭を受ける。体当たりでツタージャを倒し、Lv.14になった。
チェレンはチョロネコ♂Lv.12を出した。
チョロネコは悪タイプ。悪タイプの噛みつくは効果は今一つだ。それならノーマルタイプの技で押す!
「ヨーテリー、体当たり!」
ヨーテリーは体当たりし、チョロネコは砂かけで相手の命中率を下げる。チェレンの顔に焦りがにじむ。
「僕の知識があれば、ポケモンの強さを引きだせる!」
「体当たり!」
突進するヨーテリーはチョロネコを捉え、弾き飛ばした。スズシロの勝利だ。
「なぜ……?ジムバッジの数は同じなのに……」
「……」

「……なるほど。そういう戦い方ね」
チェレンは手持ちを回復させながら、頭の中で勝負の手を整理する。スズシロは押し黙っている。
「どけどけーっ!」
突然怒声が響いた。フード姿の2人組が迫り、スズシロとチェレンはとっさに身をかわす。
「……あれはプラズマ団!」
2人組はそのまま走り去っていった。
「何だよ、今の……?」
今度はベルと女児が来た。
「ベル!」
「って、ベル?どうして走ってるの?」
ベルは息を切らし、尋ねる。
「ねえねえ、今の連中、どっちに向かった?」
「あっちだけど……だから、どうして走ってるのさ?」
「ああ、もう!なんて早い逃げ足なの!!」
女児は涙を浮かべ、ベルの手を引っ張る。
「……おねえちゃん……あたしのポケモン?」
「大丈夫!大丈夫だから泣かないで!!」
「……あのね、ベル。だから、どうして走ってたんだ?」
物わかりの悪いチェレンに、スズシロが切れる。
「チェレンは黙ってて!!プラズマ団に何かされたんだね?」
「聞いてよ!さっきの連中に、この子のポケモンを取られちゃったのよ!」
「やっぱり!」
「それを早く言いなよ!スズシロ、ポケモンを取り戻すよ」
「うん!ヨーテリーを回復させたら、すぐに行くから」
「ベル!君はその女の子のそばにいてよ」
チェレンは1人先に走っていった。スズシロはヨーテリーをボールから出し、傷薬を吹きかける。HPが満タンになった。
「お願い……スズシロ。プラズマ団に奪われたポケモンを取り返してあげて!」
「うん、行ってくる!」
「……どうして、ひとのポケモンをとるの……?」
スズシロは腰を落とし、女児の肩に手を置いた。
「あいつら、悪い奴なんだ。君のポケモンは絶対に取り戻す。お姉ちゃんたちに任せといて!」

バッジ 1個  ポケモン図鑑 見つけた数 12匹/捕まえた数 10匹  おこづかい 7980円  プレイ時間 56:14



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#15
西へと走るスズシロはタウンマップを開いた。
「この先にあるのは……地下水脈の穴か」
ボールの中のブレイブが聞く。
「スズシロ、さっきはずいぶんよそよそしかったじゃないか。友達なんだろ?」
「うん……私たち3人は小さいころからいつもいっしょに遊んでてね。チェレンはポケモンのこととっても詳しくて、よく私とベルに話を聞かせてくれてたの。天空のポケモン、地底のポケモン、遺跡のポケモン……語りだすと長いんだけどね。尊敬っていうのかな、とにかくすごいって思ってた」
『君に負けるとは、まだまだ未熟だね』
「あんな言い方するなんて……私、なんだかよくわからなくなっちゃって……」
「そういうことか……じゃあ聞こう。そのとき、お前は勝ち続きでおごっていなかったか?上からものを言わなかったか?」
「それは……!」
『いいよ!相手してあげる!』
『どう?何かわかった?』
『ジムリーダーに勝って、私の実力を見せつけてあげる!!』
「彼はつられてしまっただけさ。そんな些細なことで仲たがいしても、つまらないだろ?」
「……うん。楽になった気がする。ありがとう、ブレイブ」
岩山に開いた横穴が見えてきた。チェレンがいる。


「……あいつら、この中に入っていったよ。で、スズシロ。ポケモンの体力とか、準備はばっちりだよね?」
「うん、大丈夫!」
「……じゃ、行くよ」

洞窟の中は薄暗く、湿っぽい。
「ひゃっ!」
天井から水滴が落ちてくる。スズシロとチェレンはプラズマ団の2人組と対峙した。
「もう逃げ場はない。おとなしくポケモンを返しなさい!」
1人は奪ったモンスターボールを大事そうに持ち、もう1人は不敵に笑っている。
「スズシロ!こいつら、話が通じないメンドーな連中だね」
「あんな子供にポケモンは使いこなせない。それではポケモンがかわいそうだろう?お前らのポケモンも同じ。我々プラズマ団に差し出せ。というか、奪ってやるよ!」
笑う男はミネズミ♂Lv.12を出した。
「いけっ、ブレイブ!」
「おおっ!」
スズシロはブレイブを出す。ブレイブは水鉄砲を放ち、ミネズミは噛みつく。ブレイブはミネズミを倒し、Lv.14になった。男はうろたえ、後ずさりする。
「なぜだ!なぜ、正しき我々が負ける!?」
「さすがスズシロ。さあ、あの子から取り上げたポケモンを返しなよ」

「返す必要はないぜ!」
奥から声が響き、もう2人現れた。スズシロとチェレンは身構える。
「大変だよな。理解されないばかりか、邪魔されるなんて」
「相手は2人、我々も2人。我々の結束を見せつけ、正しいことを教えてやるよ」
「まだいたとはね……それにしても、ポケモン泥棒が何を開き直っているんだか。スズシロ、幼なじみのコンビネーションで、彼らに思い知らせよう」
「わかった、チェレン!」
プラズマ団の2人はそれぞれミネズミ♂Lv.12を出し、スズシロはブレイブ、チェレンはツタージャを出す。スズシロは隣のチェレンをちらりと見た。
これがタッグバトル!
ツタージャはブレイブの前のミネズミをつるの鞭で打ち、ブレイブはそこに水鉄砲を撃つ。集中攻撃だ。ミネズミ2匹はツタージャに噛みつく。防御の高いツタージャのダメージはさほどでもない。
チェレンが目配せする。ブレイブの前のミネズミのHPはあとわずか、ツタージャはブレイブよりも速い……
「うん!そっちは任せた!」
ツタージャはブレイブの前のミネズミをつるの鞭で倒し、ブレイブはツタージャの前のミネズミに水鉄砲を撃つ。つるの鞭と水鉄砲が決まり、残るミネズミも倒れた。
「見たか、私たちのコンビネーション!!」
スズシロは拳を握りしめ、チェレンは眼鏡を直す。
「やるじゃないか」
ブレイブは短い親指を立て、ツタージャは気取ってうなずいた。

敗れた男が声を上げる。
「俺たちはポケモンを解放するため、愚かな人間たちからポケモンを奪っていくのだ!!」
「……やれやれ、本当にメンドー臭いな。どんな理由があろうと、人のポケモンを取っていいわけないよね?」
「お前たちのようなポケモントレーナーが、ポケモンを苦しめているのだ……」
「……なぜトレーナーがポケモンを苦しめているのか、まったく理解できないね!」
最初の2人組の1人が奪ったモンスターボールを差し出した。チェレンが受け取る。
「ポケモンは返す……だが、このポケモンは人に使われ、かわいそうだぞ」
「かわいそう?さっきから、わけのわからないことを!」
「……いつか自分たちの愚かさに気づけ」
プラズマ団の4人は外へ逃げていった。

「ポケモンの力を引き出すトレーナーがいる。トレーナーを信じて、それに応えるポケモンがいる。これでどうしてポケモンがかわいそうなのか、わからないね」
「だよね」
「さてと……スズシロ。僕がポケモンを返してくるよ」
チェレンは先に行く。スズシロはしばし立ち止まり、外に出た。

スズシロは3番道路に戻ってきた。ベルと女児が待っている。
「チェレンはもう行っちゃったんだ」
「スズシロ、本当にありがとうね!2人でポケモンを取り返してくれたんだよね」
「うん、力を合わせてね!」
「ほんと、スズシロたちと友達でよかった!!」
「そんなこと言われると、照れるなー」
スズシロは頭をかいた。
「おねえちゃん、ありがとう!!」
「フフ。お姉ちゃんはヒーローだからね、当たり前のことをしただけなんだよ」
「おれいに、これをあげるね!」
「なになに?ありがとう!」
ピンク色のモンスターボールだ。クリーム色の模様が入っている。
「あっ!ヒールボール!それで捕まえたポケモンは体力満タンになるんだよね。じゃ、あたし、この子を送っていくから」
「うん、気をつけてね」
「じゃあね、スズシロ。バイバーイ!!」
「じゃあねー!!」
2人は手を振り、街へと戻っていった。

「さあ、行こう!」
「おお!」
スズシロの声にブレイブが応える。旅は続く。

バッジ 1個  ポケモン図鑑 見つけた数 12匹/捕まえた数 10匹  おこづかい 9420円  プレイ時間 57:37



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#16
3番道路の草むらで、スズシロはミネズミを先頭にポケモンを探す。ミネズミやチョロネコがいる。
「クルククク!」
マメパト♂Lv.11が飛び出してきた。ミネズミは噛みつくで怯ませるが、マメパトの目にも止まらぬ動きで反撃を受ける。先制の攻撃技・電光石火だ。2度の攻撃でマメパトのHPが程よく減った。
ムンナに替える。ムンナはあくびでマメパトの眠りを誘い、睨みつけるで下げられた防御を丸くなるでカバーする。マメパトの動きが鈍り、目を閉じて眠りだした。スズシロは距離を詰め、モンスターボールをそっと投げる。捕獲完了だ。ボールを拾い、まじまじと見つめる。
「うーん」
「どうした、スズシロ?」
「ボールが当たるのはいいんだけど、思いっきり投げられないから、どうもすっきりしないんだよね。爽快感がないっていうか」
「仕方ないだろ。お前はコントロールがまるで駄目だからな」
「なんかいい方法ないかな……」

「ギャルルッ!」
シママ♂Lv.8が現れた。シマウマのような姿で、スマートな黒い体に白い縞がある。たてがみは稲妻のようにギザギザだ。
「シママ……知る人ぞ知る『シママーマン』!」
スズシロの頭の中に主題歌が流れる。ミネズミがHPを削り、ムンナが眠らせる。モンスターボールをそっと投げ、捕獲した。決め台詞をつぶやく。
「……黒白つけたぜ!」

捕獲したシママは麻痺を治すクラボの実を持っていた。勢いで「シマママン」とつけたが、ブレイブのときのようにひらめきはしなかった。
トレーナーと戦い、ミネズミとムンナがLv.14になった。


次は地下水脈の穴だ。
「ピピピピピィ!」
入るなり、コロモリ♀Lv.11が飛びかかってきた。水色の毛で覆われた丸い体から黒い翼が伸びている。目は毛に隠れ、ハート型をした大きな鼻の穴が目立つ。
空間がわずかに揺らぎ、ミネズミがダメージを受ける。エスパータイプの技・念力だ。ミネズミは噛みつくで大ダメージを与える。ムンナに替えてあくびで眠らせ、捕獲した。拾う間もなく、ボールは光となって消えてしまった。すでに手持ちが持ち歩ける上限の6匹だったため、自動的に預かりシステムに転送されたのだ。

床から土煙が上がる。近づくとそれは治まり、きらりと光る焦げ茶色の結晶が残された。岩のジュエルだ。ポケモンに持たせると、一度だけ岩タイプの技の威力が強まる。
そのとき、スズシロの背後で石のこすれるような音がした。
「ん?」
振り返って辺りを見回す。ぽつんとあるサッカーボール大の黒っぽい丸い岩が目に留まった。
「なんだ、気のせいか」
また物音がし、振り返る。心なし、丸い岩が近づいているように見える。
「気のせい気のせい」
またまた物音がし、振り返る。やはり近づいている。
「気のせい……むっ!」
「ゴロッ!?」
素早く振り返る。丸い岩がびくっと動き、茶色い角と足を出した。中央に六角形の黄色い窪みがあり、穴が開いている。図鑑を向けると、ダンゴロ♂Lv.11と表示された。ミネズミを出し、睨みあう。
「……思いついた!戻って、ミネズミ!よろしく、ブレイブ!」
スズシロはミネズミを戻し、ブレイブを出した。
「岩タイプか。確かに俺向きだな。それで、何を思いついたんだ?」
「いいから水鉄砲!」
「ん、ああ」
ブレイブが水鉄砲を放つ。効果は抜群だ。ダンゴロのHPが急減し、残り1で持ちこたえた。その特性・頑丈は、HPが満タンであれば、いかなる一撃も耐えることができる。
「へー。一発逆転が狙えるなんて、まさにヒーロー向きだね!」
身を乗り出したスズシロに向かってダンゴロが突っ込む。ブレイブが阻んだ。
「スズシロ!言ったろ、俺より前には出るなって」
「ごめん、ブレイブ……だから、私の盾になって!」
「ああ?」
スズシロは左手でブレイブの襟首をつかみ、持ち上げた。じたばたするブレイブを前にぶら下げ、ダンゴロに悠然と近づく。
「な、何をするー!?」
「こうすれば私が君より前に出ることもないし、攻撃も防げる」
「なんだとお!?」
「ふふふふふ」
「……!?」
異様な雰囲気におののくダンゴロに、スズシロは右手のモンスターボールを思いきり叩きつけた。開いたボールがダンゴロを吸い込み、ロックがかかる。捕獲完了だ。
「ふー、すっきり爽快いっ!!」
「おい、離せ」
「いい方法でしょ?」
「何がいい方法だ!やってられるか!!」
「うーん、ダメか……」
スズシロはブレイブを離し、辞書に手を伸ばした。

「ヒーローにとって大切なのは」
――れいせい【冷静】 不確かなものに惑わされず、動じないこと。
「英語では……『calm』(カーム)。文字数も響きも、まったく問題なし!」

モンスターボールが転送され、スズシロは満足げに、ぽんと辞書を閉じた。
「久々だな」
「うん。調子出てきた!」
「でも、さっきのは無しだからな。二度とするんじゃないぞ!」
「わかったよ……別の方法考えないと」


水が溜まっており、先に進めない。これを渡ることができれば、さらに奥へ行けそうだ。落ちていた技マシン46「泥棒」のディスクを拾った。相手の持ち物を奪う悪タイプの技だ。

コロモリやダンゴロを避けつつ、あちこちから上がる土煙を追う。炎、飛行、毒のジュエルを見つけた。
「グリュウウン!」
穴から飛び出した大きな爪が左右に開き、モグラのような姿をした黒いポケモンが顔を出した。モグリュー♂Lv.12だ。
「このポケモンが掘ってたんだ!」
ミネズミは泥かけで命中率を下げられ、噛みつく攻撃は外れる。モグリューは連続で引っかいた。乱れ引っかきだ。なかなか手ごわい。ムンナに替えてあくびで眠りを誘い、サイケ光線でHPを削る。眠ったモグリューにボールをそっと投げ、捕獲した。

スズシロは育て屋のパソコンでマメパトとシママをボックスに預け、カームを引き出した。ポケモン図鑑を見る。
「持ち物は変わらずの石……?ねえ、それちょっと見せて」
「……」
カームは石を離そうとしない。
「持ってないと寂しいのかな。じゃあいいよ」

スズシロたちに新たな仲間が加わった。

バッジ 1個  ポケモン図鑑 見つけた数 17匹/捕まえた数 16匹  おこづかい 9852円  プレイ時間 59:57

INDEX 目次前項13141516メモ