P‐LOG ダイヤモンド編
#29 |
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グレッグルは毒・格闘タイプのポケモン。ロネのスピードは種族最高クラスだが、覚えている格闘技は通常後攻となる「リベンジ」のみだ。彼女は考えたすえ、クロガネゲートの地下で拾った技マシン31を使い、「瓦割り」を覚えさせた。
トバリシティを目指し、213番道路を東に進む。草むらでフローゼルとウミネコポケモン・キャモメを捕獲した。谷間の発電所で見たものとは形状がやや異なる、青いカラナクシもいた。
森を抜けると、砂浜が見えてきた。岩と岩の間で技マシン40「つばめ返し」を見つけた。民家が1軒、ぽつんと立っている。
「『足跡博士の家』 足跡は全てを語る」
太り気味の中年男は「フトマキ」と名乗った。
「ポケモンというのは、足跡を見てみれば、何を考えているかなんてすぐわかるのです!」
「……ふーん」
「ほう……信じられませんか?ならば、君のポッタイシ、ここで歩かせてごらんなさい。その足跡から、気持ちを私が読み取ってみせましょう!」
男は砂を敷いた箱を用意し、レビアたん(ポッタイシ)がその上を歩く様子をじっくりと観察した。
「シィは……大した奴だ。私がポッタイシとして最高の働きができるのも、シィがいてこそだ。一緒に旅していると、野生のポケモンたちがうらやましそうに見ているぞ……と、ポッタイシはこのように考えておりますな!」
「合ってるか?」
「ギャオギャ」
レビアたんは冷めた表情で首を横に振った。どうも胡散臭い。一応、足跡をかたどった足跡リボンをもらった。では、足跡のつかないアロス(ドーミラー)はどうだろう?
「シーン……………………………………………………………………シーン………………シーン……………………………
………………………シーン………………………………ふーむ、ドーミラーはかなり無口なポケモンですな!」
海岸で噴射ポケモン・テッポウオを釣り上げた。砂浜をそのまま東に進むと、高台の上に鮮やかな青が差し色となった白亜の建築が見えてきた。
「『ホテルグランドレイク』 リッシ湖ほとりの別世界」
複数のコテージからなるリゾートホテルだ。彼女が訪れた建物には、旅の一座が滞在していた。太った男から、技マシン92「トリックルーム」をもらった。この技を使えば、しばらくの間、素早さが低いポケモンから先に行動できるようになるという。
「あなたの瞳を見せてごらん。占ってあげるから」
あだっぽい雰囲気の女は顔を近づけ、彼女の瞳を覗き込んだ。
「……素敵な出会い……それがポケモンなのか、トレーナーなのか、わからないけど」
「曖昧だな。どうとでも取れる。未来が見えるというのなら、過去も見えるのか?」
彼女は揶揄するように言った。
「いろんな人の瞳、多くのポケモンの眼を見てきた私だけれど……あなたの瞳には、優しさと強さ……喜びと悲しみ……いろんな色が混ざっていて占いにくい……」
女はそう言って、口をつぐんだ。
「『レストラン七つ星』 こだわりすぎの味が自慢」
ここでは料理だけではなく、ポケモン勝負も楽しむことができる。彼女は軽いランチを取ったあと、客に勝負を持ちかけた。
「ほほう、このオードブルは食物繊維が20%、鉄分が5%、タンパク質が35%……何だい?自分の力を分析してほしいのかい?」
「ほんとにもう、あなたったら!お食事に来たときくらい、研究のことは考えないでくださいな!こんな研究熱心な夫にあきれる私ですが、勝負などしてみます?」
夫婦はユンゲラーとスカンプーを繰り出した。彼女はベリト(コロトック)とバラク(ズガイドス)だ。ユンゲラーを吸血で倒し、スカンプーを頭突きで倒した。残ったブイゼルは岩砕きと頭突きの集中攻撃で倒した。
「曖昧なものを分析し、構成要素を定義すると、私は安心が得られるのだよ」
「私には、わからないものは、わからないままにしておいたほうがいいような気がするわ……」
214番道路を北上する。柵が無計画に張り巡らされていて見通しが悪く、トレーナーの数も多い。草むらで、黄色と黒の首長ポケモン・キリンリキ、ごつごつした岩塊から手足が生えた岩石ポケモン・ゴローンを捕獲した。ポケモンに持たせることで、吸収系の技での回復量を増加させる、「大きな根っこ」を見つけた。
何気なく左手の丘を見ると、横穴が口を開けていた。中を調べてみる。入ってすぐのところで、技マシン28「穴を掘る」を見つけた。ここを掘るのに使った余りだろうか。
横穴はまっすぐ西に延びている。歩いていると、目の前に土色をした四つ足のポケモンがのっそりと歩み出てきた。カバポケモン・ヒポポタスだ。ヒポポタスは彼女に驚き、砂塵を巻き上げ始めた。急いで岩陰に飛び込む。広くない空間はたちまち砂嵐で満たされた。目を開けていられないため、ポケモンへの指示は直感に頼るしかない。
先頭にしていたベリトを戻し、砂嵐でダメージを受けないアロスに替えたが、あくびで眠らされてしまった。バラクを出して頭突きで削り、ボールを投げる。捕獲は成功し、砂嵐はぴたりと止んだ。
変化のない風景が続く。ひたすら奥へと進むうち、1つの人影が見えてきた。作業着姿の男だ。
「凄いところにつながったね。とにかく、びっくりしたね。まあ、僕が遺跡マニアだから、こういうことになったのさ!」
自慢げに語る男の視線の先には、人がやっと通れるほどの穴が開いていた。それをくぐると、緻密な石組みで覆われた部屋に出た。見覚えがある……ズイの遺跡だ!
壁にはその2つの記号だけが刻まれていた。出現するアンノーンもそれに似た2種類だ。
光が差している。開口部から外に出ると、眼下にズイの町並みが広がった。ここはズイの遺跡の上層部分だったのだ。
彼女は知らなければならない。自らの過去を。
お小遣い207953円 ポケモン図鑑87匹(捕まえた数77匹) バッジ3個 プレイ時間303:36
#30 |
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「ここはトバリシティ 石に囲まれた空間」
岩山を切り崩して土地を造成しており、太古の昔に落下した隕石が残っていることもあって、トバリは別名「石の町」とも呼ばれている。そのため土地の起伏は激しく、道は入り組んでいる。ポケモンセンターを探し、ポケモンたちを回復させる。彼女は町を見て歩くことにした。
「ギンガ団の奴ら、倉庫にいいものを隠してるぜ。俺が聞いたのは、秘伝マシンもしまい込んでるって話だ!」
男は周りに聞こえないよう、こっそりと話した。実に興味深い。
「『ギンガトバリビル』 夢は宇宙へ!」
2基のパラボラアンテナが天を睨む。町外れの高台にそびえる、側面にトゲ状の突起を持つ巨大な黒い直方体は、見る者に強い圧迫感を与える。高層建築の多くないトバリにあって一際目立つのが、異様な雰囲気を漂わせるこのビルだ。ハクタイにあったものと似ているが、規模の巨大さはその比ではない。正面入口から中に入る。受付の女が微笑みかけた。
「いらっしゃいませ。こちらギンガ団アジト……ではなく、ギンガトバリビル受付です」
「アジトか」
「宇宙エネルギー!自由に使えると素晴らしいと思いませんか?」
女は話を逸らした。その先にある扉はロックされ、侵入することはできなかった。後回しにする他なさそうだ。
「『トバリデパート』 幸せいっぱい百貨店」
小規模なフレンドリィショップとは違い、売り場は広々としていて品揃えも豊富だ。5階建てで、1階はトレーナーズゾーン、2階はバトルパートナーズ、3階は技マシンコレクション、4階はグッズとドール、5階は憩いの広場、となっている。優しそうな老婦人が彼女に話しかけてきた。
「さっきのトレーナーさんのポケモンを見て作ったアクセサリー、あなたもいかが?」
「あ?」
ヒコザルお面をもらった。以前にも同じようなことがあったような……
エスカレーターに乗って上の階に行く。2階では、店員からポケッチに「カウンター」のアプリを追加してもらった。
3階に来た彼女は目を輝かせた。ガラスケースには13種類もの技マシンが並んでいる。幸い、レストランで散々稼いだおかげで、資金は潤沢にある。相手を倒してしまわないよう加減して攻撃する、技マシン54「峰打ち」など、6枚ほどを買い込んだ。
5階では2人組の男から、持っているとダメージを受ける「くっつき針」をもらった。
「『トバリゲームコーナー』 狙え、大爆発!」
夜の街に、看板の色鮮やかなネオンが点滅を繰り返している。デパートと並ぶ、この町の名所だ。アップテンポな曲が流れる店内は、スロットマシンに熱中する客たちの熱気にあふれている。一度試してみようと、カウンターにコインの両替に行く。
「いらっしゃいませ!トバリゲームコーナーです!ゲーム用コインですね?あら?コインを入れるコインケースがありませんよ」
客の話では、コインケースは隣の家でもらえるらしい。さっそくそこへ行き、男からコインケースを受け取った。
コインは自分で用意した50枚と人からもらった70枚、計120枚でスタートする。彼女は適当な台を選び、席に着いた。スロット台はリールの下に液晶がついたもので、ギンガ団のマークが入っている。10連荘を出すと記念品がもらえるそうだ。
コインを投入してボタンを押すが、目が揃わず、徐々にコインが目減りしていく。しばらくすると、液晶画面にサファリボールが現れた。ボールが表示されると小当たりが出る仕組みだ。
小康状態が続いていたとき、突然、モンスターボールからピッピが現れた。「7」が3つ揃い、台は大量のコインを吐き出した。ボーナスタイムに突入する。コツは聞いている。ピッピが指をさす順にリールを止めればいい。それを15回繰り返すと、ピカチュウたちが応援に現れ、連荘状態となる。4回までは続いたが、ピッピがボールに戻ってしまい、連荘は途切れてしまった。
その後も耳が緑色のピッピや顔が違うピッピが出てきたが、惜しくも9連荘止まりだった。台を替える。
眠い ―― 彼女の疲労はピークに達していた。目も虚ろだ。ピッピがボールに戻っていく。13連荘、コインは15000枚を超えていた。疲れのあまり、彼女はスロット台に倒れ込み、ガラスに顔を打ちつけた。近くに座っていた男が声をかける。
「あ……全然出ない……君、トレーナー?ここのジムリーダーと戦った?」
「……ああ?」
「わしの娘だけど、本当に強いよ!」
「見事スロット10連荘、まさに大爆発でしたね!ということで、この技マシン、記念にどうぞ!」
カウンターで技マシン64「大爆発」を受け取り、外に出る。朝日がまぶしい。
眠い目をこすり、街を歩く。男から、道具の使用を禁止する、技マシン63「差し押さえ」をもらった。
民家に入る。室内は薄暗く、一角が赤い幕で仕切られている。何かと思って近づくと幕が開き、セクシーな衣装をまとった女が現れた。
「あら、ちょっと疲れてなーい?」
どう見ても怪しい。彼女は不審の目でじっと見た。
「……あなたじゃないわよ。あなたのポケモンちゃん!よかったらマッサージしてあげちゃうけど、どうかしらー?」
「やれるものならやってみな」
意地悪く鋼タイプのアロスを出す。しかし、女は余裕の表情だ。アロスを招き寄せ、椅子の上に載せた。
「うふっ。じゃあ、始めましょうね。さあさあ、リラックスして……」
サッと幕が下りた。エキゾチックな音楽が流れ、幕に映るシルエットが微妙な動きを見せる。ますます怪しい……
曲が終わるのと同時に幕が開き、アロスが出てきた。表情が読み取りづらいが、気持ちよかったらしい。なぜか、アクセサリーの不思議なスプーンを持っている。
「……一体どうやったんだ?」
「ウフフ……ひ・み・つ……!に決まってるでしょ!また明日いらっしゃい!」
ポケモンジムのオレンジ色の屋根が見えてきた。さっそくジム戦だ。
「あっ!シィ」
ジュンか? ―― 声に一瞬身構える。しかし、そこにいたのはコウキだった。コウキは彼女に笑顔で歩み寄ってきた。
「ポケモンジムに挑戦するの?どんどん強くなっていくね」
「ああ。バッジはここで4つ目だ。
で、お前のほうはどうなんだ?コウキ」
コウキの顔が急に赤くなった。
「僕?僕はちょっとゲームコーナーに行ってみたり……もっ、もちろんちゃんと図鑑もがんばってるよ。ということで、がんばってね。じゃーね!」
言い終わるが早いか、コウキは逃げるように走っていった。
「何を慌てているんだ?ちょっと名前で呼んでみたくらいで……こっちが恥ずかしいじゃないか」
トバリジムへの挑戦が始まる。
お小遣い503392円 ポケモン図鑑94匹(捕まえた数84匹) バッジ3個 プレイ時間362:15
#31 |
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今回のポケモンは、レビアたん(ポッタイシLv.26)、ハル(ムクバードLv.26)、オリア(ルクシオLv.26)、バラク(ズガイドスLv.26)、アロス(ドーミラーLv.26)、ロネ(グレッグルLv.26)の6匹だ。
扉が開き、いつもの男が迎えた。柱のプレートにはジュンの名前がある。
「オーッス!未来のチャンピオン!ここのジムリーダーは格闘タイプの使い手!ノーマルタイプのポケモンには分が悪い相手だな!だけど!だけどだぞ!ここだけの話……飛行タイプやエスパータイプは苦手かも、とジムリーダーのスモモちゃんは言っていたぜ!」
「ジム」というよりは、「道場」といった雰囲気だ。床は板張りで、白い砂利が敷き詰められた白州が6つあり、それぞれの間は板戸で仕切られている。その内4箇所には空手着姿の男たちが立っている。ジムリーダーはその先だ。
「俺たち、空手四兄弟!勇気のこぶしをお見舞いしてやるぜい!」
彼らは兄弟で、この男は次男らしい。気合と共にゴーリキーを繰り出した。ワンリキーの進化形で、体は大きく、より筋肉質になっている。彼女はハルを繰り出した。空手チョップをくらったが、翼で打つで大ダメージを与え、電光石火でとどめを刺した。
ワンリキーをバラクの頭突きで倒し、2匹目のゴーリキーをオリアのスパークで倒した。
板戸を押すと、ガラガラと音を立てて滑り、道が開けた。続けて三男と四男を倒し、進路を確保していく。
ロネとアロスの2匹で長男のゴーリキー3匹を倒した。
「お前のポケモンは強い!だが、ジムリーダーのスモモはもっともっと強いからな!」
板戸の最後の1枚を動かし、先に進むと、白州に囲まれた島状のバトルフィールドにたどり着いた。ジムリーダーは格闘ポケモン使いの武道家、おそらくはゴローンのようないかつい女だろう。
床のきしむ音がし、ジムリーダーが現れた。それは意外にも、華奢な体型をしたあどけない少女だった。明るい色をした短めの髪はピンと跳ね、鼻柱に絆創膏を貼っている。上は紺のタンクトップで下は白いジャージのパンツ、足は裸足だ。少女はぺこりと頭を下げた。
「初めまして。よろしくお願いします。あたし、ジムリーダーのスモモっていいます」
声もか細く、おとなしそうな感じだ。覇気というものが全く感じられない。
「どうしてジムリーダーになれたのか、強いってどういうことか、自分でよくわかってないんですけど、ジムリーダーとしてあたしなりに真剣にがんばるので、どこからでもかかってきてください!」
その言葉に、彼女は顔を曇らせた。
「そうか……では、さっさと終わらせるとしよう」
ジムリーダーのポケモンは3匹、スモモはアサナンLv.27を、彼女はレビアたんを繰り出した。
アサナンはレビアたんにパンチを浴びせた。ドレインパンチという技だ。威力はさほどでもない。秘密の力で反撃する。ヨガのポーズで攻撃を高めるアサナンを、レビアたんはつつく攻撃で倒した。
2匹目はゴーリキーLv.27だ。彼女はアロスを繰り出した。ゴーリキーは見破るを使い、狙いを定めた。
「怪しい光」
アロスの怪しい光でゴーリキーは混乱し、自らを攻撃した。その隙を突き、神通力で削りにかかる。ゴーリキーは再び自分を傷つけ、一度も攻撃技を出すことなく、アロスの神通力に倒れた。
スモモは最後のポケモン、ルカリオLv.30を繰り出した。犬のような姿をしたポケモンで、二本足で立っている。毛色は主に青と黒、胴体のみ薄黄色をしている。彼女はそのポケモンから、他とは違う何かを感じ取った。ロネをフィールドに送る。
「ロネ、お前に任せる」
スモモは眉間にしわを寄せ、ぽつりと言った。
「勝負はここからです」
ルカリオが動いた!かなりのスピードだ。素早く間合を詰めてメタルクローで斬りかかり、ロネのHPが半減した。パワーも侮れない。ロネは瓦割りでルカリオに大ダメージを与えた。
格闘技の効果が抜群、メタルクローを使うことから、相手は鋼タイプだとわかる。ルカリオはオボンの実で、ロネは黒いヘドロで体力を回復させた。彼女の冷めた表情は、嬉々としたものに変わっていた。
「いいぞ!これこそが"戦い"だ」
「これってあたし、ピンチですよね」
「そうだな……だが、あたしはロネに『任せる』と言った。次のポケモンを出すつもりはない。つまり、お互い、次の一手が最後の一手になるということだ」
スモモの顔がきりりと引き締まった。彼女の勝負に賭ける意気込みが、武道家としての心を奮い立たせたのだ。ルカリオとロネ、スモモと彼女は静かに睨み合った。
張り詰めた空気が破られた。ルカリオが掌を突き出し、ロネの体が吹っ飛ぶ。衝撃波を加えて相手を押し飛ばす、「発勁(はっけい)」という技だ。HPは残り3!ロネはなんとか立ち上がったが、麻痺を負ってしまっていた。
「動け!」
最後の力を振り絞って跳び上がり、手刀を振り下ろす。それは首の付根に決まり、ルカリオは気を失って倒れ込んだ。
「キシシシ……」
ロネは荒い息をつき、笑ってみせた。彼女も笑みを返す。このジム戦で6匹全員がLv.27になった。
スモモはしょんぼりとした様子だ。
「……はい、あたしの負けです。久しぶりに負けちゃいました。でも、いろいろと教わりました。ですので、このジムバッジ、どうぞ受け取ってください!」
コボルバッジを受け取った。菱形の銀色の地に、2本の腕をデザインした茶色のマークが入っている。
「えーっとですね、そのポケモンリーグ公認のジムバッジを持っていると、いつでも空を飛ぶの技を使うことができるんです。あと、これもどうぞです」
技マシン60「ドレインパンチ」、拳から相手の体力を吸収する格闘技だ。
「おなか減ったな……あっ、なんでもないです。なにも言ってないです」
必死に取り繕うスモモに、彼女から思わず笑みが漏れた。
「シィさん。強いって説明できるものではなくて、どこまでがんばればいいのかわからないですけれど……でも、ポケモンといっしょだから、ずっとがんばれるんですよね!」
「……一つ言っておく。お前のポケモンは強い。お前自身の心を磨け」
出口へと向かう。男の調子の良さはいつもどおりだ。
「おお!シィ!ジムリーダーに勝ったのか!まあな、俺はお前なら勝てるかもと思っていたぜ!」
「勝てる"かも"?あたしは最初から勝つつもりだったさ」
バングルが光を放つ。新たに現れた文字は「 R 」だ。続けて「 C I F E R 」となった。
ふと、彼女は思った ―― バングルの文字は一体いくつあるのだろう、いつまでジム巡りを続ければいいのだろうか、と。
かすかな不安感……それは、やがて。
お小遣い515584円 ポケモン図鑑96匹(捕まえた数84匹) バッジ4個 プレイ時間363:58
#32 |
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大きなあくびが出た。何しろ、徹夜スロット明けのジム戦だ。いかにタフな彼女とはいえ、とうに限界は超えている。ジムの扉が開くと、そこにはコウキが立っていた。ジム戦が終わるのを待っていたらしい。何やら困った顔をしている。
「あっ!シィ。お願いがあるんだ……」
「……………………あ?」
「うっかり落としたポケモン図鑑、ギンガ団に取られたんだ……!力を貸してよ!倉庫の」
「後で行く」
彼女はコウキの話を途中で遮り、ポケモンセンターに向かった。
「それでは、お預かりいたします!」
受付にポケモンたちを預け、寝室に入った彼女はベッドに倒れ込み、そのまま眠ってしまった。
ムックルたちのさえずりが聞こえる。彼女は目を覚ました。体を起こし、伸びをする。気持ちのいい朝だ!
身支度を整え、食堂でゆったりと朝食を取る。次はどこへ行こうか?タウンマップによれば、ここから近いのはカンナギタウンとナギサシティだが、行き先不明のヨスガジムリーダー・メリッサのことも気になる。ヨスガシティへは215番道路から210番道路を通り、ズイタウン経由で行くのが最短ルートだ。
受付ですっかり回復したポケモンたちを引き取り、ポケモンセンターを後にする。
町の西ゲートに向かって歩いていると、ふと赤いベレーが目に留まった。コウキだ。倉庫の前で、ギンガ団の男2人と何事か揉めているようだ。
「おい、こんなところで何をしているんだ?」
コウキは絶句した。
「ポケモン図鑑を取り返すというのか?ワレワレギンガ団のほうが有効に使えるのに!まあいい!倉庫の番も退屈だ!2対2なら相手してやるぞ!」
「お前ら、2人まとめて泣かしちゃってもいいんだぞ?」
男たちは2人をからかい始めた。
「……今すぐブッ飛ばす。用意はいいな?コウキ」
「シィとシィのポケモン!そして僕と僕のポケモンたち。みんなの力を合わせたドリームチームなら負けない!!人の困ることするなんて、絶対に許さないよ!」
ギンガ団の男たちはアゲハントとドクケイルを、彼女はバラク、コウキはピッピを繰り出した。バラクは突進でドクケイルを一気に落としたが、アゲハントのメガドレインで体力を吸い取られてしまった。ピッピは「重力」を使った。一帯の重力が増し、飛行タイプのアゲハントは地表すれすれにまで引きずり下ろされた。
ギンガ団はグレッグルを出し、彼女はバラクをオリアに替えた。ピッピは「指を振る」を使った。ランダムに技を出すので、何が出るかは使ってみるまでわからない。出た技は毒の粉で、アゲハントを毒状態にした。オリアはグレッグルをスパーク一撃で倒した。それに対してピッピが使ったのは、またしても指を振るだ。今度は宿木の種が出た。
「真面目にやれ!」
オリアはスパークで、アゲハントとスカンプーを次々と倒した。
「へん!こんなポケモン図鑑、どうでもいいんだよ!ギンガ団は全てのポケモン、いや、世界を、宇宙を、独り占めするんだからな!ほらよ!ポケモン図鑑だ!」
男が図鑑を放り投げ、コウキは慌ててそれをキャッチした。
「倉庫にしまっていた例のブツは、もうノモセに運んだしな」
「ノモセ?」
「……ここはあえて下っ端らしく、『覚えてろ!』と言ってやる!」
男たちは足をもつれさせながら、倉庫へと逃げていった。
「何なんだ!っていうか、何でギンガ団が堂々と街中にいるんだ!?シィ、ありがとう」
「ああ」
「ポケモン図鑑取られたなんて、ナナカマド博士に知れたら……ああ、そんなこと考えたくない……で、シィ。これからどうするんだ?僕はノモセシティに行くよ。そこの大湿原にはいっぱいポケモンいるしね」
コウキは彼女に手を振り、ノモセシティに向かってのんきに歩いていった。
「……まったく、手のかかる奴だ」
「『ギンガ倉庫』 立ち入り禁止!」
ノモセに向かう前に件の倉庫を調べる。鍵のかかった扉があった。さっきの男たちはそこに逃げ込んだのだろう。
ろくなものがない。彼女はその中から、目ざとく1枚のディスクを見つけた。秘伝マシン02「空を飛ぶ」だ。
外に出る。彼女はドライブにディスクとボールをセットし、書き込みボタンを押した。ポケモンの中には飛行能力を持つものがいるが、あくまでもそれはポケモン単独に限ったことであって、人間を運び得るほどの力を持つものはほとんどいない。
この秘伝技の実質的な効果は、ポケモンが触れたトレーナーに作用し、その体を浮遊させることにある。ポケモンにかかる負担が大幅に軽減されるため、たとえムックルのような小型のポケモンであっても、人間をつかんで飛ぶことが可能なのだ。
「ハル」
「ピィ―――!」
ボールから出たハルは彼女の肩を優しく支え持つと、バサバサと羽音を立てて、ゆっくりと舞い上がった。その姿は、まるで彼女自身に羽が生えたかのようだ。
「飛べ!ノモセシティへ」
お小遣い519584円 ポケモン図鑑96匹(捕まえた数84匹) バッジ4個 プレイ時間364:39