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P‐LOG ダイヤモンド編

#25
ズイタウンのポケモン新聞社 ―― 編集長の中年男は、せわしくキーボードを叩いていた。コーヒーを飲み、ブツブツ言いながら原稿の推敲を重ねている。ドアが開き、彼女が入ってきた。
「おや?いらっしゃい!バイト募集の看板を見て、やってきたんだろ?」
「違う」
「まあ、何だっていいさ」
彼女は辺りを見回している。男は彼女のバッグから顔を出しているポケモン図鑑に気づくと、急に声のトーンを上げた。
「おお!それはポケモン図鑑。ナナカマド博士の知り合いか!そいつは頼もしいなあ!ポケモン探しのプロだもんな!今回、連れてきてほしいポケモンは」
机の上の資料を手に取り、視線を戻すと、彼女の姿はそこにはなかった。どうやら、興味が湧いてこなかったらしい。

「『ポケモン育て屋』 あなたのポケモン預かります」
木の柵で囲まれた広い敷地では、パチリスやミミロルなどのポケモンが元気に跳ね回っている。育て屋とは、平たく言えば育成代行業なのだが、トレーナーがここを利用するのには、レベル上げ以外にも理由がある。
それはポケモンのタマゴだ。相性のいいポケモン2匹を預けておくと、タマゴが見つかることがある。ヨスガの東ゲートでもらったタマゴも、ここから来たものだ。異種交配により、レベルアップでは覚えない技を遺伝させることも可能だ。
「わしは育て屋じいさんじゃ。ここでみんなの大事なポケモンの面倒を見ておるよ。何か育ててほしければ、ばあさんに頼んでおくれ」
老人が言った。店に入る。
「わしは育て屋ばあさんじゃ。お前さんの代わりにポケモンを育ててあげるよ。何か育ててほしいのかい?」
「ああ、頼む」
彼女はモンスターボールを2個出した。交換で手に入れたパチリスたちだ。老婆はボールを専用の装置にセットし、所有者情報を一時的に育て屋に書き換えた。こうすることで、預けられたポケモンが育て屋の言うことを聞き、逃げ出すようなこともなくなる。壁に貼られた紙には、こう書かれていた。
「あなたが歩けば、ポケモンも育っていく……心はいつも一緒」

店内で、預けているポケモンの様子がわかる「育て屋チェッカー」を、外で、最近手に入れたポケモンの履歴を表示する「ポケモンヒストリー」を、ポケッチに追加してもらった。

町の東にある遺跡に来た。小高い丘に掘られた横穴に入る。内部は緻密な石組みで覆われ、左右に階段が延びていた。一番手前の階段を降りると、何もない方形の小部屋に出た。ダウジングマシンにも何の反応もない。
部屋を出ようとしたとき、壁の隙間から何かが這い出し、彼女の前でゆらりと立ち上がった。凸レンズのような大きな丸い目玉の下から黒い棒が延び、途中で右に折れ曲がっている。
「!……エ…ル」
彼女はそれに驚きつつもベリト(コロトック)を出し、捕獲にかかった。予想以上に手強い。効果が抜群の目覚めるパワーでダメージを負ったベリトを下げ、アロス(ドーミラー)の催眠術で眠らせる。モンスターボールを投げ、捕獲に成功した。
アンノーン ―― 古代文明の文字との関連性が語られるシンボルポケモンだ。

  
  
通路の突き当たりの壁には、その文字が刻まれていた。
「みぎうえ、ひだりした、みぎうえ、ひだりうえ、ひだりうえ、ひだりした」
なぜそれを読むことできるのか、彼女自身にもわからない。文字列はどこかへ向かう道順を示しているようだ。一般的な地図では北が上になることから、上=北、下=南、左=西、右=東と当てはめることができる。それに従い、先に進む。途中、シールをくれるという少年と会い、勝負を挑んできた遺跡マニアを倒した。
彼女は動きを感じてバッグを下ろし、ジッパーを開いた。あのタマゴだ。しばらくチェックしていなかったが、ここに来たときには既に孵化直前だったようだ。床に置いて少し待つと、殻にひび割れが走り、破片が飛んだ。
光があふれて薄暗い通路を照らし、中からピンク色をした卵型のポケモンが現れた。図鑑によれば、名前は「ピンプク」、レベルは1、ラッキーの進化前らしい。野性ポケモンが出る場所に出しておくのも危険なため、すぐにボールに収めた。

階段の昇り降りを繰り返し、一際大きな部屋にたどり着いた。ここが目的地のようだ。その壁面にも文字が刻まれていた。読んでみる。

「フレンド」
   
    
  
「すべてのいのちは、べつのいのちとであい、なにかをうみだす」

金の玉、不思議なアメ、不思議のプレート、怪しいお香を拾い、部屋を出た。

回復を済ませたのち、先程の少年の家を訪ね、シール入れとアルファベットのシールをもらった。透明なボールカプセルにシールを貼り、それをモンスターボールに被せることによって、登場時のアクションを演出することができる。
小さな町だけに、全てを回るのに時間はかからなかった。ズイタウンを後にし、次のジムがあるトバリシティへと向か……

ここで、彼女ははたと思った。ヨスガシティで会ったとき、ジュンは次はトバリジムに挑戦すると言っていた。また、自分が来るのを待ち伏せるつもりなのだろう。
奴の思惑通りに動くのも癪だ……ならば、裏をかいて、ノモセシティに行けばいいではないか!

予定変更!旅は気まぐれだ。

お小遣い53950円  ポケモン図鑑66匹(捕まえた数48匹)  バッジ2個  プレイ時間159:18



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#26
ズイタウンから209番道路を戻り、ヨスガシティの南ゲートを抜け、212番道路に入った。日もすっかり落ちてしまったが、かまわず先に進む。西側は森、東側にはレンガ作りの高い塀が延々と続いている。何かあるのだろうか?

突然、まぶしい光が彼女を照らした。それはライトを持った、制服姿の警察官だった。
「きみきみ、夜の散歩は危ないぞ!」
男はホーホーを繰り出した。ポケモン勝負をしようというのだ。
「金を巻き上げようというのか、こんないたいけな少女から」
彼女はふぅとため息をついた。ハル(ムクバード)を出してホーホーを翼で打つの一撃で倒し、次のワンリキーもアロスの神通力であっさりと倒した。
「こんなに遅くなって……お母さんに連絡したのかい?」
「つべこべ言わずに、さっさと出せ」

トレーナーを倒して進むうち、長い長い塀に終わりが見えてきた。角を曲がり、しばらく歩くと門があった。
「『ポケモン屋敷』 ポケモンを見たい方、どうぞ」
本当に広い。敷地は小さな町一つ分はあるだろうか。手入れの行き届いた庭園を抜け、立派な洋館にたどり着いた。メイドは彼女をその一室に案内した。
「こちらが屋敷の主、ウラヤマ様のお部屋です」
中に入ると、革張りの椅子にでっぷりと太った中年の男が座っていた。シンオウ屈指の大富豪、ウラヤマ氏その人だ。ヨスガシティのふれあい広場も彼のものだ。
「やあやあ、よく来たよく来た。わしの豪邸にようこそ!むおっほーん!わしの自慢は何といっても素敵な裏庭じゃ!わざわざ遠くへ出かけんでも、この裏庭の素晴らしさにポケモンが集まり放題じゃ!まあ君も好きに歩いてもいいのだよ!むおふぉ!」
男は大きな身振りで両手の指輪をぎらつかせた。脇に控える執事がフォローする。
「旦那様は大変素晴らしい方です!何しろ、ご自慢の裏庭をトレーナーの皆さんに解放されているのですから!」
室内には様々な美術品が飾られている。ガラスケースの中にはモンスターボールが並んでいた。貴金属や宝石で飾り立てたものばかりで、成金趣味が一目でわかる。高価な書籍や銅像もあった。
この俗物に興味はないが、ポケモンは別だ。技マシン87「威張る」をもらい、部屋を出た。今夜はここで宿を借りる。初々しい感じのメイドから、ポケモンがなつきやすくなる、安らぎの鈴をもらった。

「この先、自慢の裏庭です。どなた様でも自由に見学できますが、ポケモンが飛び出してきますわ」
翌朝 ―― メイドから説明を受け、裏口を出て高台への階段を登る。そこには一面の草原が広がっていた。裏庭というよりも、ただの野原といったほうがふさわしい。表の庭園とは対照的だ。
コロトック、ムクバード、ロゼリアといった野生ポケモンが見られるなか、ピチューが現れた。ベリトの吸血でHPを削り、歌うで眠らせ、捕獲した。その後、進化形のピカチュウも捕獲できた。他に目新しいポケモンはいないようだ。

再び、212番道路に戻る。少しすると、雨が降り出した。自然保護官であるポケモンレンジャーを倒し、ウパーを捕獲した。
道なりに東に進むと、点在する小高い丘が見えてきた。それらは丸太の一本橋で結ばれている。近くにいた少年によれば、自転車でなら渡ることができるということだ。彼女は自転車に乗り、雨で滑りやすくなっている丸太の上を慎重に渡った。その先で技マシン63「銀色の風」を見つけた。
川に架かる橋の上では、釣り人たちに並んで糸を垂らし、ひげ魚ポケモン・ドジョッチを釣り上げた。

川辺に1軒の民家があった。看板が出ている。
「技マシンいろいろ、かけらと交換いたします」
そこには女2人の姉妹がいた。姉に地下で掘り出した4種類のかけらを渡し、技マシン11「日本晴れ」、18「雨乞い」、37「砂嵐」、07「あられ」を受け取った。それぞれ、天候を変化させる技だ。妹の話では、姉は以前天気研究所に勤めていたそうで、技マシンはその研究と関係しているのかもしれない。
道路は沼地を横断している。深みに足を取られ、歩きづらい。木の陰で、技マシン06「毒々」を拾った。

ようやく雨が上がり、道の先に町が見えてきた。ノモセシティだ。
「ここはノモセシティ 大湿原と生きる町」
ポケモンセンターは町の北にあった。彼女はポケモンたちを受付に預け、熱いシャワーを浴びた。戦いには飢えている。今すぐジム戦だ!
レビアたん(ポッタイシLv.24)、ハル(ムクバードLv.24)、オリア(ルクシオLv.24)、ベリト(コロトックLv.24)、バラク(ズガイドスLv.24)、アロス(ドーミラーLv.24)の6匹を確認し、ボールに戻す。それを見ていた若い女が彼女に話しかけた。
「あなたも、さっきのダッシュが好きな男の子と一緒で、ポケモンと仲良しなのね」
「あ?」
女からナエトルお面をもらった。彼女は疑問を感じつつも、それをアクセサリー入れにしまった。

「ノモセシティポケモンジム リーダー・マキシマム仮面 ウォーター・ストリーム・マスクマン」
扉を開けると、いつもの男が待っていた。
「ここのジムリーダー、マキシさん……いや、マキシマム仮面は水タイプの使い手!水タイプのポケモンに炎や地面タイプで戦うのは、いい度胸といえるだろうな!そのあたりはお前に任せるぜ!じゃあ、いいファイト、よろしくな!」
彼女は気づいた。眉間にしわを寄せ、柱のプレートを見上げる。
「……そういうことか」

「ノモセシティポケモンジム ジムリーダー・マキシマム仮面 認定トレーナー!」
「ジュン」

お小遣い81907円  ポケモン図鑑68匹(捕まえた数59匹)  バッジ2個  プレイ時間236:43



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#27
ジムの内部は薄い青で統一されている。複雑に高低がつけられたフィールドには水が溜まり、所々に黄色いフロートが浮かんでいる。これで、どのようにしてジムリーダーがいる場所まで行くのだろう?
手近なジムトレーナーと戦おうと細い通路を歩いていると、床に何かのスイッチがあった。それを踏む。ゴーッという音を立てて水が抜け、フロートが下がり、水の下に隠れていた通路があらわになった。なるほど、こうして進んでいけばいいわけだ。
「ここで体だけでなく、ポケモンと心をきたえてるよ!」
浮き輪をした少年のブイゼルにオリアを出し、スパーク一撃で倒した。
「ぼくもマキシさん……じゃなくて、マキシマム仮面と同じマスクかぶろうかな」

できた通路を進む。堀一つを隔て、ジムリーダーと対峙した。筋肉と脂肪の鎧をまとった上半身裸のマスクマンは、腕を組み、悠然と構えていた。ギザギザの白いひさしがついた仮面を青いベルトで止め、その下からはモヒカンに刈り上げた髪と長いモミアゲ、そして力強い眼差しが覗いている。
「そこで大人しく見ていろ。時間はかからない」
彼女はそう言い放った。声は2階通路の少年にも届いていた。

……ジュンよ。目先のリードなど、何の意味もないと知れ!

釣り人のドジョッチをレビアたんのバブル光線で倒した。スイッチを踏むと、今度は注水が始まり、堀が水で満たされた。
船乗り、釣り人、浮き輪の少女ら、ジムトレーナー全員を次々と倒した。最後のスイッチを踏む。水が満ちてフロートを押し上げた。ジムリーダーが待っている。

「よぉーく来たッ!!」
マスクマンは大声を張り上げた。彼女は微動だにしない。
「俺様こそがノモセシティポケモンジムのリーダーでぇ、その名もマキシマム仮面!水の力で鍛えた俺様のポケモンはぁ!お前の攻撃を全部受け止めた上で勝利するから、かかってこぉい!」

ジムリーダーのポケモンは3匹、マキシマム仮面が気合いと共にボールを投げ上げると、巨大な青いポケモンが姿を現した。ギャラドスLv.27だ。龍に似た長い体をくねらせ、宙を舞っている。
彼女はオリアを繰り出した。ギャラドスの威嚇でその攻撃が下がる。オリアへの指示はただ一言だった。
「スパークだ」
「ギャルルゥッ!」
オリアは全身に電気をまとい、弾丸のようにギャラドスに突っ込んだ。
「グギャアアァァ―――!!」
ギャラドスは建物中に響き渡る悲鳴を上げ、バトルフィールドに激しく体を打ちつけた。
ただ一撃で勝負は決した。水タイプと飛行タイプを併せ持つギャラドスは、電気タイプの技で4倍のダメージを受ける。一撃で倒せることはわかっていた。たとえ攻撃が下がろうとも、だ。

マキシマム仮面は横たわるギャラドスをボールに戻し、ヌオーLv.27を繰り出した。のっぺりとした体つきの水色のポケモンだ。水タイプの弱点である電気技を、地面タイプが無効化する。彼女はオリアを戻し、ハルを繰り出した。こちらも地面タイプの技は無効だ。今度はハルの威嚇でヌオーの攻撃が下がった。
ハルは翼で打つ攻撃を仕掛け、ヌオーは叩きつける攻撃で応戦する。マキシマム仮面はダメージが蓄積したヌオーを薬で回復させたが、ハルは間髪入れず連続の翼で打つで畳み掛ける。最後は電光石火が決まり、ヌオーはゆっくりと倒れた。

マキシマム仮面はフローゼルLv.30を、彼女はレビアたんを繰り出した。フローゼルはブイゼルの進化形だ。明るい茶色の体毛は変わらないが、首の黄色い浮き袋は腰まで延び、前足の青いひれは大型化している。
「今の!いい攻撃だったな!」
「フッ……相手が水タイプだからといって、電気タイプばかり使うような、つまらない戦いはしたくない。最後は水タイプ同士、真っ向勝負と行こうじゃないか!」
フローゼルは素早い身のこなしでスピードスターを放った。星型の光の攻撃だ。
「レビアたん、秘密の力だ!」
「ギャ――オッ!」
レビアたんはフローゼルに翼を叩きつけた。どちらもノーマルタイプの技だ。お互い、水タイプの技にダメージは期待できない。凍気を込めた牙で噛みつく氷の牙と秘密の力の応酬となる中、突然、フローゼルの動きが鈍った。
「秘密の力」とは、使う場所によって追加効果が変化する技 ―― 室内で使ったとき、それは相手を「麻痺」させる!
両者とも、持っていたオボンの実で体力を回復させた。マキシマム仮面が叫ぶ。
「これから盛り上がるところ!」

「いや、鐘(ゴング)だ」
鈍い打撃音が響き渡る。レビアたんの渾身の秘密の力を食らい、フローゼルは倒れ伏した。立ち上がることはできない。


「おわっ!終わっちまったか!何と言うか、もっともっと戦いたかった。そんな気分だ!」
マキシマム仮面はフローゼルをボールに戻し、頭をかいた。
「まぁ、結果はこの通りだが、お前と戦えて、ものすごぉく楽しかった!なので、これを渡そう!」
フェンバッジだ。丸い銀色のバッジには楕円形に青い色が入れられ、ノモセを象徴する大湿原を表現している。
「霧払いという秘伝技を使うには、そのフェンバッジがいるのだ!そして、これはお前とお前のポケモンの強さを讃えるためにあげよう!」
技マシン55「塩水」を受け取った。相手のHPが半分以下のときに使うと、与えるダメージが2倍になる水タイプの技だ。ハルはLv.25に、レビアたんとオリアはLv.26になった。回復のため、ポケモンセンターに戻る。

「どんな戦い方でどんな風に勝つかは、トレーナーそれぞれだぁ!その中で俺様はぁ、勝ったほうも負けたほうも、楽しかった!そう言えるポケモン勝負をしたい!」
男の熱い言葉に彼女は振り返り、笑顔を見せた。
「楽しかったよ、あたしも」

右手首のバングルに文字が浮かび上がる。4番目の文字は「 E 」 ―― 「 C I F E

お小遣い94811円  ポケモン図鑑72匹(捕まえた数59匹)  バッジ3個  プレイ時間238:57



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#28
久々のジム戦も無事終わり、彼女は町を見て回ることにした。
原始のままの姿を残し、様々なポケモンが生息する大湿原 ―― それを保護するために自然と形作られていったのが、このノモセシティだ。町のマスコットは「グレッグル」という蛙に似たポケモンで、フレンドリィショップのカウンターにも木彫りの置物が置かれている。かなり個性的な顔立ちだが、彼女は興味を持ったようだ。

麦わら帽子の少年が、彼女に向かって臆面もなく聞いた。
「なあなあ。ミノムッチってポケモン、いろんな姿があるじゃん?おまえ、いろんな姿のミノムッチ全部持ってる?」
彼女は両拳を少年のこめかみにグリグリと押し付けた。
「誰が『おまえ』だ」
拳を離すと、涙目の少年は頭を押さえ、必死に平静を装った。
「何だよー、1匹もいないぞ!おまえ、ミノムッチきらい?むにむにっとして、かわいいだろ?」
「……足りなかったか?拳が」

海辺の民家を訪ねる。小太りの若い男は、数え切れないほどの本の山に囲まれ、読書にふけっていた。
「みんな僕のことをポケモン技マニアと呼ぶよ。ポケモンが成長して覚える技を全て知ってるし、その技をポケモンに教えることだってできちゃうんだ!もし、ハートのウロコをくれたら、知ってる技を教えてあげる!」
「これのことか」
バッグから虹色に輝くウロコを取り出す。地下で山ほど出てきたものだ。
「わーお!それはハートのウロコ!技を覚えさせていいんだね?どのポケモンにするの?」
バラクに頭突きを覚えさせる。男はボールを受け取ると、自作の機械にセットし、技を選択した。技マシンと同じで、習得にかかる時間はわずかだ。もう、反動がある突進を使う必要はない。

「ノモセ大湿原 展望台ゲート」
展望台は全面ガラス張りになっており、大湿原を一望できる。そのすぐ下から一直線に線路が延び、オレンジ色をした1両編成の車両が行き来している。湿原列車のクイック号だ。湿原内での移動は徒歩か、これに乗ることになる。
備え付けの望遠鏡を覗くと、沼草の間にポケモンが見えた。ビーダルやウパーなどのありふれたポケモンに混じって、紫色をしたグレッグルがいた。
大湿原では、野生ポケモンを捕獲できるサファリゲームを楽しむことができる。ポケモンへの攻撃行為は禁止され、自然環境への影響を抑えるとともに、捕獲の成功率を下げることによって乱獲を防いでいる。ボールは専用のサファリボールのみが使用でき、制限時間も決められている。受付で入場料を支払い、ボール、ポケモンの餌、無線機を受け取った。
「時間になりましたらこちらからお知らせしますので、存分にお楽しみください!それでは、行ってらっしゃい!」

ゲートをくぐると、深い森に囲まれた大湿原が広がった。とりあえずはクイック号には乗らず、徒歩で行くことにする。沼地で深みにはまり、足を抜こうとあがいていると、マリルが現れた。さっそくボールを投げ、捕獲した。
池で釣りをしてみる。コイキングやドジョッチがかかったが、そのまま逃がした。未捕獲のポケモンを優先するためだ。同様にウパー、ビッパ、ビーダル、ホーホーは無視したが、初見のゴルダックはボールに収まらず、逃げられてしまった。
木が密に生えていて先に進めないため、近くの駅まで戻る。ホームの呼び出しボタンを押すと、クイック号がやってきた。合図の鐘を鳴らし、発車する。車窓からは、野生ポケモンや他の入場者たちが見える。彼女は考えていた。ただ闇雲に歩き回るだけでは、制限時間を有効に使うことはできない。何かいい方法があるはずだ……

クイック号は程なく終点に到着した。ホーホーの進化形のヨルノズクを捕獲し、歩いていると、空中をゆらゆらと漂う大きな草ポケモンが現れた。虫捕りポケモン・マスキッパだ。出会い頭のボール1個目は失敗したが、2個目で捕獲に成功した。
グレッグルはどこにいるのだろう?ヌオーを捕獲し、線路の向こう側に行こうとしたとき、無線機が鳴った。
「時間を過ぎたので、サファリゲームは終了です」


翌日、態勢を整えて再挑戦する。今度は最初にクイック号で一番奥まで行き、ゲートに向かって歩くことにした。列車を降り、沼草に分け入る。彼女は手持ちのミツハニーをボールから出した。
「甘い香り」
ミツハニーはポケモンが好む甘い香りを放った。探し回るのではなく、誘き寄せる。これならルール上、何の問題もない。
何度も繰り返すうち、青紫色をしたサソリポケモン・スコルピが這い出てきた。2匹に逃げられ、3匹目で捕獲することができた。
場所を変えつつ甘い香りを使ってみたが、グレッグルは見つからない。マリルの進化前のルリリを捕獲したが、ゴルダックにはまたしても逃げられてしまった。努力も空しく、無線機が鳴る。
「ボールが切れたので、サファリゲームは終了です」

サファリ通いもついに3日目、さすがの彼女も忍耐の限界に達しようとしていた。
望遠鏡を覗くと、グレッグルの姿がちらりと見えた。
「……」
2回の挑戦で地形は把握している。受付で入場料を叩きつけ、目標の地点に向かう。

ミツハニーの甘い香りを使う。少しして、沼草をかき分け、紫色のポケモンが顔を出した。グレッグルだ。「キシシシッ」と、したり顔で笑っている。彼女は氷のように冷たい眼でグレッグルを睨んだ。
「……おまえ、あたしと一緒に旅に出るか、それとも死出の旅に出るか、好きなほうを選べ」
言葉の意味はわからずとも、雰囲気は感じ取れる。殺気に満ちた恫喝に、グレッグルは凍りついた。

豪速球が脳天を直撃し、グレッグルの意識が飛んだ!彼女のコントロールは確かだ。サファリボールはグレッグルを吸い込んだが、あと少しというところで開いてしまった。
各ボールは、瀕死状態のポケモンを捕獲することはできない。今の一撃で、グレッグルは既にその一歩手前だ。今度はそおっと投げる。ボールが揺れ、ロックがかかる音がした。それを拾い上げた彼女は、満足げな笑みを浮かべた。

ボールは余っているが、早めに切り上げる。帰り道、若い男から声をかけられた。
「サファリゲームの途中、こんなもの拾ったよ。秘伝マシンの霧払いだけど、俺のポケモン覚えられないんだ。だから君、もらってくれよ!」
秘伝マシン05「霧払い」を受け取った。すっかり忘れていたが、まさかこんなところで手に入るとは思ってもみなかった。

ノモセシティを後にする。次はトバリシティだ。

お小遣い91211円  ポケモン図鑑77匹(捕まえた数66匹)  バッジ3個  プレイ時間251:20

INDEX 目次前項25262728メモ次項