P‐LOG ダイヤモンド編
#17 |
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2階建ての黒い洋館は、谷間にひっそりとたたずんでいた。外壁にはツタが絡まり、所々壁が剥がれ落ちている。何とも不気味な雰囲気が漂っているが、彼女はかまわず大きな扉を押し開け、建物内に足を踏み入れた。
広いホールだ。左右に階段が延び、2階に続いている。まずは1階正面の部屋を調べてみる。そこは食堂になっていた。十数人が一度に食事を取れるほどの長いテーブルには、白いクロスが敷かれ、銀の燭台が置かれている。
突然、目の前を影がよぎった。ガスをまとった黒い球体で、大きな目と口がある。名前は「ゴース」、古びた洋館には似つかわしいゴーストタイプのポケモンだ。パチリスを出してスパークで一気に体力を削り、スボミーに交代して痺れ粉で麻痺させる。ボールを投げ、捕獲は完了した。
きしむ階段を登り、2階へと向かう。左の部屋で、真新しい紙の箱を見つけた。「ハクタイ銘菓 森の羊羹」との文字があり、賞味期限も切れていない。誰が置いていったのだろう?
中央の通路は多くの小部屋に通じている。その一つで黒い石板を拾った。その名を「強面プレート」といい、ポケモンに持たせることで悪タイプの技の威力を上げる効果がある。別の部屋では、なぜかテレビが点いていた。画面は砂嵐、スピーカーからはザーッという音が流れている。コンセントが抜けているが、きっと電源のいらないテレビなのだろう。また別の部屋では、技マシン90「身代わり」を見つけた。
右の部屋には何もなかった。洋館を出る。サイキッカーが言っていた「気配」とは、何のことだったのだろう?
彼女は細い脇道を見つけた。居合い切りを使い、先に進む。途中の高台で、虫タイプの技の威力を上げる銀の粉と、技マシン82「寝言」を拾った。森を迂回するように進むと、ソノオ側の205番道路に出た。これで大幅なショートカットが可能になる。204番道路の奥では、トレーナーズスクールの教師から、技マシン78「誘惑」をもらった。
ハクタイシティに戻ってきた。ポケモンセンター隣の、「地下おじさんの家」という表札の上がった民家を訪ねてみる。頭の禿げ上がった老人が出迎えた。
「わしが!いちばん最初に地下通路を掘り始めた、その名も『地下おじさん』なのじゃよ。お前さん、お前さん。これをぷれぜんとするから、ぜひ使ってみたまえ!」
彼女はずっしりと重い、大きな布袋を渡された。
「お前さんにぷれぜんとした探検セットを使うと……!たちまち地下通路に行ける!そこでは、あんなことやこんなこと、いろんなことができるのじゃ!そうじゃ!お前さんを立派な地下ベンチャーに育ててやろう!どうじゃ、ちゃれんじするか?」
「地下ベンチャー?まあ、暇つぶしにちょうどいいか」
「うむ!よく言ったな!まずは地下通路に行くのじゃ!地下の世界に行くのは簡単!外で探検セットを使うだけ。もしそれができたら、次のテストをしよう!」
袋の中からは、ヘッドランプ付きのヘルメット、軍手、シャベル、ハンマー、ピッケル、4つの小袋、レーダー、ノートパソコン、青い旗、そして鍵が出てきた。外に出て辺りを見回すと、マンホールがあった。よく見ると、その蓋には鍵穴がついている。この鍵を使え、ということらしい。彼女は鍵でマンホールの蓋を開け、はしごを伝って下に降りていった。
鉄材で補強された坑道に出た。天井からは電球がぶら下がり、探索に支障はない。周りを見回す彼女に、オレンジのヘルメットをかぶった若い男が声をかけた。
「あっ!!もしかして、初めてここに来た!?」
「……ああ、クロガネジムリーダーの」
レーダーに反応が現れた。ヒョウタと別れ、光点が示すポイントへと向かう。壁に少し盛り上がっている場所を見つけた。ハンマーとピッケルを取り出し、力一杯振るうと、壁の中に何かの光がわずかに見えた。しかし直後に壁が崩れ、それは埋もれてしまった。不用意に衝撃を与えると、早く崩れてしまうようだ。
コツはつかんだ。今度は少しずつ掘ってみる。壁の中から青い輝きが顔をのぞかせた。周りの岩を慎重に取り除き、それを取り出す。「青玉」という宝石の一種で、親指の爪ほどの大きさがある。場所を変え、白玉、紅玉、緑玉を掘り出した。その大きさは大小様々だ。瀕死状態のポケモンのHPを半分まで回復させる、元気のかけらも見つかった。
坑道を歩いていると、何かを踏んだ感触があった。足元から泡が吹き出す!彼女は泡を手で払い、そこから抜け出した。誰かが仕掛けたトラップのようだ。見つけたトラップを解除・回収しつつ、金剛玉、月の石、冷たい岩、ハートのウロコ、猛毒プレート、黄色いかけら、緑のかけらといったものを掘り出した。もと来た道を戻り、地上へと出る。
次のテストは秘密基地を作ることだ。適当な壁に向かって穴掘りドリルを使う。掘り当てた空洞は十分な広さだったが、大きな岩が多数あり、決して使い勝手がいいとはいえない。彼女はその一番奥に、グッズ管理用のノートパソコンと、自分の基地であることを示す旗を置いた。
更に、パソコンを通じて転送してもらった家具で、模様替えを行う。パソコンのそばにテーブル、椅子、本棚を設置した。その後も発掘作業を続け、新たに水の石、変わらずの石、硬い石、頭蓋の化石、貴重な骨を掘り出した。
「どうだ?」
「おお!お前さん、ついに模様替えまでこなしたか!さすがは、このわしが認めた地下ベンチャー!模様替えをするときは、入り口を閉めておくことを忘れるな!もし、模様替え中に誰か来て、怪我でもしたら大変だからな!あと、もらったグッズを置くときは、パソコンに預けるのを忘れずにな。よくやった!褒美にこれをやろう!」
老人は免許皆伝のしるしとして、彼女にポッチャマドールを渡した。
「フフン」
彼女は満足げな様子だ。暇つぶしとは言いつつも、結構楽しかったらしい。
「もっと秘密基地のグッズを集めるのであれば、玉を掘ったり育てたりして、交換してもらうのがいい。あとは、友達からもらうのも一つの方法じゃな!」
地下通路、それはシンオウ全土に広がっている。
お小遣い17950円 ポケモン図鑑49匹(捕まえた数32匹) バッジ2個 プレイ時間57:02
#18 |
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「まあ、素敵なトレーナーさん。どんなポケモンと一緒なの?」
彼女はおもむろに、隣に座っていたポッチャマの襟首をつかみ、女の鼻先に突きつけた。
「ポ」
女はそれにぎょっとしつつも続けた。
「このポケッチのアプリで、あなたとポケモンが仲良しなのか、わかるんだよ」
女はバッグからアプリ配信用の携帯端末を取り出し、彼女のポケッチに「なつきチェッカー」を追加した。試しにポッチャマに向けてみると、ディスプレイに大きなハートが2つ表示された。
「ふーん……どうやら、最高らしいな」
「ポチャポチャ」
ポッチャマはうんうんとうなずいた。ムクバードとコロトックも大きなハート2つ、ルクシオとスボミーは小さなハート2つ、パチリスは小さなハート1つだった。
「『ハクタイマンション』 姓名判断やってます」
ここには姓名判断士がいる。ニックネームからそのポケモンの運勢を占い、改名のアドバイスと、新しいニックネームのポケモン協会への登録手続きを行う、専門職だ。
彼女の足取りは重い。「名前」というものに対する拘り……記憶を失い、自分の名前すらわからない彼女にとっては、自分のポケモンにニックネームを付けることにさえ、大きなためらいがあった。中に入ると一角に畳敷きのスペースがあり、紺の作務衣を着た柔和そうな男が座っていた。
「おい」
「はいはい!私は姓名判断士。いうなれば、名前の占いです。はい、あなたのポケモンのニックネームを占ってあげるよ」
「…………いや、やっぱりいい」
彼女はうつむき、男に背を向けた。
「そうか、わかった。また、来なさいよ」
サイクルショップを訪ねる。店内には様々な種類の自転車が所狭しと並んでいる。その店主は、ギンガ団との戦いで偶然助けることになった男だった。
「先ほどはありがとう!これは感謝の気持ちだ!最新型の自転車、ぜひとももらってくれたまえ!」
折りたたみ式の青いマウンテンバイクだ。変速装置が付き、道を選ばない。
自転車を走らせるうち、道の先にサイクリングロードの北ゲートが見えてきた。
そこを抜ければ、もう引き返せないような気がした。
彼女は自転車を置いた。フレンドリィショップでモンスターボールを買い、山際で技マシン46「泥棒」を拾い、ポケモン用の漢方薬を売る漢方屋を見……
当てもなくさまよう彼女は、いつの間にか町外れの211番道路に来ていた。草むらに入ると、野性ポケモンが現れた。コロトック、スボミー、パチリスのコンビネーションで、アサナン、火の馬ポケモン・ポニータ、フクロウポケモン・ホーホー、鈴ポケモン・リーシャンを次々と捕獲した。
深い谷に架かる橋を渡ったところで、山男から勝負を挑まれた。男はイシツブテを、彼女はコロトックを繰り出した。コロトックは威力がランダムに変動する地面タイプの技・マグニチュードを耐え、岩砕きでイシツブテを倒した。男は続いてイワークを繰り出した。彼女はポッチャマだ。
「ポッチャマ、泡攻撃だ!」
「ポッチャ!」
2人の息はぴったりと合っている。ポッチャマは嫌な音をかわし、吐き出した泡はイワークを的確に捉えた。イワークの巨体は地響きを立て、崩れ落ちた。彼女はポッチャマを戻し、そのボールをじっと見つめた。
「……思えば、あたしもポケモンたちも、同じゼロからのスタートだった。これまで共に歩んできたお前たちに、いつまでも名前を付けずにいるというのは、良いことではないな」
彼女は町へと走った。
「では、どんなニックネームにしようかな」
「名前、か……」
いざ考えてみると、良い名前など早々思いつくものではない。彼女とポッチャマは見つめ合った。
3時間が経過した。彼女とポッチャマは脂汗を流しながらにらみ合っている。
ふと、彼女の頭の中に一つの名前がひらめいた。
「『レビア』……そうだ、『レビア』がいい!カタカナで、レ・ビ・ア、だ!」
男は筆を取ると、半紙にさらさらと墨書した。
「……いや、ニックネーム……愛称というからには、もっと親しみやすい名前のほうがいいのか」
彼女は迷いに迷っている。それを見かねた男は微笑み、下に小さく二文字書き加えた。
「よし、これからこのポケモンは『レビアたん』だ!」
「……ふっ、ふざけるな!そ、そんな気恥ずかしい名前で呼べるかっ!!貴様、このあたしを誰だと思っている!?…って、あたしは誰なんだあぁ――っ!?」
彼女は顔を真っ赤にして怒り狂っているが、男はどこ吹く風だ。慣れた手つきで印を押し、半紙をスキャナにかける。ポケモン協会のポケモン管理システムにデータが送信され、ディスプレイに登録完了を示すメッセージが表示された。
……まあ、いいか。
彼女はふっと笑い、右手を差し出した。ポッチャマもそれに応える。
「頼むぞ、レビア…たん」
「ピィ」
ムクバードに「ハル」、ルクシオに「オリア」、コロトックに「ベリト」、スボミーに「レラ」、パチリスに「キメリ」と名付けた。自転車に乗り、ハクタイシティを後にする。
「さっき、お前、シィって言わなかったか?」
彼女は、笑った。
お小遣い19606円 ポケモン図鑑51匹(捕まえた数36匹) バッジ2個 プレイ時間68:54
#19 |
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サイクリングロードの北ゲートで、彼女は眼鏡の男に呼び止められた。
「……あ?」
「なんですか?その顔は。誰?って、言ってますね。ナナカマド博士の助手であり、コウキの父親ですよ!?」
「あ、ああ」
「博士に頼まれて、君の冒険を手伝うためにはるばるやってきたのです。それでは、シィさん!君は何匹のポケモンと出会いましたか?」
彼女はコウキの父親にポケモン図鑑を見せた。
「なんと、51匹!素晴らしい!ブラボー!ナナカマド博士も喜ぶでしょう。これをどうぞ!」
学習装置を渡された。これを持たせたポケモンは、戦いに出ることなく経験値の半分を得ることができる。
自転車にまたがり、いよいよサイクリングロードに突入する。206番道路に架かる高架式の道路は、一直線の長い下り坂になっている。シンオウ地方の最高峰・テンガン山を左に見つつ、谷間のひんやりした風を受けながら下っていく。
「よう!サイクリング、楽しんでる?」
少年は進路をふさいで彼女を強引に止めると、ムクバードを繰り出した。ポケモントレーナーだ。彼女はオリアを出し、スパークの一撃であっさりと倒した。
「やるなー、お前!このサイクリングロードにも、ポケモントレーナーがいっぱいだ!」
彼が言うとおり、自転車に乗ったトレーナーたちが、わざわざ坂の途中で待ち伏せているのが見える。その後、彼女は2人を倒し、南ゲートに到着した。反対車線にたむろするトレーナーを一掃するため、今度は坂を上りつつ戦いを重ねていく。ベリトは岩砕きで少女のコリンクを倒し、新たに歌うを覚えた。戦闘のみならず捕獲にも役立つ、相手を眠らせる技だ。
「私は景色を楽しむの。サイクリングロードの下もなかなかいい景色でしょ!」
下をのぞきこむと、山肌は霧に覆われていた。はっきりとは見えないが、草むらがあるようだ。いかにも未知のポケモンがいそうな感じがする。全てのトレーナーを倒し、ベリトとキメリがLv.18、オリアがLv.19になった。
再び坂を下り、南ゲートを出る。高架下の草むらは気になるが、ポケモンたちの回復が優先だ。207番道路を南のクロガネシティに向かって歩いていると、赤いベレーの少年が手を振るのが見えた。コウキだ。
「おーい!シィ」
2人は切り株に腰を下ろした。
「ポケモン図鑑の調子はどう?」
「まあまあだな。そっちはどうなんだ?」
「僕?僕はいつだってバッチリ、だといいなあ……それはいいんだよ!今はいいもの使って、いろいろやってるところなんだ」
彼はリュックの中を探ると、握った両手を甲を上にして突き出した。
「シィにも分けてあげるから、好きなほう選んでみてよ」
「……じゃあ、右だ」
右手を返し、開くと、そこには三角形をした機械があった。
「なるほど、バトルサーチャーか。さすがシィだね。いいものを選ぶよね」
バトルサーチャーとは、近くにいるトレーナーの中から再戦希望者を募る装置だ。
「シィ、ポケッチは……?当然持ってるよね。じゃ、こっちも持っていきなよ。シィ、頑張ってるもんね」
左手に持っていたのは、アプリ配信用の端末だった。彼はそれを使い、彼女のポケッチに「ダウジングマシン」を追加した。これを使えば、隠れている道具を探し出すことができる。
「フン!回りくどいことを……」
「じゃあ、ポケモン図鑑がんばって!ナナカマド博士も期待してるし!」
コウキは北のほうへと歩いていった。父親と合流する予定でもあるのだろうか。
クロガネシティに到着した。ポケモンセンターで回復を済ませた後、炭鉱博物館に地下通路で発掘した化石を持ち込む。
「はいはーい!私、ここで化石の研究してまーす。あなた、化石持っていまーす。ポケモンに戻しますかー?」
「頼む」
研究員の男は頭蓋の化石を受け取ると、奥の部屋の復元装置にそれをセットし、スイッチを入れた。
「今、化石をポケモンに復元していまーす!しばらく外に出ていてくださーい。ちょっとだけ時間かかります!」
その間に、206番道路の高架下を調べに行く。南ゲート脇を降り、川を越えると、霧がかかり始めた。
突然、目の前にマンホールの蓋のような、青黒い円盤状の物体が転がり出てきた。それは彼女の前でぴたりと止まると、2つの目をカッと開いた。
「ポケモン、なのか?」
彼女は少し驚きつつも、図鑑を向けた。名前は「ドーミラー」、確かにポケモンには違いない。ベリトを出す。岩砕きを仕掛けると、ドーミラーは目から妖しい光を放ち、ベリトは混乱させられてしまった。キメリに交代し、スパークでHPを削ると同時に麻痺させる。電光石火で更に削り込み、モンスターボールで捕獲した。それは、タイプが鋼・エスパーという、珍しい組み合わせを持つポケモンだった。
ポニータやコロトックといった野性ポケモンが現れる中、スカンクポケモン・スカンプーを捕獲した。ハクタイシティでのギンガ団との戦いで幹部の女が使っていた、スカタンクの進化前のようだ。トレーナーの山男を倒して先へと進む。
北上を続け、ハクタイシティ下にたどり着いた。道はここまでだ。目の前の岩壁には、2つの洞窟が口を開けている。
右か、左か……
彼女は左の洞窟に入った。しかし、そこは岩によって完全に閉ざされていた。ベリトの岩砕きも効かない。
次は右の洞窟だ。今度は落石はなく、通れないということはない。だが、1m先も見えないほどの暗闇が邪魔をする。やむを得ず、入り口に引き返した。
ここは技マシンに頼るしかない。そう判断した彼女は技マシン70を使い、キメリに「フラッシュ」を覚えさせた。
「キメリ、フラッシュだ」
「パチィ!」
キメリの白い体毛に静電気が走り、蛍光灯のように光を放った。やや薄暗く感じるが、探索には十分な明るさだ。彼女は洞窟の奥深くへと足を踏み入れていった。
その名を「迷いの洞窟」という。
お小遣い24246円 ポケモン図鑑54匹(捕まえた数38匹) バッジ2個 プレイ時間77:39
#20 |
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程なく同じような分かれ道に行き当たった。洞窟は曲がりくねり、複雑に分岐し、迷路の様相を呈している。彼女は地道な作業を繰り返しながら、少しずつ奥へと進んでいった。
がっちりとした体格の山男の2人組が現れた。
「迷いの洞窟にいるのは迷子のポケモントレーナー!」
「迷ってお腹が減って、おかしなキノコ食べちゃッ、ぐふぐふ、うひひーっ!!」
彼らはイワークとイシツブテを繰り出した。彼女はレラとベリトを出し、メガドレインと岩砕きで2匹をあっさりと倒した。最後のワンリキーもメガドレインと居合い切りで片付けた。レラはLv.19になった。
そのとき、レラの体が光を放った。頭の上で組んでいた両手を下ろし、その赤と青のつぼみが花開いた。ついに、スボミーからロゼリアに進化したのだ。レラは新たにマジカルリーフを覚えた。
「ぐふふう。はあ、落ち着いた」
洞内はトレーナーだらけだ。戦闘後、ミニスカートの少女が気になることを口走った。
「そういえば、洞窟の奥から何か泣き声、聞こえない?」
技マシン32「影分身」や、食べさせるだけでレベルを上げることができる不思議なアメを拾い、更に奥へと進む。
かすかに、子供のすすり泣く声が聞こえる。声のするほうへ進むと、幼い少女が岩場に座り込み、泣いていた。長い髪を黄色いボンボンで2つにまとめ、赤いリボンカラーのついた白いパフスリーブのブラウスを着、赤いショートパンツ、白いタイツ、赤い靴を履いている。
「おい、どうした?」
少女は彼女の声に顔を上げた。
「あたし、ミル……ポケモンさんつかまえに来たら、迷っちゃって……こわかった……おねがいです!出口まで、ミルを連れていってください!」
「……わかった、一緒に行こう」
ミルを連れて、来た道を戻る。何か引っかかる……彼女には、少女の言動がどこか芝居じみているように思えた。
「あたしポケモンのね、鳴き声とか小さくなるとか、ポケモンを助けてくれる……そんな技がお気に入りなの」
「そうか」
適当な返事をしつつ歩いていると、少し先に人がいるのが見えた。眼鏡の太った男は座ってモンスターボールの手入れをし、帽子と作業着の男は壁に寄りかかって地図を広げている。間違いなくトレーナーだ。気づかれないようにやり過ごすこともできたが、彼女はそうはしなかった。
「やあ!道に迷ったんだが」
彼女は男たちにわざわざ話しかけた。ミルはぎくりとして、彼女の顔を見上げた。
「君は、僕が欲しがってるポケモンを持っていそうだね!」
「洞穴……洞窟……どこにでもいるのは、ズバットと遺跡マニアだ!」
彼らはゴースとイシツブテを、彼女はレラを繰り出した。
「さあ、お前もポケモンを出すんだ」
その言葉に、ミルは渋々モンスターボールを投げた。現れたのはユンゲラーだ。レベルは18と、十分に高い。
ミルの実力を見ようというのだ。ユンゲラーは速攻の念力でゴースを倒し、レラはマジカルリーフでイシツブテを倒した。
次に出してきたのは、ゴースとドーミラーだ。エスパータイプの苦手なレラを戻し、キメリに入れ替える。ユンゲラーは2体のゴースを次々と倒した。ドーミラーにスパークで攻撃したが、その防御は高く、ダメージは小さい。ドーミラーが封印を使い、ユンゲラーは念力を使うことができなくなった。
だが、それで音を上げるミルではなかった。ユンゲラーがスプーンをかざすと、それはぐにゃりと曲がった。「スプーン曲げ」、相手の技の命中率を下げるエスパータイプの技だ。それに惑わされたドーミラーは催眠術を外した。その隙にキメリが連続でスパークを仕掛け、ついにドーミラーを倒した。
「ふーん。やるじゃないか」
彼女はニヤリと笑った。
いつの間にか、ミルは彼女の前を歩いていた。その後はトレーナーに出くわすこともなく、至って順調に進み、程なく外の光が見えてきた。
「あっ!出口!」
ミルは振り返り、上目遣いで彼女の顔を覗き込んだ。
「もうこわがったりしないように、ミル、もっと強くなりたいな」
「……道案内、ご苦労さん。何かあたしのことを試すつもりだったらしいが、詰めが甘かったな。ま、猫かぶりも程ほどにしておくんだな、ミルちゃん?」
「シィさん、バイバイ。ありがとね!」
ミルは舌をぺろりと出し、悪戯っぽく笑うと、外へと駆けていった。オリア、ベリト、レラ、キメリの4匹はLv.20になっていた。
町に戻り、炭鉱博物館に化石ポケモンを引き取りに行く。
「遅かったねー!待っていたよー!これがズガイドスだよー!大事にしてあげてくださいー」
研究員の男からモンスターボールを受け取った。ズガイドスLv.20、ジムリーダーのヒョウタも使っていた、岩タイプのポケモンだ。名前は「バラク」と付けた。
ドーミラーは、最初に捕獲したものが、炎タイプの技によるダメージを半減する「耐熱」、次に捕獲したものが、地面タイプの技を受けない「浮遊」と、特性が異なっていた。浮遊のものに「アロス」と名付けた。
レラとキメリを預け、新たにこの2匹を連れて行く。彼女は次の町、ヨスガシティを目指し、クロガネシティを旅立った。
新しい仲間、バラクとアロス。その実力は?
お小遣い32210円 ポケモン図鑑54匹(捕まえた数40匹) バッジ2個 プレイ時間88:33