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P‐LOG ダイヤモンド編

#5
道端のトレーナーたちを軽くあしらい、202番道路を進むと、木々の向こうにビル群が見えてきた。コトブキシティだ。
市街地への階段を昇る。そこにはコウキがいた。
「やあ!シィ。どれだけポケモン捕まえた?」
彼は彼女のバッグのボールホルダーをのぞき込んだ。
「うわっ!5匹もポケモン連れているんだね!そうそう、コトブキにはトレーナーズスクールがあるんだ!シィも行くといいよ!そういえば、さっきジュンも行ってたっけ。それじゃ、またね。ポケモン図鑑、がんばってね!」

「ここはコトブキシティ 人が集う幸せの町」
コンクリートやレンガ造りの大小のビルが数多く建ち並び、行きかう人々で街は活気にあふれている。彼女はこのような大きな町に来るのは初めてだった。まずはポケモンセンターでポケモンたちを回復させた。トレーナーズスクールへ行き、預かった荷物をジュンに渡さねばならない。

「『トレーナーズスクール』 トレーナーの第一歩!」
それは大通りを挟んだポケモンセンターの向かい側にあった。こじんまりとした建物だが、小さいながらも屋内練習場があり、教室では生徒たちが熱心に勉強している。ジュンは黒板の真ん前に陣取り、一生懸命にそれを読んでいた。肩を叩く。

「おっ!シィ、おまえも勉強か?オレなんか黒板に書かれてること、ばっちり覚えたぜ!自分の大事なポケモン傷つけたりしないために、がんばるのがトレーナーだからさ。で、シィ。なにしに来たんだよ?
「お前の母親からだ」
彼は荷物を受け取ると、ためらうことなく包みをビリビリと破いた。
「なんだこれ……?やった!タウンマップ!」
中から出てきたのはタウンマップ、B6のノートほどの大きさの電子地図だ。
「って、2つも入ってる!?うーん、2つあってもなー。いいや、シィ、これやるよ!」
彼女は黙ってそれを受け取った。彼の母親がわざと2つ入れたのだろう、手間賃としては十分だ。
「うーん……タウンマップで見るかぎり、次はクロガネシティかな。あそこにはポケモンジムもあるし、捕まえたばかりのポケモン育てるのにぴったりだぜ!ということで、オレの最強トレーナーへの道が始まるのであった!じゃな!」
ジュンは一人満足げにうなずくと、駆け足で外へ飛び出していった。

これで自由の身だ。
彼女は練習場で勝負を挑まれ、生徒のケーシィと戦った。キツネのような顔をした人型のポケモンで、スピードだけは速かったが、ビッパの体当たりであっさりと勝利した。
「すごいね、君!僕たちも勉強してるのに、全然かなわなかったよ。この技マシン、君なら使いこなせるよ!どうぞ!」
少年から技マシン10「目覚めるパワー」のディスクを受け取った。ポケモンの個体によって、タイプと威力が変化する技だ。技マシンは適応するポケモンに一瞬で技を覚えさせることができるが、使用すればディスクのデータが自動的に消去されてしまうため、一度きりしか使えない。使いどころは慎重に選ぶ必要がある。

トレーナーズスクールを出ると、紺のジャンパーを着た中年の男が近寄ってきた。
「おやー?あなた、ポケモントレーナーなのに、ポケッチを持ってない?ポケモンウォッチ、縮めてポケッチ!それにしても珍しいねー。おじさんね、ポケッチ作ってるんだよ!それで、ポケッチのキャンペーンしてるよー!コトブキシティにいる3人のピエロを探し出してねー。そうすれば、君にもポケッチをプレゼントしまーす!」
辺りを見回すと、さっそく1人目が目に入った。フレンドリィショップの前だ。ピエロから引換券を手に入れた彼女は、ボールからムックルを出した。
「いいか?こいつと同じ格好をした奴に、鳴き声攻撃だ」
元より、地道に探すつもりなどさらさらない。空に放ったムックルの後を追い、鳴き声を頼りに距離を詰めると、テレビコトブキの前でムックルに追いかけ回されている、2人目のピエロを見つけた。3人目はポケッチカンパニーの前にいた。
「引換券を数えるよー!では、ポケッチを使って……1枚、2枚、3枚!お見事だねー!では、引換券をもらってあなたにはポケモンウォッチ、縮めてポケッチをどーぞ!!」
画面にデジタル時計が表示されたそれは、大きめの腕時計にしか見えない。
「ポケッチにアプリを追加すると、できることが増えていくよー!じゃあ、ポケッチタッチしてみて」
ろくな説明もなしに、男は行ってしまった。ボタンを押すと、「計算機」「歩数計」「ポケモンリスト」と、画面が切り替わるようになっている。手首に着けることを嫌った彼女は、それをバッグの持ち手から下げた。

フレンドリィショップでモンスターボールを少し買い足し、捕獲したポケモンをその場で回復させるという、ヒールボールも試しに買ってみた。コトブキマンションでは、住人から先制の爪をもらった。ポケモンに持たせれば、自分より素早い相手にも時折先制できるようになるという道具だ。
ドーム型の大きな青い建物があった。中に入るには、ポケモンジムのバッジが必要だという。

これからの進路を決める。彼女はタウンマップを開いた。まずは、西のミオシティに向かうことにした。
「うむ!ボロの釣竿は本当にいいよ!君もそう思うでしょ?」
「……ああ?」
「うむ!君とは気が合うよ!うむ!ボロの釣り竿をあげよう!」
町の出口で、彼女は釣り人からボロの釣り竿を押し付けられた。218番道路に出たが、それは海に突き出た桟橋ですぐに行き止まりになっていた。対岸には町が見えるが、渡る手段はない。
せっかくなので、釣り竿を試してみることにした。糸を垂らし、しばし待つ。竿がしなり、引き上げる。かかったのは、赤い魚ポケモン・コイキングだった。水のあるところならどこででも釣れるという、まさに雑魚だ。一応捕獲しておく。

次は北のソノオタウンだ。
204番道路の草むらでスボミーを捕獲した。色は黄緑で、頭の上にはつぼみを2つつけている。草ポケモンということで、捕獲に役立つ、相手を状態異常にする技を覚えてくれそうだ。レベル上げのため、スボミーを先頭にしてトレーナーと戦いながら進んでいく。
「ここは荒れた抜け道」
高台を掘り抜いて作られたトンネルで、ここを通ればソノオタウンはすぐらしい。しかし、その内部では岩が道を塞ぎ、通行不能となっていた。日も暮れてきている。彼女はそこにいたコウモリポケモン・ズバットを捕獲し、コトブキに戻った。

朝が来た。結局のところ、東のクロガネシティに向かう以外、道はない。
「きみきみ!マフラーの似合うきみ!」
男が話しかける。
「さっき通った少年、すごかったね!速すぎて声をかけることすらできなかったよ」

ジュンなら昨日出発したはずなのだが。

お小遣い1052円  ポケモン図鑑10匹(捕まえた数9匹)  プレイ時間32:55



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#6
203番道路を東に進む。彼女は足を止めた。そこにはジュンが待ち構えていた。
「おい!シィ!!ちょっとは強くなったか?オレ?聞くなよ!」
「聞いてない」
「強くなったに決まってるだろ!さあ、勝負だぜ!」

彼の手持ちは2匹、最初に出したのはムックルLv.7だ。彼女は先頭にしていたスボミーを戻し、代わりにコリンクを出した。コリンクの噛みつく攻撃で、ムックルのHPがあっという間に半分を切った。
「まだまだ!勝負はこれから!」
ムックルが猛スピードで突っ込む。電光石火だ。しかし、コリンクはそれを余裕で受け止め、噛みつく攻撃でムックルを倒した。
続いて彼はナエトルLv.9を、彼女はムックルを繰り出した。
「……最後は最初のポケモン同士、ポッチャマを出すとでも思ったのか?」
彼女は容赦しない。ムックルの翼で打つ攻撃に、ナエトルは何もできずに倒れた。

「なんだってんだよーッ!オレ、負けたのかよ!?」
彼は賞金をぽんと出した。案外、金払いはいい。
「うわー!負けたのかよ!だけど、オレが負けるのはこれが最後だからな!なんたって、オレは世界で一番強いポケモントレーナーになるからな!よしッ!まずはクロガネのポケモンジムに挑戦だな!きたえまくるぜッ!!」
ジュンは例のごとく、猛ダッシュで去っていった。

草むらに分け入る。既に手持ちが携行制限の6匹いるとはいえ、新たなポケモンを探すことは忘れない。ムックル、ビッパ、コリンクが多いようだ。ケーシィも見つけたが、ボールを投げる前にテレポートで逃げられてしまった。
突然、草むらが光った。飛び出してきたのはムックルだった。その姿に彼女は違和感を覚えた。羽毛は茶色っぽく、その上わずかに光って見える。普通、色は青みがかった灰色のはず……図鑑のデータと見比べたが、やはり少し違うようだ。
コロトックを出してHPを削り、モンスターボールを投げる。6匹をオーバーするため、すぐに預かりシステムに転送されてしまい、子細を確認することはできなかった。

トレーナーの数は次第に増えてきたが、まだまだ楽勝のレベルだ。丘を登り、山を貫くトンネル・クロガネゲートに入る。
ヒゲ面の山男が彼女に声をかけた。帽子をかぶり、大きなリュックを背負っている。
「そのポケッチ!ふむ、お前さん、まだまだひよっこトレーナーだろ」
帽子のつばに大穴が開き、男は冷や汗を垂らした。ポッチャマのつつく攻撃だ。
「ポッチャ!」
「……で?」
「だが、ポケモンを愛する者が増えたことは嬉しいことだ!なので、この秘伝マシンをお前さんにプレゼントしよう!」
男は精一杯の愛想笑いを浮かべ、秘伝マシン06「岩砕き」のディスクを差し出した。秘伝マシンは技マシンとは違い、何度でも使うことができる。
「岩砕きという秘伝を覚えたポケモンなら、小さな岩を砕ける!だが、クロガネのジムバッジを持っていないトレーナーではダメだ。バッジがないと、ポケモンが戦っていないときに秘伝を使わせることはできないのだ!」
彼女は、204番道路の荒れた抜け道が岩で塞がっていたことを思い出した。このクロガネゲートの分かれ道も、岩が邪魔をして通ることができない。自由に先へ進むには、バッジを手に入れる必要がある。

ごつごつした岩の塊に腕が生えたようなポケモンが現れた。イシツブテだ。スボミーはちょうど覚えたばかりの痺れ粉を浴びせかけ、イシツブテを麻痺させた。こうなれば後は簡単だ。ビッパに入れ替えてHPを削り、捕獲した。

トンネルを抜けた。眼下に広がる町並みは夕焼けに赤く染まっている。
「ここはクロガネシティ エネルギーみなぎる場所」
町がある平地は周囲を山地に囲まれている。大小の建物が点在し、南のほうには鉱山らしきものも見える。

長い階段を降りたところで、彼女は少年に呼び止められた。
「オッス!トレーナー!ジムバッジの一つも持ってないと、他のトレーナーから甘く見られちゃうだろ!だから、おれがポケモンジムまで案内してやるよ」
オレンジ色の屋根の、体育館のような大きな建物の前に連れてこられた。
「クロガネシティポケモンジム リーダー・ヒョウタ ザ・ロックといわれる男」
ポケモンバトルの技術向上を目的とした施設、「ポケモンジム」。各地のジムを巡り、それを統べる屈強なジムリーダーを倒し、勝利の証であるジムバッジを手に入れること ―― それがポケモントレーナーの目標の一つだ。

「あれ?ジムの前に誰かいるぞ」
扉の前には、特徴的な髪型の少年が立っていた。
ジュンだ……モンスターボールをもてあそんだり、伸びをしたり、手で双眼鏡をかたどって辺りを見回したりと、せわしない。もはや偶然とは思えない。明らかに待ち伏せされている。
「ポケモンジムの前にいるのって、君の知り合いかい?何だかせっかちそうだね」
やはり、そのせっかちさは一目見てわかるほどらしい。やがて彼が彼女に気づいた。
「??なんだ、シィかよ!今ごろ来たのか?あいかわらずおそいぞ。おそすぎて話にならないぜ。だって、ジムリーダーいないぜ?なんだったっけ……そうだ!クロガネ炭鉱に行くってさ!まあ、オレはジムバッジを手に入れたからいいんだけど」
「何…!」
「だから、ジムリーダーはいないんだってば。ジムに挑戦したいなら、炭鉱に行って相手してもらえるよう頼みなよ……それにしても、ジムリーダーってやっぱり強いな。さすがに疲れたぜ」
ジュンは、彼女に敗北してから半日も経たないうちに、ジムリーダーに勝利するまでに腕を上げていたのだ。

彼女は気づいた。彼がただのせっかちな少年ではないということを。

お小遣い2592円  ポケモン図鑑14匹(捕まえた数10匹)  バッジ0個  プレイ時間34:00



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#7
炭鉱町に朝日が昇る。彼女はポケモンセンターにいた。
「ポチャ、ポッチャ!」
「早く戦いたいんだな……ポッチャマ、もう少しの辛抱だ」
ポケモンたちはもう十分にジム戦を勝ち抜けるレベルに達しているとは思うが、今すぐ挑戦するのもジュンのペースに乗せられているようで癪に障る。まずは情報収集も兼ねて、町を散策してみることにした。

いつの間にか、地下へ降りるエスカレーターが開通している。地下はWi-Fiコネクションを利用した、ポケモンWi-Fiクラブとなっていた。案内係の女から友達手帳を受け取った。これで登録者同士の対戦や交換ができるということだ。

「クロガネ炭鉱博物館 炭鉱に行きたくなります」
灰色の町に白亜の建築は一際目立つ。入ってすぐ、幅3mはあろうかという巨大な石炭層の標本が目に入った。
「はいはーい!私、ここでポケモンの研究してまーす。もう少しすれば、化石を復元……そうですね、化石をポケモンに戻すことができそうでーす」
博物館の研究員が言った。化石から太古のポケモンを再生させる技術が実用化されて久しい。他には、石炭が生成される過程、各地で産出された石炭の標本、採掘に使用された道具の歴史、当時の生活道具といった展示があった。

北の207番道路を少し覗いてみる。そこには砂が流れ落ちる登り坂があった。その上にも道が続いているようだ。
自転車から降りて休んでいる男が言った。
「その坂は自転車でないと、滑ってしまって登れないよ。自転車?ハクタイシティに行けば自転車屋があるよ」
草むらでワンリキーを捕獲した。人型をした小柄な格闘タイプのポケモンだ。

町に戻り、マンションを訪ねる。少女からポケモンの交換を持ちかけられた。
「ねえねえ。あなた、ワンリキーってポケモン持ってる?よかったら、あたしのケーシィとあなたのワンリキー、交換しよ?」
ケーシィには一度逃げられている。彼女は少し考え、捕獲したばかりのワンリキーの入ったボールを差し出した。
「ほらよ」
「ちゃんとかわいがってね!あたしももらったワンリキー大事にするから!ポケモンのおかげであたしとあなた、お友達になれたよね!」
彼女には返す言葉が見つからなかった。
住人から、ヒールボール、スーパーボール、ダークボールをもらった。スーパーボールはモンスターボールよりも高性能なボール、ダークボールは夜や洞窟など、辺りが暗いときに使うと捕獲率が上がるボールだ。

ジムリーダーは炭鉱にいる。住民の話では、彼は岩タイプのポケモンの使い手であり、また、この炭鉱のリーダーでもあるということだ。彼女は筋骨隆々とした、いかつい大男を想像した。

採掘作業は24時間体制で行われる。開口部からは掘削機の音が響いている。長く延びたベルトコンベアは掘り出された石炭を吐き出し続け、その末端の建物では選別作業が行われている。不要な岩石はうずたかく積み上げられ、ズリ山を形成している。鉱山特有の風景だ。長年掘り進められた坑道は、海の下にまで達しているという。
「クロガネ炭鉱出入口 飛び出すポケモンに注意」
看板にもあるように、坑内には多くの野性ポケモンが生息している。ただの岩だと思って踏みつけると、それは地面に半分埋まったイシツブテだったということも多い。時折ズバットも見かけられる。
横穴で2つの目が光った。蛇のように長い、岩の体がずるずると這い出す。頭部だけで1mはあるという巨大さだ。
彼女は落ち着いて図鑑を向けた。イワークというポケモンだ。まずは動きを止める。繰り出したスボミーは痺れ粉を撒き、麻痺して動けない隙に吸い取る攻撃で体力を奪った。ボール1個目は失敗だったが、2個目で捕獲に成功した。
さらに奥深くへと、彼女は坑道を降りていった。

採掘現場に着いた。緑の作業服と黄色いヘルメットの作業員たちが壁を削り、ワンリキーたちが掘り出した石炭を運んでいる。この中にジムリーダーがいるはずだ。さっそく、それらしい中年の男に声をかけてみる。
「お前がジムリーダーか?」
「おじさん仕事中だけど、実はポケモン持ってきてるんだ」
男はモンスターボールからワンリキーを出した。仕事用とは別らしい。彼女は先頭のスボミーを戻し、ムックルを出した。翼で打つの一撃で、あっけなく勝負はついた。
「たいしたもんだーねえ。さてさて仕事!ポケモンと一緒に汗垂らすぞー!」
男はジムリーダーではなかった。もう1人、声をかけてみる。
「仕事の合間に軽く一勝負!」
これも違う。

1人、ライトグレーの作業服とオレンジのヘルメットの若い男がいた。中肉中背、長めの赤い髪、黒いセルフレームの眼鏡をかけた優男だ。いわゆる炭鉱労働者といった風には見えない。
男が気づいた。彼は彼女をちらりと見ると、後ろに下がるよう手で合図し、腰の工具入れからモンスターボールを取り出した。
「ちょっと見ててね!秘伝の技、岩砕きを使えば、こんな邪魔な岩だって!」
光があふれ、目の前にあった岩が一瞬で粉々に砕け散った。男の陰になり、ポケモンの姿ははっきりとは確認できない。彼は手早くポケモンをボールに戻した。
「こうして落ちてきた岩を砕いておかないと、邪魔だからね。君もこの町のポケモンジムでジムバッジを手に入れれば、これぐらいすぐにできるさ!」
笑顔で話し、最後にこう付け加えた。
「もっとも、ジムリーダーの僕に勝てないと駄目だけどね!」
「……そうだな」
彼女は不敵に笑った。男は出口へと歩いていった。彼女も後を追う。

いよいよ第一のジム、クロガネジムの戦いが始まる!

お小遣い1232円  ポケモン図鑑15匹(捕まえた数13匹)  バッジ0個  プレイ時間36:03



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#8
彼女は早足で歩きつつ、手持ちのポケモンを確認した。
ポッチャマLv.15、ビッパLv.13、ムックルLv.13、コリンクLv.13、コロトックLv.14、スボミーLv.12の6匹だ。ポケモンセンターで回復を済ませ、クロガネジムへと向かう。

ジムの扉を開ける。入口には石柱が並び立ち、そこにはバッジを勝ち取った者たちの名が刻まれた金属製のプレートが、高々と掲げられている。
「クロガネシティポケモンジム ジムリーダー・ヒョウタ 認定トレーナー!」
「ジュン」
ジュンの名前は既にそこにある。怪しげなヒゲとサングラスの男が彼女に声をかけた。
「オーッス!未来のチャンピオン!って、さっきのせっかちそうな少年にも言ったけどな」
「さっき?」
彼女が後ろを振り返ると、少しだけ開いた扉が閉まるのが見えた。
「フン!」
「ここのジムリーダーは岩タイプの使い手!岩タイプのポケモンは水を嫌っているぞ!いいな。あと、草タイプも苦手らしい。何だ、弱点が多いな!だけど油断するなよ。弱点をカバーするからこそ、ジムリーダーなんだぜ!あと、炎タイプで挑むのはちょっとばかり大変だぜ!俺のアドバイスは以上だ!聞いてくれてありがとう!」

奥に進むと、その全容が明らかとなった。ポケモンジムは建物の外観こそ共通のものだが、その内部はそれぞれのジムリーダーが得意とするタイプに合わせて、自由に改造することが許されている。クロガネジムには城郭のような階段状の石垣が築かれ、その所々が吊り橋で結ばれている。途中にはジムトレーナーたちが待ち受けている。

1人目のジムトレーナーだ。
「遠回りをしなかったんだ!?その理由、確かめてやるよ!」
少年はイシツブテLv.10を繰り出した。確かに、橋を渡れば戦いを避けることもできた。だが、より多くの戦いを楽しむことができるのだ。避ける理由などあるはずもない。
彼女はスボミーを出し、イシツブテに吸い取る攻撃を仕掛けた。草タイプの攻撃に対して4倍のダメージを受ける岩・地面タイプのイシツブテは、スボミーの敵ではない。あっさりと相手の体力を吸い尽くした。

スボミーは2人目のトレーナーのイシツブテを倒してLv.13となり、新たにメガドレインを覚えた。その威力は吸い取る攻撃の2倍、次のイワークも一撃で倒してしまった。

ジムの最奥部、石垣の最上段のバトルフィールドにジムリーダーはいた。彼はにこやかに彼女に話しかけた。
「ようこそ!クロガネシティポケモンジムへ。僕がジムリーダーのヒョウタ!岩タイプのポケモンとともに歩むことを決めたトレーナーさ。さてと、君のトレーナーとしての実力、そして一緒に戦うポケモンの強さ、見せてもらうよ!」
彼の手持ちは3匹、まずはイシツブテLv.12を繰り出した。彼女はスボミーを出す。
「メガドレイン」
体力を吸われたイシツブテは倒れ、スボミーはLv.14になった。またしても、勝負は一撃で決した。彼女は表情を変えない。

ヒョウタはイワークLv.12を繰り出した。それに対して彼女はスボミーを戻し、コリンクを繰り出した。それを見た彼は、思わず眼鏡を直した。
このままスボミーを出しておけば、残り2匹も労せずに倒せるだろう。だが、一方的な勝負ほどつまらないものはない。
先手を取ったのはイワークのほうだ。嫌な音を放ち、それを受けたコリンクの防御が半減した。コリンクは噛みつく攻撃を仕掛けたものの、相手の硬い体に大したダメージは与えられない。逆に岩落としを食らい、HPが半分になった。にらみつける攻撃で相手の防御を下げ、反撃の機会をうかがう。
イワークが口から何かを吐き出した。それは鋭く尖った岩の砕片となって、フィールドの挑戦者サイドに漂い始めた。その名は「ステルスロック」、彼女の知らない技だ。コリンクにダメージはない。岩落としと噛みつく攻撃で、お互いHPが残りわずかになった。イワークが傷薬で回復している間にも、コリンクは噛みつく攻撃を続ける。こちらはあと一撃でも食らったらおしまいだ。彼女は相手がこちらの交代を読み、嫌な音を仕掛けてくるほうに賭けた。
「噛みつく攻撃!」
嫌な音が来た!読み通りだ。コリンクがイワークの喉元に噛みつき、イワークはついに崩れ落ちた。衝撃で土ぼこりが舞い上がる。コリンクはLv.14になった。
「よくやった。戻れ、コリンク」
戦いとはこうでなくてはならない……彼女の口元から、思わず笑みがこぼれた。

ヒョウタは最後のポケモンを繰り出した。ズガイドスLv.14 ―― 二足歩行の怪獣型のポケモンで、極端に突出した青黒い額は鉄球のような鈍い光を放っている。
「待たせたな……存分に暴れるがいい、ポッチャマ!」
「ポッ……ヂャマアァァ―――ッ!!!」
「何っ!?」
ボールから飛び出した瞬間、尖った砕片が全身に突き刺さり、ポッチャマは悲鳴を上げた。空中を漂う岩の砕片が交代で出たポケモンにダメージを与える、これがステルスロックの効果だ。普通、岩タイプというと力押しのイメージが強いが、ポケモンの交代を誘う防御を下げる技に、交代時にダメージを与える技と、この男は頭脳派の色が強い。さすがにジムリーダーを務めるだけのことはある。彼は笑みを浮かべて言った。
「次のポケモンも、同じように倒せるかい?」
スピードは相手のほうが上だ。ズガイドスが追い討ちをかけ、ポッチャマは泡攻撃で迎え撃った。続けてズガイドスは強烈な頭突きを仕掛け、ポッチャマはそれにひるむことなく泡攻撃を放った。HPはズガイドスが残り1割、ポッチャマが残り3割となった。急にズガイドスの動きが鈍った。泡攻撃の追加効果が発動したのだ。この瞬間、攻守の関係が逆転した。
「まだまだ!あきらめない!」
「とどめだ!」
「ポッ、チャ―――!」
ポッチャマの泡攻撃を受け、ズガイドスはよろめき、ばたりと倒れた。
「まっ、まさか!鍛えたポケモンたちが!!」

「まいったなあ……ジムバッジを1つも持っていないトレーナーに負けちゃったか。うん、それも仕方ない。君が強くて、僕が弱かった……それだけだ」
ヒョウタは悔しげにうなずきつつ、胸ポケットからバッジを取り出した。
「うん、ポケモンリーグの決まりでは、ジムリーダーに勝ったトレーナーにバッジを渡すことになってるんだ。さ、ポケモンリーグ公認のコールバッジ、君に渡すよ!」
バッジは円と六角形を組み合わせたデザインで、銀の地に石炭をイメージしたグレーの色が入っている。彼女はバッグからトレーナーケースを取り出し、それを収めた。
「そのコールバッジを持っていると、秘伝の岩砕きを使えるようになるんだ!あと、これも持っていきなよ!」
技マシン76「ステルスロック」を受け取った。先ほどイワークが使った技だ。

「このシンオウ地方には、あと7人のジムリーダーがいる。みんな、僕よりも手強いポケモントレーナーばかりだよ!」
「それは楽しみだ」

「クロガネシティポケモンジム ジムリーダー・ヒョウタ 認定トレーナー!」
「ジュン」
「シィ」
プレートに名前が追加されている。名乗っていないはずだが、ジュンが言ったのだろう。
「おお!シィ!ジムリーダーに勝ったのか!どうだ、俺のアドバイス、役に立ったか?役に立ったと思うなら、俺のファンになってくれよな!」
男の言葉を無視してジムを出、戦い疲れたポケモンたちを休ませるため、ポケモンセンターに向かう。


「……ッ!?」
彼女は目を剥いた。バングルが光を放っている!
C 」の右側に、ゆっくりと文字が浮かび上がっていく……そして光は弱まり、再び元の鈍い灰色へと戻った。

アルファベットの「 I 」……続けて「 C I 」となった。

それは、単なる始まりに過ぎなかった。

お小遣い3200円  ポケモン図鑑16匹(捕まえた数13匹)  バッジ1個  プレイ時間36:47

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