INDEX 目次前項/9/101112メモ次項

P‐LOG ダイヤモンド編

#9
第一のジム・クロガネジムを制覇し、ポケモンセンターでポケモンたちを休ませた彼女は、次のジムを目指すべく、クロガネゲートにやってきていた。

彼女は右手首のバングルに目をやった。
そこに刻まれた「 C I 」の二文字……
それは何を意味しているのか?「声」が示唆したように、自分の名前を表しているのだろうか?
そして、何をきっかけとして、2番目の文字が浮かび上がったのか?ジムを制覇したことと、何か関係があるのか?

……今は何もわからない。いずれ答えは見つかるはずだ。そう信じるしかない。

背後から妙な気配を感じる……左に1歩踏み込み、右ひじを曲げ、拳を振り上げる。ドサッという音がした。
視線を落とすと、そこにはジュンが倒れていた。顔面に裏拳を食らったのだ。
「何の用だ?」
「おっと!シィ、ジムバッジもらえたか!次のジムバッジもらえるの、ハクタイシティのポケモンジムだろ?で、207番道路に行ったけど、自転車がないと通れないのな。まあ、ポケモンを戦わせてきたえたからいいけど。でさ、オレ、コトブキに戻る!次はハクタイのジムバッジ!じゃ、ダッシュ10秒前!」
「!?」
「9……って、数えてられるか!」
彼は猛ダッシュでクロガネゲートに突っ込んでいった。やはり、ただのせっかちな奴なのかもしれない……

彼女が感じた気配とは、ジュンのものではなかった。それは数百m離れた岩陰にいた。


中に入る前に、ポケモンに秘伝技・岩砕きを覚えさせておく。秘伝マシンのディスクを携帯用のドライブにセットして起動し、ポケモンとの適合性を調べる。ビッパとコロトックの2匹が覚えられるようだ。技のバリエーションに乏しい、コロトックに覚えさせることにする。
モンスターボールをセットし、書き込みボタンを押す。ボールが光に包まれ、それが消えるとアラームが鳴った。これで完了だ。

トンネルの分岐を北に進み、道を塞ぐ岩の前に来た。彼女はボールからコロトックを出した。
「コロトック、岩砕きだ」
「ティルルルゥッ!」
コロトックがナイフのような腕を突き立てると裂け目が走り、岩はガラガラと崩れ落ちた。腕の先端から発せられた衝撃波によって、内部から破壊された感じだ。

道なりに進み、階段を降りると、広い地下空間が広がった。地底湖もある。邪魔な岩を砕きつつ、星の砂、技マシン70「フラッシュ」を拾った。星の砂は赤い宝石の細かな粒、フラッシュは光で相手の目をくらませる技だ。水辺でカモノハシのような黄色いポケモン、コダックを捕獲した。
ところどころに岩砕きの効かない硬い岩があり、行ける範囲は限られている。近くにいた女の話からすると、自転車で加速をつけて手前の傾斜を登れば、その上を飛び越せるらしい。

203番道路を通り、コトブキシティに戻ってきた。
「グローバル・トレード・ステーション 世界のみんなとポケモン交換」
前回入ることができなかった青い建物は、Wi-Fiコネクションを利用して自動的にポケモンの交換を行う、略して「GTS」という施設だ。GTSにポケモンを預け、欲しいポケモンの条件を設定しておく。それを見た人が条件に会うポケモンを出すことで、交換が成立する。図鑑に記録済みのポケモンのみが交換の対象になる。

まずは、次のジムがあるというハクタイシティに近い、ソノオタウンを目指すことにする。
大通りを歩いていると、ナナカマド博士とコウキの姿が目に入った。2人組の男と何事か言い争っているようだ。彼らは同じ、白と黒に色分けされた奇妙な服を身に着けている。髪型まで同じだ。その胸には金色の「G」のマークがある。博士が彼女に気づいた。
「おお、シィか。よいところに来たな。このおかしな連中がよくわからないことを言っておる!ちと、懲らしめてやれ!」
「これは困ったポケモン博士ですね!ワレワレはお仕事としてお話しているのです」
「あなた!ワレワレに研究の成果をよこしなさい!そうしないと、あなたの助手、痛い目にあわせます」
片方が凄んだ。言葉遣いは丁寧だが、妙な片言だ。
「シィ!いっしょに戦ってくれるかい!」
「……ああ、ちょうど暇だったんだ!」

男たちが繰り出したのは、ズバットとイモムシポケモン・ケムッソだ。レベルはそれぞれ9と低い。彼女はビッパを、コウキはヒコザルを繰り出した。そのレベルは13、以前に会ったときよりも鍛えられている。
ヒコザルが火の粉でケムッソを倒し、ビッパはズバットに転がる攻撃を食らわせた。何とか持ちこたえたズバットは吸血で反撃したが、ヒコザルの引っかく攻撃に倒れた。力の差は歴然としている。

「なんと、負けてしまった……!?お子様2人にワレワレが?」
「これはいけません……作戦、大失敗です。仕方ないです。ここは引き上げます。なぜなら、ギンガ団はみんなに優しいからです」
「ギンガ団……?」
意味不明の捨て台詞を残し、謎の男たちは北へと去っていった。
「あいつら、ギンガ団とか言っていたか……確かに、ポケモンが進化するとき、何かしらのエネルギーを出しているのかもしれん。が、それは人にはどうにもできぬ神秘の力だろうな。なのに、ギンガ団はそれを使って何かをしようとしていたようだ。それにしても、シィ!なかなかの戦いぶりだったぞ。力を合わせて戦うポケモンとトレーナー……お前にポケモンと図鑑を託して正解であった!」
「シィ!博士はポケモンの進化について研究しているんだ!なんでも博士の研究だと、ポケモンの90%は進化に関係する、だって!意外なポケモンが意外な進化、するかもね。ということで、シィ。博士の研究のためにも、ポケモン図鑑がんばろうね!」
「あ……ああ」
博士とコウキはマサゴタウンへと帰っていき、2人と入れ替わりに太った男が現れた。テレビコトブキから来たという男はポケモン勝負を見せてもらったお礼にと、彼女にハート型のアクセサリー入れを渡した。
男たちの実力は取るに足らないものだったが、何か引っかかる……

謎の組織、ギンガ団が動く。

お小遣い3920円  ポケモン図鑑18匹(捕まえた数14匹)  バッジ1個  プレイ時間37:47



INDEX 目次前項9/10/1112メモ次項

#10
「『テレビコトブキ』 みんなで遊ぶテレビジョン」
外壁に大型ビジョンを備えたビルだ。以前来たときは前を通り過ぎただけだったが、少しのぞいてみることにする。
1階には、ポケモンくじの抽選コーナーがあった。くじのナンバーとポケモンのIDが一致すれば、その桁数に応じて賞品がもらえるというものだ。彼女が引いたナンバーは外れだった。

「あなたがどんなトレーナーか、いろいろチェックしちゃいますね!」
勝負は場所を選ばない。レポーターの女とカメラマンの男、インタビュアーの2人組はウパーとマリルを繰り出した。青い水うおポケモンと水ねずみポケモンのコンビだ。彼女はスボミーとビッパを繰り出した。メガドレインでウパーを倒し、局内を転がり続けるマリルを集中攻撃で倒した。
「負けたけど、大興奮!何て素敵にスペクタクルなの!」

2階には、額縁がずらりと並ぶ展示スペースがあった。野太い声が彼女を呼び止めた。
「あなたのポケモン、すっごくチャーミングなのね」
プロレスラーを思わせるがっちりとした体格の男だが、動きが妙にくねくねとしている。
「特別に1枚だけ、写真をあたしのお隣に飾ってあげちゃうわ!このお部屋でポケモンを素敵にドレスアップさせて、写真を撮るの!やるでしょ?」
「断る」
「んもう!つれない人ね……」
さっき別の男からポッチャマお面を渡されたが、他のアクセサリーと同じく、ここで使うもののようだ。

翌日。204番道路を北上する。荒れた抜け道に入り、岩砕きで邪魔な岩を排除する。左の分岐では、技マシン39「岩石封じ」を拾った。右の分岐を抜けて204番道路に戻り、技マシン09「種マシンガン」を拾った。その後トレーナーを何人か倒し、ソノオタウンに到着した。

「ここはソノオタウン 鮮やかに花香る町」
彼女はその光景に目を奪われた。赤、青、黄、紫……なだらかな丘陵には色とりどりの草花が咲き乱れ、かすかな花の香りに包まれている。楽園とは、まさにこのような場所を指すのだろう。ただそこにいるだけで、心が穏やかになるようだ。
なぜだろうか、彼女はその風景に少し懐かしさを覚えた。

数少ない建物を回る。民家で少女から、技マシン88「ついばむ」をもらった。フラワーショップの前には、実のなる木が植えられている。オレンとクラボだ。中ではナナシの実と、水やりに使うコダックじょうろをもらった。ここでは集めた木の実をアクセサリーと交換することができる。
ここからハクタイシティまでは、かなり距離がある。フレンドリィショップで必要なものを買い揃え、町を出た。

205番道路に入ると、風が吹き始めた。突然、彼女は手を引っ張られた。幼い少女だ。
「ねーねー!トレーナーさん!あたしのパパをね、よんできてほしいの!はつでん所ではたらいてるけど、うちゅう人みたいな人にいじわるされて、入れてもらえない……おねがい!トレーナーさん!はつでん所のパパ、よんできて!」
宇宙人みたいな人……ギンガ団に違いない。少女は目に涙を溜めている。彼女は少女の頭にぽんと手を置いた。
「ああ、呼んできてやろう」

「『谷間の発電所』 風を愛する発電所」
6基の巨大な風車が風を受け、勢いよく回っている。風力発電所だ。管理棟の入り口には、ギンガ団の男が立っていた。
「邪魔だ、どけ」
「発電所に入るなよ?ギンガ団の仲間以外は誰も入れるな、って命令されてんだからさ。何だ、その顔は?入りたそうだな?だったら、俺と勝負してみろ!」
男はニャルマーを繰り出した。ブルーグレーの毛並みをしたスレンダーな猫型のポケモンだ。彼女はスボミーを出し、成長で特攻を上げ、メガドレインで相手の体力を吸い取った。
「何てことだ。子供に俺は負けてしまった……だがな、中に入って発電所キーを使えば、もう入って来れないだろ!なぜなら、残りのキーは花畑に行った仲間が持ってるだけだからな!ハハハ!そういう意味では俺の勝ちだぜー!」
男は素早く管理棟に飛び込み、中から鍵をかけた。彼女はボールからコロトックを出した。
「連続斬り」
コロトックは鉄製の扉に斬りつけたが、多少変形させたものの、開けるには至らない。ドアノブが取れ、カランという音を立てた。仕方がない。男が言っていた花畑に向かう。

「さあ!黙って甘い蜜を全部よこせ!」
「そうだ!ギンガ団はたくさんのポケモンをおびき寄せるために、それを必要としている!」
ギンガ団の男たちが、作業着姿の中年の男に詰め寄った。彼はガラス瓶を大事そうに抱えている。

「キーをもらおうか?」
彼女の声に男たちが振り向いた。
「おい!なんかいるぜ?どうする?」
「うむ、誰かを呼ばれると面倒だ……まあいい。コテンパンにすりゃいいだけの話だろ!」
ギンガ団のケムッソはビッパの体当たり、サナギポケモン・カラサリスはコロトックの連続斬りに、あっさりと倒れた。
「情けない……そんなことじゃ、ボーナスが減るぜ!次は俺が相手だぜ!へへへ……続けて戦えばこっちが有利だからな!」
ズバットもビッパの転がる攻撃に倒れた。
「この子供!強いぞ!すごい強い!なんていうか強いぞ!仕方ない、ひとまず発電所に戻るか……」
「やれ」
目にも留まらぬスピードでコロトックが斬りつけ、男たちの服が裂けた。2人は悲鳴を上げ、逃げていった。彼女は草の陰に金属の光を見つけた。発電所のキーだ。
「君、助かったよ!あいつら、甘い蜜をよこせって、無理やりに奪おうとしてね……おかしな格好でおかしなことを言って、よくわからない連中だった!そうだ!お礼をしないと。これを受け取っておくれ!」
甘い蜜の入った小瓶をもらった。これを甘い香りがする木に塗っておくと、野生のポケモンを誘い出すことができる。

鍵は手に入った。問題はどうやって開けるかだ。

お小遣い3232円  ポケモン図鑑24匹(捕まえた数14匹)  バッジ1個  プレイ時間39:46



INDEX 目次前項910/11/12メモ次項

#11
壁に寄りかかって居眠りをしていたギンガ団の男は、ガチャリという鍵の開く音に目を覚ました。
花畑から仲間が戻ってきたのだろうか?だが、扉が開く気配は一向にない。不審に思った男は、扉に耳をつけてみた。
「ガン!」
突然の大きな音に男は驚き、尻餅をついた。打撃音は繰り返され、扉は見る見る変形していく。

「ドンッ!!」
扉が吹き飛んだ。塵が舞い、逆光に少女とポケモンたちの姿が浮かび上がる。ポケモンたちが攻撃を加え、彼女が蹴り飛ばしたのだった。
「待たせたな。ちゃんと鍵は開けて入ったぞ」
へたり込む男に、彼女は壊れたドアノブを投げてよこした。
「なに!?お前、鍵を持っているのか?鍵を閉めた意味がないぜ。つまり、俺の負けじゃないか……はっ!落ち込んでる暇はない!幹部に連絡だぜ!」
男はあわてて立ち上がると、建物の奥へと走っていった。ゆっくりと後を追う。

廊下の角を曲がったところで、団員と目が合った。男のサナギポケモン・マユルドをムックルで倒し、先に進む。コンピューターや様々な計器の並ぶ部屋に来た。次の団員だ。
「発電所の電気エネルギー、それを集めるのが仕事だ!」
男はケムッソを繰り出した。彼女はムックルを出し、翼で打つの一撃でケムッソを倒した。次はニャルマーだ。コリンクが猫騙しを受けてひるんだ。引っかく攻撃と噛みつく攻撃がぶつかり合い、パワーに勝るコリンクが打ち勝った。ムックルはLv.14に、コリンクはLv.15になった。
そのとき、ムックルとコリンクの体が光を放ち始めた。進化の時が来たのだ。その光は次第に強さを増し、大きく膨れ上がっていく。それが頂点に達すると、ぱっと弾けた。
光の中から現れたのは、灰色のスマートな体に、くるりとカールした頭の飾り羽、そして、青色のたくましい体に、黒く雄々しいたてがみ……それぞれ体の大きさは以前の2倍、精悍さも増している。
「ムックル、コリンク……いや、ムクバード、ルクシオか」


「ギンガ団の目的を知らないくせに!もっとも、下っ端の俺も目的なんて知らないけどな……」
彼女は視線に気づいた。男の向こうに1人の若い女が見える。ショートカットの赤い髪、服は白と黒に色分けされたワンピース型で、短いスカート部分は円錐形に広がっている。さらに奥には、捕らわれている発電所の所員の男も見える。ポケモンたちをボールに戻し、女に歩み寄る。先ほど逃げていった男が叫んだ。
「フンッ!お前なんか、幹部様にやられてしまえ!」

「次の相手はお前か?」
「あたし、ギンガ団にいる3人の幹部の1人。今よりも素敵な世界を創り出すため、いろいろと頑張ってるのに、なかなか理解されないのよね。あなたもわかってくれないでしょ?ちょっと悲しいけどね……」
「それで?」
「だから、ポケモン勝負でどうするか決めましょ!あたしが勝ったら、あなたが出て行く!その代わり、あなたが勝ったら、あたしたちギンガ団が消えるわ!」
女はモンスターボールを手に取り、小悪魔のような笑みを浮かべた。ゲームへの誘いというわけだ。
「それはいい考えだ」
「……なら、消える前に、そいつが壊したドアの修理代を置いていくんだな」
彼女は平然と切り返す。無論、ブラフだ。女がちらりと見ると、部下の男はあわてて首を横に振った。

女はズバットLv.14を、彼女はムクバードを繰り出した。ムクバードの特性・威嚇の効果でズバットの攻撃が下がった。
「翼で打つ攻撃」
ムクバードは翼で打つ攻撃で、ズバットに大ダメージを与えた。パワーもスピードも、こちらのほうが上回っている。
しかし、相手は予想外の動きに出た。ズバットがムクバードに毒液を吹きかけた。毒々攻撃だ。猛毒を浴びたムクバードのHPがじわじわと減っていく。長期戦に持ち込まれるわけにはいかない。
「ムクバード、電光石火だ!」
ムクバードは翼を折りたたみ、急加速してズバットに突っ込む。攻撃を受けたズバットは壁に叩きつけられた。

女は不敵に笑うと、ブニャットLv.16を繰り出した。まるで重戦車のような、超肥満体型の猫型ポケモンだ。先に戦ったニャルマーの進化系のようだが、面影は全くといっていいほど残っていない。彼女はムクバードを戻し、ポッチャマを繰り出した。
ブニャットはうなり声を上げると、その巨体からは想像もつかないスピードでポッチャマの眼前に移動し、前足を振り上げた。鋭い爪が飛び出す。
「速い!」
引っかく攻撃を受けたポッチャマは、吹っ飛ばされながらもすぐに起き上がり、はたく攻撃で反撃した。相手はふてぶてしいばかりの余裕の表情を見せている。能力の差だけではない。技の威力自体が不足しているのだ。
じりじりとした削り合いが続く……ブニャットは持っていたオレンの実を食べ、HPを回復させた。対するポッチャマのHPはもう残りわずかだ。彼も自分に勝ち目がないことには気づいている。だが、彼なら力尽きるまで戦い続けるだろう。
「……ポッチャマ、鳴き声だ」
「ポチャ!?」
戸惑いつつも、ポッチャマはそれに従う。ブニャットの攻撃が下がった。役目を果たしたポッチャマはボールに吸い込まれた。

まずは、そのスピードを封じる。彼女はスボミーを出し、ブニャットに痺れ粉を浴びせかけた。相手が麻痺で動けない隙にコロトックに交代し、横っ腹に岩砕きを叩き込む。ブニャットの防御が下がった。コロトックは騙まし討ちを受け止め、岩砕きで止めを刺した。ブニャットはついにその体を横たえた。
スボミーはLv.15に、ポッチャマはLv.16になった。ポッチャマのボールが一瞬光を放ったが、それはすぐに消えた。
「ポッチャマ、お前……」

「あーらら!負けちゃった!まっ、いっか!あなたとのポケモン勝負、割と面白かったし。じゃ、あたしたちはひとまずバイバイしちゃうから!」
幹部の女は部下たちを引き連れ、発電所を去っていった。計らずも、2体の相手に対して、4体のポケモンを出すことになってしまった。女がポケモンを6匹、いや、4匹持っていたらどうだっただろう?敗北に等しい勝利だというほかない。


所員が話す。
「ギンガ団……とにかく、ポケモンやエネルギーを集めて宇宙を創り出す、とか言っていて、まるっきり意味不明でした。それはともかく、君には感謝の気持ちでいっぱいだ!やっと娘に会える!」
「パパー!」
先ほどの少女が走ってきた。父親に抱きつく。
「あっ、くさい!シャワーしなさい!」
「いやー、あっはっはー。無理やり働かされてたからね」
親子は本当に幸せそうだ。彼女も思わず微笑んだ。
「トレーナーさん、ありがと!へんな人たちがいなくなったから、フーセンのポケモンさん、また来てくれるよね!」
「風船のポケモン?」
「そうなんですよ。毎週何曜日だったかな?発電所の前に風船のポケモンがいるんです。この発電所、風の力を利用しているのと何か関係あるのかな?」
今はそれよりも、ポケモンたちの回復のほうが先決だ。ムクバードの体力が持ちそうにない。毒消しで手当てし、ポケモンセンターへと走る。

彼女は誓った。この借りは必ず返す、と。

お小遣い5352円  ポケモン図鑑28匹(捕まえた数16匹)  バッジ1個  プレイ時間41:08



INDEX 目次前項91011/12/メモ次項

#12
彼女はソノオの花畑に寝転び、しばしの休息の時を過ごしていた。ムクバードは上空をゆったりと旋回している。もうすっかり元気だ。ルクシオとビッパはじゃれ合い、スボミーはひなたぼっこをし、コロトックは木陰で休んでいる。
その中でただひとり、厳しい表情を見せる者がいた。
……ポッチャマだ。
戦いの記憶がフラッシュバックする。今まで、彼に倒せない敵はいなかった。今現在、ポッチャマが使える攻撃技は、泡、はたく、つつくの3つだ。威力はそれぞれ、20、40、35と低い。クロガネジム戦ではタイプ相性の有利さから勝つことができたが、それが同等なら押し負けてしまうこともある。
ポケモンは進化を遅らせることで、技の習得レベルを早めることができる。一度は進化の兆しを見せながらも、彼は今もポッチャマのままでいる。少しでも早く、より強力な技が欲しいという、彼自身の強い意志がそうさせたのだ。

彼女はポッチャマに声をかけた。
「ポッチャマ」
「ポッチャ……」
「悔しいか。悔しいのなら強くなれ!力をつけろ!そして、必ず勝て!」
ポッチャマはこくりとうなずいた。
それは自分に向けた言葉でもある。彼女は太陽に手をかざし、ぐっと握り締めた。

気分転換にポケモン探しに出かけることにする。甘い蜜を買い足し、目星をつけてあった木の幹に塗っておく。しばらく眺めていたが、ポケモンはすぐには現れないようだ。

彼女はふらりと205番道路にやって来た。発電所前の草むらには、野性ポケモンの影が見え隠れしている。これは期待できそうだ。
ふと、薄紫色のゴム風船が目に入った。垂れ下がった紐が草に絡まり、風に吹かれている。何の気なしに近づくと、それはくるりとこちらを向き、目と目が合った。
「プワワッ!?」
「!!」
ポケモンだ!丸い体には小さな2つの目と黄色い×印があり、上に白い雲のようなものを載せている。紐のように見えたのは、細長い触手だった。親子から聞いた風船ポケモンとは、これのことに違いない。今日は金曜日だ。図鑑によれば、名前は「フワンテ」、レベルは22だ。
彼女はスボミーを繰り出し、風上に回り込んで痺れ粉をばら撒いた。急にフワンテが体を膨らませた。スボミーを戻し、ルクシオを繰り出す。フワンテは空気を噴き出し、つむじ風を起こした。電気タイプのルクシオに大したダメージはない。「風船ポケモン」という呼び名から、飛行タイプの技を使ってくることは予測済みだ。噛みつく攻撃でHPを削り、バッグのボールポケットに手を突っ込む。出てきたのはヒールボールだ。それを投げ、捕獲は無事完了した。
ヒールボールは初めて使ったが、HPも状態異常も確かに回復している。図鑑には、フワンテは「人やポケモンの魂が固まって生まれた」と記されている。あとから考えれば、この「癒し」のボールこそがふさわしかったのだろう。

草むらに分け入り、ポケモンを探す。海イタチポケモン・ブイゼル、ピンク色のウミウシポケモン・カラナクシ、白い電気リスポケモン・パチリスを捕獲した。
蜜を塗った木に戻ってみると、木が大きく揺れていた。人間の子供ほどの大きさの、カブトムシのようなポケモンが蜜を舐めている。一本角ポケモン・ヘラクロスだ。HPを減らし麻痺させたが、なかなかボールに収まらず、4個目で捕獲に成功した。何度か試し、ケムッソ、カラサリス、尾長ポケモン・エイパム、さくらんぼポケモン・チェリンボ、みのむしポケモン・ミノムッチ、蜂の子ポケモン・ミツハニーを捕獲できた。

新しいポケモンが手に入ったところで、メンバーの入れ替えを考える。彼女が選んだのは、ミツハニーとパチリスだ。
ミツハニーは3匹が蜂の巣状にくっつき、一個体を形成しているポケモンだ。今は能力も技もぱっとしないが、進化すれば図鑑の説明にも登場する「ビークイン」、女王蜂になるはずだ。パチリスは特性の物拾いが魅力的だ。物拾いはそのポケモンのレベルが高いほど、価値が高いものを拾ってくるようになる。今後のポケモンの育成に備え、今のうちにレベルを上げておこうという考えだ。フワンテも捨て難かったが、今連れ歩くにはレベルが高すぎる。代わりにビッパとコロトックを預けていくことにした。

2匹を交代で先頭に置き、ハクタイシティを目指して205番道路を北上する。トレーナーや野生ポケモンを手当たり次第に倒し、ミツハニーのレベルは7から13に、パチリスは8から10になった。パチリスはさっそく傷薬や毒消しを拾ってきた。

「『ハクタイの森』 時とともに生きる森林」

森の入り口で、若い女が彼女に声をかけた。深緑のワンピースに薄緑のカーディガンをはおり、長い髪をゆったりとした三つ編みにして前に垂らしている。
「初めまして、あたしの名前はモミ。あなたは……?」
女は思い出したように、腕に下げたかごから四つ折の紙を取り出し、彼女の顔と見比べた。彼女は素早い手つきで、それを取り上げた。見ると、そこにはシィという名前と、ヘタクソな似顔絵が描かれていた。下にはジュンの連絡先が入っている。これではまるで尋ね人だ。彼女は怒りに紙を持つ手を震わせた。
「シィさんって名前なんだ。ねえ、シィさん」
「何だ?」
「お願いがあるの!この森を抜けたいけれど、あたし一人じゃ心細いの。ギンガ団とかいう、怪しい人がうろついてるって聞いたし……」
「ギンガ団が?」
「旅は道連れっていうでしょ。ね!いっしょに行きましょうよ!」
「……わかった。森を抜けるまでだな。足手まといにはなるなよ」
「傷ついたポケモンは全て治してあげますからね」
モミはかごの中の木の実を見せた。

彼女とモミは森の奥深くへと進んでいく。鬱蒼とした森にはひんやりとした空気が満ち、静寂の中に時折野性ポケモンの鳴き声が聞こえてくる。道はまるで迷路のように入り組み、繰り返す風景が方向感覚を鈍らせる。
草むらに足を踏み入れると、野性ポケモンが現れた。ケムッソとカラサリスだ。彼女はミツハニーを、モミはラッキーLv.15を繰り出した。ラッキーはピンク色をした卵型のポケモンで、お腹の袋には卵を入れている。相手が野生ポケモンなら無理に戦う必要もない。適当にやり過ごした。
「野生のポケモンが2匹同時で飛び出すなんて!」
モミは驚いた様子だった。

まだまだ先は長い。このまま何事もなければよいのだが……

お小遣い4304円  ポケモン図鑑37匹(捕まえた数27匹)  バッジ1個  プレイ時間46:13

INDEX 目次前項9101112メモ次項