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P‐LOG ダイヤモンド編

#53
「そうだな!君ならできるかもな!この町のジムリーダーだけどさ、久しく手強い挑戦者が来ないからって、ポケモンジムの改造ばかり。挙句に停電だからな。ったく、世話が焼けるぜ!」

かれこれ30分は経っただろうか、ポケモンリーグ四天王・オーバは熱く語り続ける。彼女は腕を組み、眉を引きつらせていた。最初は有益な情報が引き出せるかと、おとなしく話を聞いていたのだが、それももう限界だった。
「君!熱いポケモン勝負で、あいつのハートをがんがんに燃やしてくれよ!頼むぜ!」
長話はようやく終わり、オーバは街中へと去っていった。

「ここはナギサシティ 太陽が照らす町」
町は岬の入り組んだ地形を利用して作られており、高台に分散した家々を高架式の歩道が結んでいる。その路面は太陽電池で覆われ、1年を通して晴天の多いこの町の電力の多くを賄っている。
港を臨むポケモンセンターでポケモンたちの回復を済ませた彼女は、レビアたん(エンペルト)を連れ、ひとまず町を見て回ることにした。

「『ナギサ市場』 世界のシールいろいろ」
市場には食品・衣類・雑貨など、様々な品物を扱う店が所狭しと並んでいる。その中でも有名なのは看板にもあるとおり、ボールカプセルに貼るシールだ。
「アナタの時間、ワタシにください。そうすると、いいコトあるかも」
胡散臭い雰囲気を漂わせる店主の男は、手元のガラスケースを示した。ハートや星、音符や花びらなど、カラフルで様々なデザインのシールがずらりと並ぶ。ズイで少年がくれたのは文字のシールのみで、一度試したきりだったが、これには飾り気のない彼女も目を惹かれた。レビアたんと顔を見合わせ、一揃い購入する。

一通り見終えて市場を出ようとしたとき、店の女が呼び止めた。
「あら?君のエンペルト……」
「あ?」
「ものすごく頑張ったのね!ご褒美として、このがんばリボンをつけてあげて!」
女は笑顔でリボンを差し出した。金色のメダルの周りに、赤とピンクのリボンが花びらのようについている。

階段を上り、高架の歩道を歩く。入り江にそそり立つナギサの名所・ポケモン岩は、座り込んだゴンベに似て見える。
町外れに立つ灯台に来た。塔は白地に赤の横縞が入っている。
「『シルベの灯台』 シンオウを照らすシンボル」
エレベーターに乗り、上に昇る。八角形をした展望台は全周が窓になっている。彼女は北方に霞む島に目を向けた。ポケモンリーグはそこにある。ジムバッジは後1つを残すのみ、目指す地は近い。

備え付けの望遠鏡を覗いていた男が彼女に気づき、じっと見た。短めの金髪はモミアゲだけが長い。金のコンチョがついた青いレザージャケット、黒のパンツにウォレットチェーンという格好だ。
……ポケモントレーナー、ナギサジムへの挑戦者か」
「手間を掛けさせるな、ジムリーダー」
「決めた!」
男が頓狂な声を上げた。
「君が弱ければ、俺はポケモンリーグで戦わせてもらうとしよう。ポケモンジムの改造は終わったし、何よりポケモントレーナーとして、痺れる勝負を望むからね!シンオウ地方最強のジムリーダーとしての実力、存分に振る舞わせてもらうよ」
男はポケットに手を突っ込み、エレベーターを降っていった。彼女はフッと笑い、後を追った。

ポケモンは、レビアたん(エンペルトLv.40)、オリア(レントラーLv.40)、アロス(ドーミラーLv.40)、アスタ(フワンテLv.40)、バッサ(ルカリオLv.40)、フォウ(フカマルLv.39)の6匹。ジムの扉の前にはオーバが立っていた。
「おっ!君か!あいつ帰ってきたぜ!!何だか少し嬉しそうだったな。もしかしたら、見ただけで君の実力見抜いて、わくわくしてるのかもな!」
いい加減面倒くさい。
「そして頼むぜ!あいつのハートに火をつけるほどの、熱いポケモン勝負をなっ!」
「……おい。
今すぐそこをどかないと四天王が三天王になるが、いいな?」
殺気立つ彼女に、オーバは身震いした。
「じゃなっ!ポケモンリーグで待ってるぜ!」


「ナギサシティポケモンジム リーダー・デンジ 輝き痺れさせるスター」
「オーッス!未来のチャンピオン!」
おなじみのサングラスの男が出迎える。彼女は柱のプレートをちらりと見た。
「ちょっとトレーナーケースのバッジの数、見させてもらうぜ」
バッグからケースを取り出し、開いてみせる。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……おお!おおっ!7つあるのか!ということは、ここのジムリーダーに勝てば、いよいよポケモンリーグだな。ということは、俺の最後のアドバイスということでもある!気合が入るぜ!心して聞いてくれよ!」
「ああ、頼む」
「ここのジムリーダーは電気タイプの使い手!以上!後はお前次第だ!」
「十分だ」

キーンという高音がする。黄色いタイルの床はすぐに終わり、水平に並ぶ3枚の巨大な歯車が行く手を遮った。その隙間には様々な部品や配線がぎっしりと詰まっている。歯車の上には、くの字に曲がった通路が取り付けられている。通路はそれぞれバラバラの方向を向いており、渡るには歯車を動かし、向きを揃える必要がある。
配置を頭に入れ、右の歯車に乗る。通路上の回転軸にあたる部分には、緑色をした丸いパネルがある。それを踏むとモーターが唸りを上げ、歯車が90度回転した。来た道を戻り、中央の歯車に乗る。向きを揃えて左の歯車に移り、パネルを踏むと、通路は対面の床に繋がった。

「あなた、ジムリーダーの所にたどり着ける?大丈夫?」
待ち構えていたトレーナーの少女はパチリスを繰り出した。フォウを出す。パチリスは前歯を光らせ、突進する。
「フォウ、地震攻撃!」
ゴウッという音が響く。金属がきしみ、建物全体が揺れた。パチリスは衝撃波を受け、気を失った。
フォウの体が光を放つ。進化だ。光の塊は数倍に膨れ上がり、飛び散った。シャープな顔立ちに鋭い金色の眼、刃物のような背と腕のヒレ、スマートな青い体はドラゴンらしい。洞穴ポケモン・ガバイトだ。
「キュオゥ!!」

「辿り着くさ……そして倒す!ジムリーダーを、その先にいる四天王、チャンピオンを」

お小遣い899087円  ポケモン図鑑137匹(捕まえた数129匹)  バッジ7個  プレイ時間893:14



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#54
先に進むに従い、ジムの仕掛けは複雑さを増してゆく。2番目の部屋では横回転の歯車4枚に、橋のついた縦回転の歯車2枚が加わった。ジムトレーナーのポケモンのレベルは相応に高い。
3番目の部屋は二層構造になっている。3枚の歯車が並ぶ下層をクリアし、階段を上り橋を渡ると、9枚の歯車が並ぶ上層に着いた。最奥部には、ベンチにもたれかかって座るジムリーダーの姿が見える。通路を揃え、トレーナーを次々と倒していく。

「ほう!ここまで来れたか。だけど、ここで帰ってもらうよ。僕を倒せる訳ないからね!」
最後の1人だ。エリートトレーナーはハガネールを繰り出した。フォウが地震を放つ。ハガネールは硬くなるで防御を上げたが、連続の攻撃を耐え切ることはできなかった。
次はチャーレム、彼女はアスタだ。アスタは攻撃を見切られ、雷パンチを受けたものの、シャドーボールでチャーレムを倒した。

いったん下層に下り、赤いパネルを踏む。度重なる攻撃でガタが来ているのか、歯車が異音を立てた。最後のバトルフィールドに道が繋がる。彼女が目の前に来て、ジムリーダーはようやく立ち上がった。
「……さて、挑戦者。たまに俺と戦えるトレーナーがいるけれど、みんなつまらないというか、手応えがないんだよ……」
男は所在なげに片手でボールをもてあそぶ。
「……ふう。俺がジムリーダーのデンジ。シンオウで一番のジムリーダーだといわれるが……まあいいや。俺にポケモン勝負の楽しさを思い出させてくれるトレーナーであってくれ!」
「刮目(かつもく)しろ。惰眠をむさぼる毎日は昨日でお終いだ」
彼女は冷めた口調で言い放った。ジムリーダーのポケモンは4体、2人はそれぞれライチュウLv.46、バッサを出した。

「波導弾!」
声と共にバッサは波導弾を撃ち、一気に攻勢を掛ける!電撃にも構わず、ライチュウに止めを刺した。
「次だ」
ならばとデンジは2体目、レントラーLv.49を繰り出した。このレベルの高さは主力と見ていい。フォウに替え、地震を放つ。レントラーは持っていたオボンの実で回復し、鋭い牙で噛み砕く攻撃を仕掛けた。振り払い、地震で倒す。
3体目はタコに似たポケモン、オクタンLv.47。オリアは火花を散らして突進し、スパークでオクタンを倒した。

最強を誇るポケモンたちが、出したそばから倒されていく ―― ありえないはずの現実に、デンジは自らの見識の狭さを思い知った。ジムリーダー最後の1体はエテボースLv.47、2本の長い尾を持つ紫の猿ポケモンだ。
「こいつが!俺の切り札!!」
「目は覚めたようだな」
彼女が出したのはレビアたんだ。エテボースは尾を前に伸ばし、その先端から電撃波を放った。
レビアたんの足元から水が湧き出す。電撃波は必中の技だが、威力は高くない。攻撃を軽くしのぎ、巻き起こした大波はエテボースを押し流した。
「ここまで追い詰められるとは!」
デンジは高速移動を指示した。エテボースのスピードが倍増する。
「スピードで翻弄しようというのか。だが、無駄なこと……レビアたん!」
「ギュアッ!!」
レビアたんが身を翻すと水流は向きを変え、左手に回り込んでいたエテボースを飲み込んだ。


水がバトルフィールドから流れ落ちていく。エテボースは歯車の上に倒れていた。
「まいったな……!
「どうだ、つまらない勝負だったか?」
デンジは手で顔を押さえた。口元が緩む。
「……フッフッフ、ハッハッハ!……久々に楽しいポケモン勝負だった!そしてこれからも、ポケモンが!君が!どんな戦い方をするのか、楽しみでたまらない。さあ、8つ目のジムバッジ、受け取ってくれ!」
ビーコンバッジ、灯台をかたどったデザインで、銀色の地に光を表す黄色が入っている。彼女は満足げに笑みを浮かべた。
「そのビーコンバッジがあれば、秘伝の滝登りが使える。ポケモンリーグに行くために必要な技だ!あと、これも使ってくれ!」
技マシン57「チャージビーム」、攻撃が命中すると特殊攻撃が高まることがある電気タイプの技だ。それを受け取り、出口へと歩き出す。
「いよいよポケモンリーグ挑戦だな。さあ、海を渡り、チャンピオンロードを抜け、ポケモンと君の実力、ポケモンリーグで見せてきたまえ!君なら、ポケモンリーグの四天王だって心躍る戦いを繰り広げられるさ!」

「そうだ、一ついいことを教えてやろう」
彼女は振り返り、デンジに言った。
「後からもう1人来るはずだ。退屈している暇など、ないと思ったほうがいい」


「おお!シィ!ジムリーダーに勝ったのか!勝ったんだな!」
「ああ、至極当然だ」
「だけど、俺はまだお前を認めないぜ」
彼女はいぶかしげに男を見た。
「だって、お前とお前のポケモンはまだまだ強くなるからな!いやー、それにしてもシンオウのジムバッジ8個!よく集めたもんだぜ!」
「フン!あんたのポケモンと戦えるのかとも思ったが……世話になった」
片手を上げ、ジムを出て行く。男は感慨深げにその後姿を見送った。

翌朝 ―― 彼女はポケモンセンターを後にした。次は秘伝マシン探しだ。ジム戦で、ポケモンたちのレベルは1ずつ上がっている。海に出て、トレーナーと戦いつつ、周囲を調べてみることにする。

砂浜を歩く。海は昇ったばかりの朝日に照らされ、キラキラと光っている。レビアたんを出し、波乗りを使おうとしたとき、白いドレスの少女が歩み寄った。髪は亜麻色で長く、前髪を2個の髪留めで上げている。
「……あ、あのう、あたし、ジムリーダーのミカンといいます。あっ、ジムリーダーといってもこの町じゃなくてですね、ジョウト地方ってところで……
彼女はトレーナーケースを突きつけた。
「あいにくと、バッジなら間に合っている。悪いが、今度にしてくれ」
「あっ、それってジムバッジですね。すごいんですね……あ、あのう、でしたら、これをどうぞ」
少女はバッグから1枚のディスクを取り出し、彼女に手渡した。秘伝マシン07「滝登り」と書かれている。
それを使えば、ポケモンリーグに行けるんです……あ、あのう、うまく言えないけど、がんばってくださいね」

彼女はポケモンリーグを目指し、海に出た。その先にあるのは試練の道、チャンピオンロード。

お小遣い901951円  ポケモン図鑑138匹(捕まえた数130匹)  バッジ8個  プレイ時間897:47



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#55
オリアが海中に逃れようとするカイトポケモン・マンタインの背中に飛びつく。
「スパーク!」
海中が光った後、気絶したマンタインが浮かび上がり、オリアは体を震わせて水を切った。トレーナーの海パン姿の男が慌てて泳ぎ寄る。

レビアたんに乗り、223番水道を北上する。水深はごく浅く、岩礁がガードレールのように海上に並んでいる。まさに海の道だ。
トレーナーが使うポケモンは水タイプがほとんどだ。数は多いがレベルはそう高くなく、次々と彼女のポケモンたちの経験値の足しとなっていった。

岩場で休憩を取った後、しばらく進むと、ゴーッという音が響いてきた。幅百mを越える大瀑布だ。島の周囲はロッククライムを受け付けない断崖絶壁、上陸するにはこの滝を登るしかない。滝壺に立ち込める霧の中へと進んでいく。
「頼むぞ、レビアたん。滝登りだ!」
「ギュアッ!」
水しぶきが上がる。秘伝技は周囲の水流を逆転させ、重力に逆らって体を押し上げる。彼女はレビアたんの首にしっかりと手を回した。流れ落ちる水の上を、レビアたんはゆっくりと上昇していく。


滝の落ち口を越えた。剥き出しの岩山が見える。ふもとには洞窟が1つ、そして小さなポケモンセンターがぽつりとあるのみで、物寂しい雰囲気だ。岸に上がり、ポケモンセンターに入る。
「それでは、お預かりいたします!」
その間に濡れた体を乾かす。ロビーにはトレーナーが何人かいた。皆言葉少なく、不安と憂鬱が場を覆っている。
ここにいる者は2種類に分けられる ―― 新たにポケモンリーグに挑む者と、戦い敗れ修行を続ける者だ。リーグを目指すことを半ば諦め、新人潰しに成り下がる者も多いという。
「おまちどおさま!お預かりしたポケモンは、みんな元気になりましたよ!」
「……フッ」
彼女はボールを手に取り、笑みを浮かべた。その自信は揺るぎなく、絶対のものだ。

「この先、チャンピオンロード」
暗闇が口を開けて待つ洞窟へと、彼女は足を踏み入れた。広大な空洞が広がる。きしむ吊り橋を渡り、高台の上から周囲を見渡す。ただ、洞内は薄暗く、見える範囲は知れている。
ボット(ハガネール)を出し、ロッククライムで崖を下る。手探りでルートを見つけるしかない。

オリアを出し、襲い掛かるゴルバットを追い払う。その音にサイキッカーの男が気づいた。
「私には未来が見える!」
男は自信満々にゴーストを繰り出した。噛み砕く攻撃で倒す。次のゲンガーにはバッサを出し、悪の波動で倒した。
ユンゲラーの進化形・フーディンはスプーンを頭上に掲げ、未来予知を使った。時間差で攻撃するエスパータイプの技だ。
「見えたか?貴様の敗北が」
対するアスタはシャドーボールを放ち、フーディンを壁に叩きつけた。未来予知は不発に終わった。

ポケモンのレベルは1体目こそ43だったが、他の2体は46、これまでのトレーナーとは格段の差がある。野性ポケモンもそれに匹敵する高レベルだ。
一分の隙でも見せれば、たちまち足元をすくわれる。これがポケモンリーグに至る最後の試練、チャンピオンロードなのだ。

出会うトレーナーを片っ端から倒してゆく。年齢や性別は様々だ。歩くうち、上へと続く階段を見つけた。それを上る。
岩が通路を塞いでいる。ボットの岩砕きと怪力を使い、進路を確保する。トレーナーが使うポケモンには、ギャロップ、ズガイドスの進化形・ラムパルド、ヒポポタスの進化形・カバルドンなど、強力どころがずらりと並ぶ。だが、彼女はそれらのほとんどを一撃で倒していった。
この階層は全て制した。今日はここで野宿だ。彼女はポケモンたちをボールから出し、マントにくるまって眠った。

最初の階層に戻る。空手家の男のゴーリキーの進化形・カイリキーを、アスタのサイコキネシスで倒した。
アスタの体は4倍に膨らみ、ついに気球ポケモン・フワライドに進化した。階段を下へと下りていく。
「私には過去が見える!」
「またか……」
自信満々のサイキッカーの女に、彼女は溜息をついた。フォウを出し、リーシャンとその進化形のチリーンを倒した。やはり、どこもトレーナーは多い。レビアたんに乗って地底の泉を渡り、小さな滝を登る。

洞内は様々な道具の宝庫だ。技マシンは、41「いちゃもん」、59「竜の波動」、71「ストーンエッジ」、79「悪の波動」と、4種も集まった。他にも回復の薬や不思議なアメなど、実に拾い甲斐がある。

ロッククライムで崖を登る。そこには黒い上下に紫のマントを羽織った男がいた。
「ここには自然と強いトレーナーが集まる。修行するにはもってこいの場所だな!」
男はフカマルを繰り出した。ドラゴンポケモンを専門とするトレーナー集団・ドラゴン使い。その中には、ジムリーダーやリーグチャンピオンを務める者もいるという。
彼女はレビアたんを出し、波乗りで押し流した。2体目のフカマルはフォウのドラゴンクローで倒し、最後のギャラドスをオリアのスパークで倒した。全て一撃という有様に、男は開き直った。
君は君の道を行けっ!俺は俺の道を行くっ!」

少し歩くと外の光が見えてきた。険しい試練の道も、彼女にとってはなだらかな小道に過ぎなかった。

空に雲が流れ、風に草がそよいでいる。左右にはモンスターボールをかたどった石柱が立ち、正面には大きな滝が流れ落ちている。彼女は足を止め、目を閉じた。
雷雨の中、彼女は戦っていた。敵はディアルガ、パルキア、そしてそれを操る者。「守る」の防御フィールドに映った自らの顔は ――
目を開ける。以前よりも鮮明さを増したそれに、彼女は直感した。失われた記憶を取り戻す鍵がここ、いつかエルが言った「旅の終わり」にあるということを。
再び歩き出す。水辺でレビアたんを出し、言った。

「さあ、行こうか」

滝を登りきり、彼女は体を起こした。5本の尖塔を持つ、ゴシック様式の巨大な建築が威容を現す。
刻まれたモンスターボールの紋章 ―― ポケモントレーナーの最高峰、ポケモンリーグだ。

お小遣い929011円  ポケモン図鑑144匹(捕まえた数131匹)  バッジ8個  プレイ時間908:43



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#56
重厚な木製の扉が重々しい音を立てる。そこは大きなホールだった。静寂の中、靴音だけが高く響く。
小さめの窓から外光が差している。床は一面ポケモンのモザイクで覆われている。幾重ものアーチを連ねた意匠は古い様式だが、メカニカルな部分は最新のものだ。正面左にはポケモンセンター、右にはフレンドリィショップ、そして中央には四天王の間へと続く扉がある。
ポケモンセンターの受付にボールを預けると、彼女は椅子をホールの中央に運び、入口を向いて腰を下ろした。腕を組み、目を閉じる。



……ドドドドド
日は傾き、赤みを帯びた。けたたましい足音は次第に近づき、扉が壊れそうな勢いで開いた!
「待てー!」
夕日に少年のシルエットが浮かび上がる。彼女は目を開け、言った。
「待ったぞ、ジュン」


リーグ前の広場で、2人は距離を取り、向かい合った。ジュンはやる気たっぷりに肩を回した。
「ポケモンリーグ挑戦だろ。オレもそのつもりでここまでやってきたぜ!」
彼女はうつむき、つぶやくように言った。
「今までずっと、お前が先を行き、あたしはその背中を追ってきた。いつの間にか変わってしまったのだな……2人連れ立って湖に行き、ポッチャマとナエトルを手に野性ポケモンと戦い…………あの頃が懐かしい」
ジュンは唐突な切り出しに戸惑い、わずかに潤んだ眼にその意味を理解した。
「柄にもなく喋り過ぎたようだ……あたしはここで立ち止まるわけにはいかない。お前を倒し、先へと進む!」
「さあ、どっちがふさわしいか、ポケモン勝負で決めるぞ!」
「ああ!」

2人は同時にボールを投げた。ジュンはムクホークLv.48、彼女はオリアだ。ムクホークは地表近くを滑空し、オリアは地を疾走する。
オリアがスパークを仕掛ける。だが、ムクホークを倒すには至らない。その特性・威嚇が攻撃を低下させていたのだ。ムクホークはオリアの懐に入り込み、インファイトで反撃した。もつれ合う中、オリアが噛み砕く攻撃でムクホークを倒した。

ジュンは小山のような大柄のポケモンを繰り出した。左右にトゲのついた頭部、頑強な四肢、背中の分厚い甲羅には木を生やしている。大陸ポケモン・ドダイトスLv.53 ―― あのナエトルの最終進化形だ。
「そいつの相手はこいつがしよう」
彼女は迷うことなく、レビアたんを繰り出した。お互い最初のポケモン同士、決着をつけようというのだ。草・地面タイプのドダイトスに対し、水・鋼タイプのエンペルトは圧倒的に不利。以前の彼女なら絶対にないことだ。
ドダイトスの周囲で木の葉が渦を巻き、レビアたんの足元から水が湧き出す。木の葉は嵐となってレビアたんを襲った。草タイプ最強級の大技・リーフストームだ。レビアたんは波乗りを使う。
ジュンは畳み掛けるように指示を出す。ドダイトスは地震を放った!衝撃で地が裂け、砂煙が上がる。


やった……ジュンがそう思った瞬間、激しい水流が巻き起こり、砂煙を吹き飛ばした。レビアたんはまだそこに立っている。
彼女は策もなくレビアたんを出したのではない。あらかじめ持たせておいたシュカの実により、弱点である地震のダメージを半減させ、なおかつ特性・激流を発動させたのだ。
彼女は笑みを浮かべた。勢いを増した水流に足を取られ、ドダイトスは体勢を崩した。レビアたんの体を青い光が包む。
「止めだ!アクアジェット!!」
レビアたんは翼を体につけ、光の弾丸となって一直線に飛んだ。それは甲羅を打ち砕き、ドダイトスは崩れ落ちた。

ジュンはヘラクロスLv.50を、彼女はアスタを出した。ヘラクロスは岩雪崩を起こし、アスタはサイコキネシスで反撃する。アスタは燕返しを耐え、サイコキネシスでヘラクロスを倒した。
フローゼルLv.49の噛み砕く攻撃を食らい、アロスは妖しい光を放った。フローゼルは混乱しつつも瓦割りで攻撃を続け、アロスはジャイロボールでじわじわと相手のHPを削っていく。
痺れを切らしたジュンはフローゼルを戻し、ギャロップLv.49に替えた。彼女もアロスをフォウに替える。フォウは鬼火をかわし、地震攻撃でギャロップを倒した。
再びフローゼルが出る。ドラゴンクローと噛み砕く攻撃の応酬の末、フローゼルが倒れた。

ジュンは6個目のボールを握り締め、勢いよく投げた。現れたのはカビゴンLv.51、槍の柱で使ったゴンベの進化形だ。高さは以前の3倍以上、丸々とした体はさながら壁のようだ。彼女はバッサを出した。
「オレはこいつを信じてる。だから、さわがないぜ」
「バッサ、波導弾!」
カビゴンは重々しい音を響かせ、突進する。バッサは冷静に構えを取り、波導弾を撃ち込んだ。
「まだまだ!こんなピンチ、ポケモンとのきずなではね返す!」
弱点の格闘技を受けたにもかかわらず、カビゴンの勢いは衰えない。手足を広げて跳び上がり、その巨体でバッサを押し潰した。ジュンはにっと笑った。
「言ったはずだ。お前を倒し、先へと進む、と」
カビゴンの体が徐々に持ち上がっていく。バッサは片手でカビゴンを持ち上げ、もう片手に力を溜めた。
閃光と共にカビゴンの体が吹き飛ぶ。地面に体を打ちつけたカビゴンは、既に気を失っていた。

「なんだってんだよーッ!まだ、きたえ方、足りないのかよ!」

ジュンは顔を紅潮させ、彼女の向こうにあるポケモンリーグに向かって叫んだ。虚しく声が反響する。
「おまえに負けるようじゃ、ポケモンリーグはまだ早いってか!ちくしょう!もっと強くなって、ポケモンリーグ勝ち抜いてやる!なんたって、オレは最強のポケモントレーナー、チャンピオンになるからな!」
彼女はジュンに歩み寄り、右手を出した。一瞬間を置き、ジュンも右手を出し返した。手を握り、肘を曲げてグッと引き寄せる。
「今まで楽しかった……お前がいたからこそ、あたしはここまでやってこられたのかもしれないな」
「シィ!」
「ジュン、お前は強い…………あたしの次に、だがな」
ジュンは涙を見せまいと左手で顔を拭い、いつものように強がってみせた。
「オレに負けるまで、だれにも負けるんじゃねーぞ!!」
「ああ!……じゃあな」
2人の手が離れた。

ジュンはフローゼルに飛び乗り、滝を落ちていった。それを見届けた彼女は建物に戻り、少しして出てきた。ボールを開き、ポケモンを出す。ハル(ムクホーク)だ。
「……ただいま」
「お帰り、シィ」
時間は既に夜半、母親はやや驚いた様子で彼女を迎え入れた。フタバタウンに戻ってきたのだ。

「あなたもポケモンも元気?ご飯できてるから、ちょっと休んでいきなさいな」
食卓に着く。出てきたのはご飯と肉じゃが、味噌汁だ。いい匂いがする。思えば、ここに座ったことは数えるほどしかなかった。箸でじゃがいもを切り、口に運ぶ。
「うん、おいしい」
彼女は精一杯の笑顔を作った。気持ちは伝わってくるのだが、どうにもぎこちない。母親は頬杖をつき、ニコニコと笑ってそれを眺めている。話さずとも、母親には我が子の成長がはっきりとわかった。そういうものなのだ。


シャワーを浴びる。降り注ぐ温水と共に、様々な思いが頭を駆け巡り、流れてゆく。
母親が寝入るのを確認した彼女は、静かに寝室のドアを閉めた。

暗闇の中、彼女はハルと共に飛び立った。最後の戦いに向かって ――

お小遣い905877円  ポケモン図鑑147匹(捕まえた数135匹)  バッジ8個  プレイ時間999:59

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