P‐LOG ダイヤモンド編
#49 |
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泉をレビアたん(エンペルト)の波乗りで渡る。ごつごつとした岩肌の急斜面があり、洞窟はその上に続いている。
ボット(ハガネール)に覚えさせた秘伝技・ロッククライムを使う。ボットは彼女を頭に乗せると、巨体をくねらせ、斜面を這い登った。いつの間にか、カミオ(ペラップ)も後をついてきている。
広い空洞に出た。地形は複雑に入り組み、迷路のようになっている。ゴローンやリーシャンといった野性ポケモンのレベルは、30代後半と高い。全て戦わずにやり過ごす。途中、技マシン80「岩雪崩」を拾った。
洞窟は細くなり、蛇行を始めた。曲がり角から現れたギンガ団員を即座に倒す。道が合っている証拠だ。
外に出た。厚い雲が月光を遮る。山頂から吹き降ろす雪混じりの風に、黒いマントがはためく。彼女は暗闇の中を、ひたすら上へと登っていった。
道なき道を歩き、洞窟に入り、団員を倒してそれを抜ける。登るに従い、雪風は強さを増していく。
洞窟に入る。団員の数が数倍になった。彼女は鼻で笑い、それを次々と蹴散らしていった。
洞窟を抜けた。雪も風もなく、ただ静寂に包まれている。目の前には大理石で造られた基壇がある。何かの遺跡のようだ。
白みかかった空が見える。ここを中心として雲が渦を巻き、山頂を取り巻く防壁を成しているのだ。
血がざわめくのを感じる。階段を登ると、石敷きの広場に並び立つ数多くの円柱が目に入った。その先端は鋭角に削られ、天に突き立つように見える。
遺跡の中心部には、幹部の女2人、そしてアカギがいた。
「………………………………今、全てが終わり、そして、全てが始まる。この赤い鎖を使い、異次元の扉を開いてやる」
彼の背後には一際大きな石板があった。正三角形が刻まれ、その中心には血のように赤い結晶体が置かれている。
「そして、私のためにその力を使え。時間を操る神話のポケモン、ディアルガよ」
虫の羽音のような高音が鳴り、石板の上に微小な黒い球体が降りてきた。突如としてそれは爆発的に膨張し、閃光と衝撃波を発し始めた。球体は次第にポケモンへと変化していく。
縦に長く伸びた頭部、4本の脚、扇状の尾羽、長い尾 ―― 深い藍と銀の巨体に、彼女の心臓が大きな拍動を刻む。
「ディア…ルガ……!」
結晶体は数本の赤い色をした鎖を触手のように伸ばしてポケモンの胸に取りつき、更におびただしい数の鎖を出して全身に絡みついた。赤い鎖がうごめき、ポケモンは禍々しい赤・青・緑の光を噴き出した。その光は空を覆っていく。
「……これで全てが破壊される。全てがなくなり、争いもなくなる。この歪んでいく時間、私にしか止められない。これがシンオウを生み出した神話に残っているポケモン、時間の化身ディアルガ!」
「グギュグバァッ!!!」
ポケモンは甲高い、悲鳴にも似た声を上げた。アカギの眼は狂気の色に染まっていた。
「今の世界を私が望む究極の世界にするより!新しい世界を創り出す!そして、私はその世界での神となる!」
「…………神、だと?」
また一つ、心臓が大きな拍動を刻む。
「戯言(たわごと)をほざくな。今すぐブッ飛ばす!」
アカギを睨み据え、真っ直ぐに進む彼女の前に、2人の幹部が立ちはだかった。
「そんなに急がないで。ボスと戦いたい気持ち、なんとなくわかるけど、先にあたしが相手させてもらうわ!あなたには今まで散々コケにされてきたしね!」
「その次はあたし。あなた、強いかもしれないけど、あたしたちも本気出すよ!」
そのとき、聞き慣れた、けたたましい足音が遺跡に響いた。それは急速に接近し、彼女の斜め後ろでぴたりと止まった。
「待てってんだよ!」
「ああ、来たか」
「オレがいないのに、勝手におもしろそうなこと始めるな!」
彼女が目をやると、ジュンは悪戯っぽく笑った。エイチ湖での敗北から1日足らずで特訓を終わらせ、決戦の地に駆け付けたのだ。いつものことながら、彼のスピードには驚かされる。
「ふん!誰かと思えば、エイチ湖で泣いてた男の子じゃない。ちょっとは強くなったの?いいわ!2VS2で戦いましょ!」
「強くなっているさ。あたしはそう信じている」
思いがけない言葉に、ジュンはぽかんとした。
「行くぞ、ジュン!」
彼は力強くうなずき、1歩踏み出して彼女に並んだ。
幹部たちはそれぞれドーミラーLv.41を、彼女はアロス(ドーミラー)、ジュンはゴンベLv.40を繰り出した。毛並みは濃いグレーとクリーム、ずんぐりとした体型をしている。初めて見るが、よく育てられているようだ。
ドーミラー2体は神通力と岩雪崩を使った。念波が襲い、岩石が降り注ぐ。
「封印!」
アロスから光の輪が波紋のように広がった。「封印」は、相手が自分と同じ技を覚えているとき、それを使えなくする。アロスの技は、ジャイロボール・妖しい光・催眠術・封印の4つ。警戒すべき技は以前の戦いから想像がついている。
「厄介な技は封じた。お前のやりたいようにやれ」
ジュンはにっと笑い、ゴンベにのしかかりを指示した。
ドーミラーは神通力と岩雪崩で攻撃を続ける。アロスは食べ残しでHPを維持しつつ妖しい光を放ち、2体を混乱させた。片方を催眠術で眠らせ、もう片方をジャイロボールとのしかかりの集中攻撃で倒した。
ブニャットLv.45が出、切り裂く攻撃でゴンベが倒された。アロスはブニャットを眠らせ、ジュンはヘラクロスLv.42を出す。ヘラクロスはドーミラーの懐に飛び込み、連続の打撃で打ち倒した。インファイトだ。続けてブニャットを瓦割り一撃で倒した。
幹部たちはゴルバットLv.42とLv.41を出した。風圧の刃・エアカッターにヘラクロスが倒れ、後を受けたブイゼルLv.41もヘドロ爆弾とギガドレインに倒れた。アロスは妖しい光とジャイロボールを使い、隙を作る。ジュンはポニータLv.41を出した。ポニータは大文字、アロスはジャイロボールでゴルバット2匹を撃ち落した。幹部たちの顔が青ざめていく。
残るはスカタンクLv.46のみだ。ポニータはスカタンクの毒突きを食らいつつも踏み付けで攻撃し、アロスは妖しい光を放った。混乱するスカタンクはポニータの鬼火で火傷を負い、アロスのジャイロボールに倒れた。彼女とジュン、2人の勝利だ。
「やるじゃないか」
「……へっ、オレのポケモン強いだろ!オレも強くなれるんだよ!……とはいえ、今はこれが限界かな……シィ。これ、使ってやる!」
ジュンはバッグから傷薬を取り出し、アロスに使った。
「おい!シィ!後はまかせるからな!」
「ああ!」
彼は足取りも軽く、階段を駆け下りていった。あの様子なら、もう大丈夫だ。
「おお!ディアルガ。これは……!」
アカギが驚嘆の声を上げた。感慨に浸るのは後回しだ。ディアルガを中心として霧が渦を巻き、無数の光点が生み出されていく。さながら、銀河のように。
「素晴らしい!美しい!正に、新しい銀河の!宇宙の誕生だ!」
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#50 |
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彼女はモンスターボールを構えた。ディアルガを攻撃し、その動きを止めようというのだ。
シロナは部屋の窓を開け、光るテンガン山を見ていた。
「……何だ!?」
渦の回転が止まった。
「ピーッ!!」
ディアルガを取り囲むように次々と3匹のポケモンが現れ、鳴き声を上げた。ユクシー、エムリット、アグノムだ。
渦が逆転を始める。それは次第に光を失い、消散した。ディアルガの全身に絡みついた赤い鎖は断ち切れ、ボロボロと崩れ去った。空も元に戻った。
3匹がふっと消えた。エムリットだけが一瞬彼女の目の前に現れ、再び姿を消した。
「余計な真似を。日和見どもめ」
「……!!赤い鎖が……!崩れ、無くなってしまった……!?それになぜ?シンジ湖のポケモン、エムリットがお前の傍に現れる!?いや、それよりもだ!銀河が!銀河が消えただと!!」
アカギは目を血走らせ、ギリギリと歯噛みし、頭を掻きむしった。以前のような冷静さは、もうそこにはなかった。
「とんだ茶番だ!以前、あたしは貴様のことを小物だと言ったが、それは間違っていなかったようだな」
「……許さん。あの3匹、もう一度捕らえ、赤い鎖を作り出してやるッ。その前にッ!お前を叩きのめそう!!」
激昂し、指を突き付ける。彼女は冷たく言い放った。
「身の程を知れ、痴(し)れ者が」
アカギはヤミカラスの進化形、ドンカラスLv.45を繰り出した。体つきは頑強に、大きさは2倍ほどにもなっている。彼女はアロスを出した。
ドンカラスが差し押さえを使い、アロスが持っていた食べ残しが変色した。もう回復はできない。アロスは妖しい光を放ち、レビアたんに交代した。レビアたんは鋼の翼を鋭く一閃し、混乱するドンカラスを斬り落とした。
次はギャラドスLv.45だ。オリア(レントラー)を出す。オリアは火花を散らして突進し、スパークでギャラドスを落とした。
アカギはマニューラLv.48を出し、彼女はバッサ(ルカリオ)を出した。マニューラはニューラの進化形だ。
マニューラはバッサの眼前に現れたかと思うと、凄まじいスピードで背後に回り込み、鋭い鉤爪で斬り掛かった。バッサはその腕を取り、体勢を崩したところに至近距離から波導弾を撃ち込んだ。マニューラは吹き飛び、二転三転して止まった。
「ここまで私を追い込んだこと、それは認めてやろう」
アカギは最後の1体、クロバットLv.46を繰り出した。ゴルバットの進化形で、翼は2枚から4枚に増えている。彼女は再びオリアを出した。
クロバットは柱の陰を伝い飛んだ。その動きは次第に加速し、ついにオリアは姿を見失った。隙を見て、遥か上空に移動していたのだ。クロバットは狙いを定めると、急降下を始めた。オリアは目を閉じ、彼女の指示を待つ。
クロバットが牙を剥き、オリアの首筋に噛み付く!
「スパーク!」
声と同時に、オリアの体に高圧電流が流れた。筋肉が硬直して口を開けることができず、クロバットは電撃を受け続ける。
「まさか、まさか、まさかッ!私が負けるかもだと!!」
「何を驚くことがある?強者が弱者を下す、それだけのことだ」
アカギが回復の薬を使ったが、それも無駄な足掻きだった。電圧が上がる。オリアが電撃を止めると、焼け焦げたクロバットはずるりと落ちた。
ボスの一方的な敗北を目の当たりにした幹部たちは、我先にと逃げていった。
「脆いものだな」
「認めるか!神話の力を……従えたのではなく、我が物にしたというのに!!」
「貴様が言う神話の力とは、空をけばけばしく染め立てることか?それとも、銀河もどきをひけらかすことか?所詮、神話は神話でしかない。新しい世界を創り出す?たかが1匹のポケモンに何ができようか」
「……!!お前にとって、本当の究極とは何だ?本当に光り輝く大切なものを知っているのか?……まあいい。私はいつか必ず神となってみせる。そして、究極のものを自分のものとしてやる……」
彼女がアカギの眼を見た。氷のごとき眼差しが脳髄を貫く。アカギは顔を強張らせ、呼吸を乱し、後ずさった。
そして足を踏み外し、奈落の底へと落ちていった。
改めてディアルガに目を向ける。足を踏み出そうとしたとき、背後から2つの足音が近づいてきた。ナナカマド博士とコウキだ。彼女は振り向きもしない。
博士はディアルガの姿を目にし、驚嘆した。
「おお!おお!時間の神ディアルガが……怒っているのか、悲しんでいるのか……ただ、私には」
彼女との間を突風が吹き抜け、博士は腕で顔を覆った。
風が通った石の床は、数mに渡って深く裂けていた。博士は冷汗を流し、コウキはその場にへたり込んだ。
「黙れ」
「シィ……さっき、ジュンに会ったよ。シィのこと、信じてるって。お前なら大丈夫だからって。僕も同じ。だから、あのポケモン助けてよ!ギンガ団に無理やり呼び出され、苦しんでいるポケモンを!」
「お前もだ」
ちらりとコウキを見る。彼の眼は涙で潤んでいた。彼女は2人に背を向け、真っ直ぐに歩いていった。
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#51 |
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屹立する藍と銀の巨体、その高さは5mを優に超える。並の人間ならば、間違いなく気圧され、萎縮してしまうことだろう。
彼女は腕を組み、その顔を見据えた。逆に威圧している感さえある。
「ディアルガよ。あれから幾年が過ぎた?」
ディアルガは微動だにしない。ただ、真紅の眼で見下ろすのみだ。
「再び刃を向けようというのか。このあたしに」
彼女の眼差しが鋭さを増す。
「……倒す前に一つ聞こう。片割れ、パルキアはどこにいる?」
「グギュグバァッ!!!」
ディアルガは雄叫びを上げ、彼女を踏み潰そうと前脚を振り上げた。
「それが答か!」
彼女は空高く跳躍し、それをかわした。ディアルガを見下ろし、モンスターボールを開く。出たアロスはディアルガの眼前で妖しい光を放った。
間髪入れず、次のボールを開く。光が延び、暴れ狂うディアルガの真横にバッサが現れた。バッサは構えを取り、ディアルガは振り向き、彼女は地上に降り立った。バッサの手から青白い輝きが漏れる。
「波導弾!」
光の弾丸は横腹をえぐり、ディアルガは悲鳴を上げて倒れた。柱が折れ、床が砕け、砂塵が舞い上がる。
「……これが、あのディアルガ?拍子抜けだ。何と小さく、弱くなったことか」
ディアルガの口から黒い血が流れ出た。眼は生気を失い、体を痙攣させている。もう虫の息だ。彼女の表情は冷たく、残酷さに満ちていた。
「倒す?……否!殺す!殺す殺す殺す殺す!!欠片すら残さず消し去ってくれよう、ディアルガァッ!!!!」
バッサは戸惑いつつも両腕を突き出し、力を溜める。手の先の光球は通常の十倍にまで膨れ上がった。
「ペラップ〜」
カミオだ。カミオは彼女とディアルガの間の瓦礫に留まった。
「何の真似だ?そこをどけ!」
「ヤメテ!モウ、ヤメテ。ディアルガヲ、ユルシテアゲテ」
彼女は息を呑んだ。カミオが喋ったのだ。確かにペラップには人間の言葉を真似て鳴く習性があるが、それはただのオウム返しに過ぎず、言葉が話せるわけではない。そのはずだ。
「カミオ。お前は一体……」
「もう、やめて。シィ」
ハスキーな鳴き声が、澄んだ少女の声に変わった。聞き覚えがある……そう、夢の中で聞いた声だ。
柱の陰から少女が歩み出た。薄い翠の瞳、雪のように白い肌、ショートカットのブロンド、歳は彼女と同じくらいだろうか。ゆったりとした白いローブをまとっている。
彼女は呆然と少女を見た。知っている、自分はこの少女のことを知っているのだ…………だが。
「わたしのことは、思い出してくれないのね」
少女は寂しげに笑った。彼女は我に返り、叫んだ。
「バッサ!ディアルガに止めを刺せ!!」
光球が消滅した。バッサはひざまずき、顔を伏せた。驚く彼女を前に、少女はバッサの頭をなでて言った。
「優しい仔……主人(おや)の手を血に染めさせたくなかったのね」
「あなたはなぜ、ディアルガと戦うの?」
「……過去の、戦いの決着を付けるため」
「じゃあ、なぜ、戦いは起きたの?なぜ、憎しみを抱いているの?」
「………………………………わからない。ただ、漠然とした何かが、あたしを衝き動かして……」
その声は震えていた。彼女はうなだれ、唇を噛んだ。
「ポケモンは主人を映す鏡。強くも弱くも、正にも邪にもなる。わたしはずっと見てきた……あなたは厳しくも優しい人。あなたの愛情を受けて、ポケモンたちはみんな、強く、心豊かに育った……」
少女の目から涙が零れ落ちた。
「憎しみなんかに自分を見失わないで!シィ!」
……そうだ。心を強く持たずに、何を成し遂げられよう。
強くありたい ―― ポケモン、人、自分を支えてくれる者たちのために。
「すまない、バッサ」
穏やかなトーンだ。バッサは顔を上げ、微笑みを浮かべた。
「……ディアルガ、どこへなりと失せるがいい」
黒い球体がディアルガを包む。それはごく小さく収縮し、空に吸い込まれていった。空間が揺らめき、一瞬巨大な何かが垣間見えた。
「ごめんなさい、勝手なことをして……」
「お前は全てを知っているのだろう?教えてくれ、あたしの過去を」
「……わたしが話したとしても、あなたの記憶が戻るわけじゃないから」
笑顔を作って彼女の顔を見る。
「わたしの名前はエル……がんばって、シィ」
少女が柱の陰に入った。彼女は慌てて駆け寄ったが、もうそこに少女の姿はなかった。
地平線に一筋の光が走る ―― 日の出だ。
窓が閉じられた。シロナは、またどこかへと旅立っていった。
彼女は床の裂け目を飛び越え、ナナカマド博士とコウキの元に戻った。コウキは目を潤ませ、彼女に抱き付いた。
「……お、おい!」
はっとし、顔を真っ赤にするコウキを、彼女はデコピンで弾き飛ばした。
「シィ!お前はなんという……よくやってくれた!本当によくやってくれた!これほどドキドキしたことは、60年の人生で初めてだ!」
「博士ったら、あの後いろいろ調べて……それでシィのこと、すっごい心配してさ、こんなところまで来たんだ」
また、涙を溜め始めた。
「……それにしても、シィ、無事でよかった、よかったよ」
「泣くな!……コウキ。あたしが戻らなかったことがあったか?」
コウキは手で顔をごしごしとこすり、笑ってみせた。
「それでいい」
「さ、帰ろう!」
2人は連れ立って歩いていった。博士は一人空を見上げ、つぶやいた。
「誰の未来も……誰の世界も……何者かによって奪われるものではないのだ」
コウキの呼ぶ声に、博士は2人を追っていった。
昇りゆく朝日が遺跡を照らしていた。
お小遣い931222円 ポケモン図鑑130匹(捕まえた数116匹) バッジ7個 プレイ時間633:34
#52 |
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視線の先にはテンガン山がある。あの後、彼女はここに着くなりベッドに倒れ込み、3日間眠り続けていたのだった。
「エル……」
カミオがボックスから勝手に出てくることもなくなった。少し寂しいような気もする。
ギンガ団は壊滅し、余裕もできた。だが、じっとしているのは性に合わない。
「ぷわわ?」
彼女はおもむろに立ち上がり、屋根を飛び降りた。アスタは風に流されつつも後を追った。
目の前の洞窟は岩で閉ざされている。「迷いの洞窟」、2つある左のほうだ。以前来たときは秘伝技が使えず、中に入ることはできなかった。今日は、ここにドラゴンタイプのポケモンがいると聞いてやってきたのだ。高い能力と優れた耐性を持ち、最強級ともいわれる種族、ドラゴン。ぜひとも、その力を試してみたい。
ボットの怪力で岩を押し退ける。洞窟はすぐ下に折れていた。
そこは狭い横穴が網目のように延びていた右の洞窟とは異なり、一繋がりの空間となっていた。大量のズバットやドーミラーをかき分けるようにして進み、目的のポケモンを探す。
岩の窪みに、初めて見る小柄なポケモンがいた。色は灰と赤、顔つきはサメに似ており、短い胴体に短い手足がついている。
彼女はベリト(コロトック)を出した。ポケモンは砂かけをし、突進を仕掛けてきた。歌うで眠らせ、峰打ちでHPを削る。モンスターボールには収まらず、ハイパーボールで捕獲に成功した。
図鑑を確認する。陸鮫ポケモン・フカマル、タイプはドラゴン/地面だ。探していたポケモンに間違いない。
一応、洞窟を隅々まで調べておく。奥の支洞を登った先で、技マシン26「地震」を見つけた。
ズイタウンの育て屋に来た。昨日捕獲した雌のフカマルと、GTSで手に入れた雄のズガイドスを預ける。子への遺伝により、技の強化を図るのだ。
「おお!あんたか。預かっていたポケモンを育てていたら……何と!ポケモンがタマゴを持っておったんじゃ!どこから持って来たかわからんが、あんたのポケモンが持っていたタマゴなんじゃ。やっぱり欲しいじゃろ?」
「さっさと寄越せ」
彼女は老人の手からタマゴをひったくった。タマゴをバッグに入れ、預けていた2匹を引き取り、自転車に乗る。
210番道路に差し掛かったとき、タマゴが動き出した。自転車を降り、バッグから出してしばし待つ。
かけらを散らし、中から小さなフカマルが顔を出した。彼女はその技を確認し、笑みを浮かべた。名前は「フォウ」と付けた。
ノモセシティ ―― 彼女は友達と遊んでいる麦わら帽子の少年を見つけ、頭を鷲掴みにしてこちらを向かせた。
「連れて来たぞ」
彼女はボールから3匹のミノムッチを出した。それぞれ、緑色・土色・ピンク色をしている。ミノムシポケモン・ミノムッチは戦いでミノが壊れると、手近なものを材料にそれを作り直す習性がある。森や草むらであれば草木のミノ、岩場や洞窟であれば砂地のミノ、街中や屋内であればゴミのミノとなる。
「すっげー!いろんなミノムッチ、そろってるよ!なんかうれしい!うれしいから、これやるよ!えんりょせず持ってけよな!」
矯正ギプスをもらった。ポケモンに持たせると一時的に素早さが下がるが、通常よりも強く育ちやすいという道具だ。
「ああ、助かる」
「おまえ!りっぱな昆虫マニアになれるよ!」
「……『お前』?」
彼女は両拳を少年のこめかみにグリグリと押し付けた。辺りに少年の悲鳴が響いた。
「さあ、楽しい訓練の時間だ」
「キュー!」
フォウに矯正ギプスを持たせて草むらを歩き、現れる野性ポケモンを倒していく。キメリ(パチリス)たちがフォローに回る。かなりハードだが、これも残る戦いに備えてのことだ。草むらとポケモンセンターを往復する日々が続いた。
4日後、フォウのレベルは38にまで上がった。レビアたん、オリア、アロス、アスタ、バッサ、もう他のポケモンたちにも見劣りしない。いよいよ、最後のジムがあるナギサシティに向かうことにする。全員揃って朝食を取り、ポケモンセンターを出る。
リッシ湖ほとりのレストランを右に曲がり、222番道路に入る。道はなだらか、陽射しは暖かく、とても快適だ。ここのところの難路続きが余計にそう感じさせるのかもしれない。
南は海だ。釣り人たちを倒し、砂浜を進むと、黄色く塗られた家が見えてきた。手作りの表札にはイラストが添えられている。
「『ピカチュウだいすきハウス』 ぴかぴかぴかー!ぴかぴか!?」
「ウヒヒ!ピカチュウだらけで、ポケモンチャンピオンを目指すぞ!」
男の周りには6匹のピカチュウがいた。どれも黄色く丸々としていて、かわいら……
「ぴかちゅ!!」
「ぴかちゅ!!」
「ぴかちゅ!!」
「ぴかちゅ!!」
「ぴかちゅ!!」
「ぴか、ぴかぴか!ぴがぢゅう!!」
「なっ?!」
やけに大きいピカチュウが顔を上げた。着ぐるみを着た少女だ。彼女はすぐに平静を取り戻してバッサを出し、向かってくる本物のピカチュウ2匹を波導弾で次々と倒した。少女は倒れ込み、つぶやいた。
「ぴかちゅう……ぴか……本物のピカチュウになるのは、もっと修行が必要です」
道路と町を隔てるゲートに入る。ここを抜ければナギサシティだ。フォウはLv.39に、レビアたん、オリア、アロス、アスタ、バッサはLv.40になった。ジム戦が楽しみだ。
外光に人のシルエットが浮かび上がる。彼女は少なからぬ圧迫感を覚えた。炎のように熱い闘志、強敵の予感がする!
「おっ!ポケモントレーナー!ボールの中のポケモン、強そうなのが伝わってくるぜ!」
真っ赤なアフロヘアの若い男だ。縮れた髪を顔の2倍ほどにも膨らませている。
「で、そのアフロが何の用だ?」
「おっと、自己紹介!俺の名前はオーバ!ポケモンリーグの四天王さ!」
「……四天王、か」
運命が、彼女を更なる戦いへと駆り立てる。
お小遣い949642円 ポケモン図鑑130匹(捕まえた数116匹) バッジ7個 プレイ時間664:42