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P‐LOG ダイヤモンド編

#41
ミオシティポケモンセンター ―― 彼女はゲンからもらったタマゴをパソコンに預け、ジム戦の準備を整えた。今回使うポケモンは、レビアたん(ポッタイシLv.34)、オリア(レントラーLv.33)、アロス(ドーミラーLv.33)、ロネ(グレッグルLv.33)、アスタ(フワンテLv.33)、バイアさん(ポッチャマLv.33)の6匹だ。

「ギョ…?」
「そうか。レビアたん、お前は初めて顔を合わせるのだったな。名前はバイアさん、お前の妹分だ。可愛がってやってくれ」
「ポチャ」
小柄な雌のポッチャマは、恥ずかしそうに彼女の脚の陰から顔を出している。「バイア」と名付けるつもりが、あの姓名判断士に勝手に「さん」を足されてしまったらしい。レビアたんは疑問の目でバイアさんを見ている。
「見ての通り、なりは小さいが、強さは本物だ。信じろ」

「ミオシティポケモンジム リーダー・トウガン 鋼鉄ボディの男」
灰色の床は一面鉄板でできており、赤茶色の間仕切りは鋼材の柱に鉄板をボルトで止めたものだ。四方から機械の動作音が聞こえてくる。まるで工場か何かのようだ。いつもの男が迎えた。
「オーッス!未来のチャンピオン!ここのジムリーダーは鋼タイプポケモンの使い手!鋼タイプは防御力が高くて、生半可な攻撃じゃ、びくともしないぞ!」
彼女は上を見上げた。中央は吹き抜けになっており、4階まであるのが確認できる。

武道家の男が立ち塞がった。
「鋼が表しているのはッ、折れない心!諦めなければ、道が見えてくるのだ!」
冷たい鋼に似合わぬ暑苦しさだ。男はハガネールを繰り出した。ロネを出す。ロネはジャンプし、ハガネールの顔面に瓦割りを見舞った。打撃音が屋内にこだまする。効果抜群にもかかわらず、相手はHPを半分以上残している。さすがに硬い。
ハガネールはロネを挑発し、捨て身タックルで壁に叩きつけた。ロネはゆらりと立ち上がり、ジャンプした。ハガネールの頭を踏みつけて更に跳び、首元に渾身の手刀を振り下ろす。攻撃を受けると与えるダメージが倍増する技、「リベンジ」だ。気を失ったハガネールはゆっくりと倒れ、重い音が響いた。
ロネは「見たか!」とでも言いたげに鼻を鳴らした。

リフトに乗り、2階に上がる。もちろん、そこにもトレーナーはいる。上下動するリフトと水平動するコンベアに乗って移動し、ジム内を廻っていく。
ジムトレーナーのポケモンはハガネールやイワークがほとんどだが、例外もある。エリートトレーナーの女が出してきたのは、水兎ポケモン・マリルリだった。オリアのスパークで片付け、1階に下りる。そこには、他とは違う赤いマーキングの施されたリフトがあった。いよいよだ。

リフトは2階、3階を突き抜け、一気に最上階へと昇った。それを降りた先には大きなバトルフィールドがあり、1人の男が立っていた。年の頃は中年、ぼさぼさの赤い髪と無精ひげ、上には濃い茶色のマントを羽織っている。男は手元の端末に映し出される挑戦者の資料に目を通し、言った。
「ほう!クロガネのジムバッジ。なるほどなるほど!私の息子を倒したか」
そう言われれば、確かに似ている。男はクロガネジムリーダー・ヒョウタの父親だった。
「まあ、あいつはまだまだ未熟者だからな。息子のヒョウタに代わってこの私、トウガンが相手をしてくれようぞ!」
彼女はトレーナーケースを取り出し、かざして見せた。
「このジムのバッジも、じきここに収まることになる。親子共々、我が力の礎(いしずえ)となれ!」

トウガンはドーミラーLv.36を繰り出した。彼女はオリアだ。オリアは体を帯電させ、ドーミラー目がけ突進した。強烈なスパークにドーミラーは吹っ飛び、そのHPは半分を切った。
鋼の体がキラキラと輝く。ドーミラーはその光を一点に集束させ、まばゆい光球を放った。「ラスターカノン」 ―― 食らったオリアのダメージはごくわずか、見掛け倒しの技だ。オリアはドーミラーを押さえ込み、電撃を流し込んだ。


ジムリーダーの2匹目はハガネールLv.36だ。彼女はバイアさんをバトルフィールドに送り、レビアたんを傍らに置いた。
「まあ見ていろ」
体の大きさはバイアさんの40cm弱に対し、ハガネールは10m強 ―― その差はあまりにも大きい。ハガネールが尾を軽く一振りすれば、バイアさんは埃を払うように跳ね飛ばされてしまうだろう。レビアたんは心配げだ。
バイアさんは精一杯顔を作ってハガネールを威嚇した。本人は真剣らしいが、当然のように迫力は皆無だ。トウガンから失笑が漏れた。ハガネールは気にも留めていない。逆に凶悪な顔を近づけ、一声吼えてみせた。
「ギグアァ――ッ!」

「草結び」
バイアさんが左の翼を振り上げた。緑の草が左の突起に絡みつき、バランスを崩したハガネールは横倒しになった。
レビアたんは目を丸くした。草結びは相手の体重が重いほど威力が上がる技、このような超重量級のポケモンにこそ真価を発揮する。しかも、バイアさんの特殊攻撃力はレビアたんを上回っているのだ。トウガンの表情が変わった。
怒るハガネールは草を引きちぎって立ち上がり、凍気を込めた氷の牙でバイアさんを噛み潰した。一瞬、場が静まり返る。
「バイアさん、ハイドロポンプだ!」
「ポオォ…チャ――――!!」
暗闇の中で、超高圧縮された水がビームのように放たれた。ハガネールの体がひび割れ、水が噴出する。バイアさんは反動を利用し、口腔から脱出した。
「ギギャアァ――――ッ!!」
ハガネールは断末魔の叫びを上げ、フィールドに崩れ落ちた。重々しい音が響き、衝撃で建物全体がビリビリと鳴った。レビアたんは言葉もなかった。
「レビアたん。出番だ」


「何と!最後の1匹か!ここからが本番だな!」
トウガンは3匹目となるタテトプスの進化形、シールドポケモン・トリデプスLv.39を繰り出した。四つ足の怪獣型のポケモンで、黒鉄色の四角い顔からは多数の角と牙が突き出している。城壁を思わせる、いかにも頑丈そうな面構えだ。
「波乗りだ」
レビアたんは湧き出す水で大波を起こし、トリデプスに叩きつけた。更に第二波を叩きつける。だが、倒しきれない。確実に弱点を突いているというのに、何という守りの堅さだろう。
トリデプスはラスターカノンで反撃する。トウガンが叫んだ。
「まだまだ!諦めない!」
その言葉にヒョウタの姿が重なる ―― 「ああ、親子なのだな」と、彼女は改めて思った。
いや、余計なことを考えるのは後だ。トウガンは回復の薬を使い、トリデプスを全快させた。彼女は再び、レビアたんに波乗りを指示した。

四度目の攻撃が急所を捉え、トリデプスはついに力尽きた。レビアたんはLv.35に、オリア、アロス、ロネはLv.34になった。
「うーむッ!鍛えたポケモンたちが!!」

トウガンはやれやれといった顔をし、彼女に歩み寄った。
「私の自慢のポケモンたちを倒したその強さを認め、このマインバッジを渡そう!」
バッジは、茶色の地に3本の銀色のツルハシが組み合わされたデザインをしている。
「そのマインバッジを持っていると、秘伝の怪力をいつでも使えるようになる!ようし!これも持っていけい!」
トウガンは技マシン91「ラスターカノン」を彼女に渡し、豪快に笑った。
「グハハハハ!シンオウ地方は広い!!君やジュン君といった強いトレーナーがどんどん出てくるわい!そして、君たちや息子のような若いトレーナーが増えれば、ポケモンの未来も明るい!どれ、私は鋼鉄島でもう一度鍛え直すかな」

リフトを下る。彼女は6つ目のバッジを見、ケースを閉じてバッグにしまった。
「おお!シィ!ジムリーダーに勝ったのか!大したもんだぜ!で、手に入れたバッジが6個か。強いトレーナーになったな!お前がポケモンチャンピオンを目指す!と言っても、誰も笑わない!応援するぜ」

今までにない男の真剣な口ぶりに、彼女は少し照れた様子で笑みだけを返した。

お小遣い762880円  ポケモン図鑑117匹(捕まえた数105匹)  バッジ6個  プレイ時間542:44



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#42
扉が開くと、そこにはジュンが立っていた。
「何だ?バッジのことなら、聞かれるまでもないが」
さすがだな。おまえの実力なら、ポケモンチャンピオンめざせるぜ。もっとも、オレのほうが強いから、ありえない話だけどな」
……潰す!
「よしっ!シィ、図書館に来いよ!!」
「おい、待てっ!」
訳も話さないまま、ジュンは図書館へと走っていった。彼女は構わずポケモンセンターに戻った。回復後、手持ちをジム戦用から通常の編成に戻す。どうせろくでもないことだろうが、行かねばなるまい。

図書館の3階に上がると、ジュンが待っていた。
「ほら!シィ。こっちだぜ!こっち!」
どうも落ち着かない様子だ。窓際の席にナナカマド博士とコウキがいるのが見えた。

2人は博士らに向かい合って座った。
「ほら!じいさん!シィのやつ、連れてきたぜ。じゃあオレ、行くからさ!」
ジュンは慌てて立ち上がり、階段のほうへと後ずさった。それを博士は鬼のような形相で睨みつけた。
「………………………………………………………………………………………………」
「……うう、わかったよ」
脂汗を流し、諦めて席に着く。彼女は腕を組み、目をつぶった。

「うむ……揃ったな。シィたち、聞きなさい!お前たちはすっかり忘れているかもしれんが、私はポケモンの進化について研究している」
博士は席を立ち、窓の向こうの空を見上げた。ムクバードとムックルが群れを成して飛んでいる。
「だが、研究すればするほど、わからないことが増えていくばかりだ。進化するポケモン、進化しないポケモン。何が違うのか?生物として未熟なポケモンが進化するのか。だとすれば、進化しないとされる伝説のポケモンは生物としての完成形か?」
振り返り、席に戻る。
「そこでだ。シンオウ地方にある3つの湖には、幻のポケモンがいるという。それを見ることができれば、ポケモンの進化について何かわかるかもしれん。お前たち、頼む!ぜひ、幻のポケモンを探してほしいのだ!」
「なんだよ!オレはポケモン図鑑、もらってないぜ!」
「……渡す前に研究所を飛び出したのは、どこの誰だというのだ。まあよい!いろんなポケモンをその目で見るのも、強くなるために大事なことだぞ」
「当然です!これでポケモン図鑑が更に充実して、博士の研究も進みますね!」
「うむ!どっちにしろ、行ってもらうがな」

「……気に入らないな」
彼女はぽつりと言った。ジュンとコウキはどきりとし、彼女を見た。博士はそれを黙殺して話を進める。
「そこでだ。湖は3つ、お前たちはちょうど3人。分かれて調査しよう!コウキはシンジ湖」
「わかりました!」
「ジュン、お前はエイチ湖を頼む。キッサキシティ近くのあそこへの道は厳しいからな、強いトレーナーに頼みたい」
「ま、まーな!なんだよ、じいさん。オレのこと、よくわかってるんじゃねーの!?」
ジュンは見え透いたお世辞に盛大に照れた。彼女は考えた ―― なるほど、「単純」だから「ジュン」という名前なのか。では、なぜ「タン」ではないのだろう?
「そして、シィがリッシ湖だな!確か、トバリとノモセの間か」
彼女は何かを感じて目を開けた。

地響きがし、建物が揺れた。悲鳴が上がる。本がいくらか落ちた。それは数秒で治まった。

「…………………………止まったか。みんな、大丈夫か?気をつけて外に出るぞ。街の様子が気になる」
真っ先にジュンが階段を駆け下り、コウキも後を追った。博士が彼女に声をかける。
「シィ、お前も早く来なさい……ただし、揺れには気をつけるんだぞ」

「はっ、はい!ここはミオ図書館です。建物の中ではし、静かにお願いしますね。あたし決して、ぎゃー!とか、助けてえー!!とか、叫んだりしていませんから!」
1階の案内係の女はパニックに陥っていた。いちいち騒々しい。


図書館を出る。街が騒がしい。3人は固まり、周囲の様子をうかがっていた。
……さっきの揺れ、自然のものではないな」
ナナカマド博士がつぶやいた。通りすがりの船員の男から話を聞く。
「おいおい!爺さんたち!大変だぜ!何でも、リッシ湖で爆発が起きたそうだ!!どがーん!!ってな」
「じいさん!!オレ、湖に行くぜ!なんかやばい気がするんだ!」
ジュンはそう言い残し、猛スピードで町の外に向かって走っていった。
「!!!……まったく、ジュンめ。シィ。リッシ湖のこと、何だか気になるのだ。だが、何が起きているのか、まったく見当がつかん。くれぐれも無理はするなよ!私たちもシンジ湖の様子を見たら、そっちに行くからな」
「心当たりがある。人のことより、自分のことを心配しておけ」
彼女はモンスターボールからハル(ムクバード)を出した。
「行くぞ、ハル!」

ノモセシティに降り、リッシ湖に急ぐ。湖に通じる道を塞いでいた男たちはいなくなっていた。林を抜ける。

……水が、ない。湖があるはずの場所には、広大な窪地だけがあった。周囲の木々は軒並み外側に向かって倒れている。鱗の焦げたコイキングが、哀れにも地面の上で力なくのたうっている。
彼女は近くにいたギンガ団の女に詰め寄った。
「ギンガ爆弾、か。酷いことをする」
「……アナタもコイキングのように跳ねさせてあげましょうか」
女はニャルマーを繰り出した。ハルは乱れひっかきをかわし、空を飛ぶ攻撃でニャルマーを倒した。次のグレッグルは燕返し一撃だった。
ハルの体が光を放ち、大きく膨れ上がった。その体長は以前の2倍、翼開長は3mにも達する。鎌のような冠羽は前に垂れ、先端が赤い。目つきは鋭さを増した。ハルは、猛禽ポケモン・ムクホークに進化したのだ。
「子供だと思って油断を……だけど、遅いわ。湖に沈んでいた島、その中で眠っていたポケモン、もうギンガ団が捕らえたのよ」
周りを見回すと、小山のような場所があった。団員らを片付け、そこに開いた真新しい横穴から中に入る。

大きな空洞が広がる。白黒の服を着た男の後姿が見えた。ギンガ団3人目の幹部だ。

お小遣い766880円  ポケモン図鑑118匹(捕まえた数106匹)  バッジ6個  プレイ時間544:35



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#43
「ミッションは順調、ボスも満足なさるだろう。全てはみんなのために。そして、ギンガ団のために!」
「湖のポケモンとやらは連れ出された後か……」
彼女の声に、髪を三日月形に立たせた若い男は振り返った。
「お前の顔を知ってるぞ!ハクタイのギンガ団アジトに乗り込んできた子供だな!フッ!ジュピターも情けない!こんな子供に負けるとはな!だが、ギンガ団を邪魔するなら、どんな可能性でも潰す!!」
男はユンゲラーLv.35を繰り出した。彼女はハル(ムクホーク)を出し、燕返し一刀で斬り捨てた。
「わかっていないようだな。潰されるのは貴様らのほうだ」
レビアたんは波乗り、ドーミラーLv.35は岩をぶつけ動きを封じる岩石封じを使った。バブル光線で倒す。
男の最後のポケモンは、グレッグルの進化形・ドクロッグLv.37だ。額から角が生え、顔つきは凶悪なものになっている。アスタはドクロッグの毒突きを耐え、サイコキネシスで返り討ちにした。

「くっ!この私が!時間稼ぎにしかならないだと」
男は吐き捨てるように言った。
「まあいい!お前のような子供が何をしても、流れる時間は止められない!ギンガ団は3つの湖に眠っていた3匹のポケモン、そのパワーを使って新しい宇宙を生み出す!今ごろ仲間のマーズが、シンジ湖で次のポケモンを捕らえているだろう……」
気になる言葉を残し、男は逃亡した。シンジ湖にはコウキが向かっている。持ちこたえてくれればいいのだが……

外に出る。ふと、傷ついたコイキングが目に入った。
「悪いが、先を急いでいる。ポケモンセンターに保護を頼んでおこう」
ハルは彼女の肩を持ち、大きく羽ばたいた。ムクホークとなったハルの翼は十分に大きく、秘伝技を使わずとも人間を運ぶことができそうなほどだ。ノモセのポケモンセンターに寄り、フタバタウンへと飛ぶ。

201番道路をシンジ湖へと走る。彼女は、初めてこの道を歩いたときのことを思い出していた。一室で目を覚まし、何もわからないままジュンに連れられ湖に行き、コウキ、そしてレビアたんと出会い……

近頃、わずかずつだが、過去の記憶が戻りつつあるのを感じる。
失われた古い記憶と、目覚めてからの新しい記憶……新しい記憶が古い記憶を上書きしてしまうのではないか?古い記憶が完全に戻ったとき、新しい記憶は掻き消えてしまうのではないか? ―― その疑念が、彼女の中で葛藤を起こしていた。
「この先、シンジ湖 気持ちを表す湖」


森を抜けた。ナナカマド博士がギンガ団に捕らわれている。湖は水面が上昇し、その中央には島が出現していた。リッシ湖にあったものとよく似ている。彼女に気づいた博士が声を上げた。
「おおっ!シィ!よく来てくれた!ギンガ団の連中が伝説のポケモンを……そうだ!シィ!コウキを助けてやってくれい!」
コウキは幹部と対峙していた。谷間の発電所で戦ったあの女だ。加勢しようとする彼女の前に、団員たちが立ちはだかる。
「ワレワレは、悪いけれど時間稼ぎしちゃいます」
「ワレワレは、世界平和のために全てを独占するのです!」

コウキは流れる汗を拭った。彼のモウカザルはもう限界だった。それに比べて、女は余裕の表情をしている。
「やれやれ。相変わらず、手のかかる奴だ」
「……!ギンガ団が、いきなり湖のポケモンを……」
「わかった。後はあたしに任せろ」
彼女は彼をかばうように前に立ち、鋭い目で女を睨みつけた。それを見た女の表情が変わった。
「あなたの顔!嫌なこと思い出しちゃった!発電所のことよ!!あなたのせいで酷い目にあったんだから。何、その顔。あたしのこと、覚えてるでしょ!」
「ああ、覚えているさ。特にこいつはな!」
レビアたんのボールを突き出す。忘れるはずもない ―― 当時ポッチャマだったレビアたんは、女のブニャットの猛攻に圧倒され、戦い半ばで交代を余儀なくされた。そして、女のわずか2体のポケモンを倒すために、4体ものポケモンを使わざるをえなかったのだった。
「いいわよ!もう一度自己紹介してあげる!あたしはギンガ団幹部のマーズ!強くて美しいの!で、何?仲良しカップルのつもりで助けに来たの!?」
コウキは頬を赤らめた。
「許さない!許さない!!とにかく、あなたもやっつけるから!」

マーズはゴルバットLv.37を、彼女はハルを繰り出した。あの時と同じ顔合わせだ。ハルは空高く舞い上がり、ゴルバットに向かって突っ込んだ。噛みつく攻撃を受けたが、更に電光石火を食らわせ、ゴルバットを地に叩きつけた。
ドーミラーLv.37には、同じドーミラーのアロスをぶつける。ドーミラーは体を高速回転させ、アロスに体当たりした。火花が飛び散る。鋼タイプの技、ジャイロボールだ。アロスは妖しい光と催眠術を使い、相手の動きを完全に封じた。オリアに替え、スパークで倒す。

マーズは下唇を噛み、ブニャットLv.39を繰り出した。重戦車のような体は、以前よりも更に大きくなっている。彼女はマーズとブニャットを見据え、モンスターボールを開いた。レビアたんが出る。その眼は闘志に燃えている。
「レビアたん。時は来た。今こそ、仇敵を討ち果たせ!」
「ギョアッ!」
レビアたんは走り、草むらに飛び込んだ。ブニャットもそれを追う。レビアたんは精神を集中させ、気配を探った。
草が割れ、ブニャットが背後から襲いかかった。騙まし討ちだ。レビアたんは振り向き、翼に込めた秘密の力で応戦する。ブニャットは飛び退き、草の中に姿を消した。
……左だ!レビアたんは催眠術をかわし、すれ違いざまに秘密の力を敵の脳天に叩き込んだ。技を食らったブニャットは地に伏し、動きを止めた。秘密の力の追加効果 ―― 草地で使ったとき、それは相手を眠らせる。
「一気に仕留めろ!」
レビアたんは大波を起こし、連続でブニャットに叩きつけた。ブニャットは目を覚ますことなく、戦闘不能となった。

「ギョア―――ッ!!」
レビアたんは勝ち誇り、雄叫びを上げた。その体がまばゆい光を放つ。進化の時を迎えたのだ。
光が飛び散り、新たな姿を現す。2mを超える深い蒼色の体に、刃のような鋭さを持つ大きな翼。くちばしから伸びた三本の鋭い角は、さながら海神が持つ三叉の鉾を思わせる ―― 皇帝ポケモン・エンペルトは、威厳に満ちた姿を見せつけた。
「レビアたん!……本当に強くなったのだな」
彼女は感慨を込めて言った。

「また負けた……これで発電所でしょ!このシンジ湖でしょ!ギンガ団の幹部として……こんなことってありえない!!」
二度目の敗北に、マーズは平静を失っていた。
「……落ち着いて、マーズ。今回は、湖に眠っていた伝説のポケモンをアジトに運ぶのがあたしの仕事……そうよ!今回の仕事は大成功なのよ!お前たち!引き上げるよ!アジトでボスがお待ちかねよ!」
マーズは懸命に思考を切り替え、部下に撤退を命じた。再び、彼女に目を向ける。
「3つの湖のポケモンは、何かしら結びついてるのね。サターンが派手にやってくれたから、ここのエムリットってポケモンが眠っていた洞窟が出てきたの。きっと、仲間を助けようと目覚めたんでしょうけど、おかげでギンガ団、楽できちゃった!」
小悪魔のような笑みを浮かべ、誘うように言う。
「さて、感情の神エムリット……意思の神アグノム……そして、知識の神ユクシー……全てを集めたギンガ団が何をするのか、お楽しみに」
「エムリット、アグノム、ユクシー……」


ギンガ団が去り、彼女は2人にリッシ湖で起きたことを話した。
「そうか……リッシ湖でも伝説のポケモンがギンガ団に連れ去られたというのか……相手は大人の集団だ。お前たちが無事だっただけでも十分に嬉しいぞ。そうだ!エイチ湖。どうだろう?ジュンが心配だ!」

シンオウ北端の湖、エイチ湖 ―― そこには第三の伝説ポケモンが眠っている。

お小遣い778160円  ポケモン図鑑120匹(捕まえた数107匹)  バッジ6個  プレイ時間545:19



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#44
マサゴタウンポケモンセンター ―― ポケモンたちを休ませ、これまでにわかっていることを整理する。
湖の伝説ポケモン3匹のうち、2匹は既にギンガ団の手に落ち、残り1匹はエイチ湖にいる。エイチ湖にはジュンが向かっているが、そこに至る道のりは雪が絶え間なく降り、非常に過酷だという。いくら足の速い彼でも、相当に時間がかかることは想像に難くない。彼は間に合わず、ポケモンは奪われるだろう。
湖は諦める。キッサキジムに挑み、高めた力でギンガ団アジトを一気に叩き潰す ―― 非情なようだが、それが最善の策だ。

彼女はパソコンに向かい、ポケモンボックスをチェックした。
「……?」
妙なことに気づいた。未孵化のタマゴが2個あるのだ。ジム戦を前に、鋼鉄島でゲンからもらったタマゴを預けたときには、ボックス内のタマゴは確かにそれ1個だけだった。片方がそれだとすれば、もう片方は一体何なのか?
彼女は2個のタマゴを引き出し、バッグに入れた。孵してみればわかることだ。

ミオシティに飛び、鋼鉄島行きの船に乗る。受け取った場所で孵せばいい記念になるだろう、という思いつきだ。それに、新しく秘伝技・怪力用のポケモンも欲しい。目星をつけたのはハガネールだ。

島に到着し、坑道に潜る。見かけるのはゴローンやゴルバットばかりだ。シルエットからハガネールかと思いきや、イワークだったりする。狙いのものはなかなか現れない。
そうこうしているうちに、1個のタマゴが揺れ始めた。バッグから取り出し、床に置いて待つ。間もなく殻にひびが入り、破片が飛んだ。
中から現れたのは、青い、子犬のようなポケモンだった。図鑑によれば名前は「リオル」、格闘タイプのポケモンだ。ルカリオの進化前らしく、よく似ている。彼女はそれを抱き上げ、顔をじっくりと眺めた。リオルも黙って見つめ返す。
ゲンもルカリオを連れていた。こちらが彼からのものだろう。では、もう1つは……

岩の間から長い体を滑らせ、野性のハガネールが這い出てきた。やや小ぶりなようだが、秘伝用としては十分だろう。ロネを出して瓦割りでHPを削り、アロスに替えて催眠術で眠らせる。ハイパーボールで無事捕獲した。

少し歩くと、もう1つのタマゴが揺れた。殻が割れ、中から現れたのは、小柄な鳥ポケモンだった。頭部は音符のような形をしており、羽毛は黒・白・青・黄・緑と派手な色をしている。彼女は図鑑を確認した。それはハスキーな声で鳴いた。
「ペラップ〜」
「ペラップ……人の言葉を真似るのか。面白い奴だ」
「オモシロイヤツダ、ヤツダ〜」

ミオに戻る。3匹にはそれぞれ、「バッサ」(リオル)、「ボット」(ハガネール)、「カミオ」(ペラップ)と名付けた。ボットには秘伝マシンを使い、さっそく怪力、加えて岩砕きを覚えさせた。
「お前はあたしと一緒に来い。お前の親との約束だ」
バッサはこくりとうなずき、モンスターボールに入った。
「お前は残れ。残念だが、今はハル以外に背中を任せようとは思わないのだ」
「オモワナイノダ、ノダ〜」
騒ぐカミオをボールに押し込み、ボックスに預けた。しかし、このポケモンは、なぜそこに紛れ込んでいたのだろう?


荒れた抜け道に来た。これからの旅は、より厳しいものになる。それに耐えうるよう、バッサを鍛えようというのだ。
まずはバッサに学習装置を持たせ、パチリスたちが代わって戦う。キメリ(パチリス)は電光石火で野生のズバットを次々と落としていく。バッサは彼女の傍らでそれをじっと見ていた。

……どうもレベルの上がりがよくない。図鑑でチェックしてみたところ、経験値が規定の半分しか入っていないようだ。学習装置の故障だろうか?
「ペラップ〜」
鳴き声のするほうを見ると、そこにはカミオがいた。確かに、ここに来る前にボックスに預けたはずだ!しかも、学習装置をぶら下げている。このせいで経験値が分散していたのだ。彼女は怒り、叫んだ。
「お前!どうやってここに!?」
「ドウヤッテココニ、ココニ〜」
「……もういい、勝手にしろ!」
「カッテニシロ、シロ〜」
馬鹿にされているとしか思えない……彼女は頭を抱えた。

ある程度レベルが上がったところで、バッサから学習装置を外し、自分で戦わせることにする。バッサはキメリのお手本通りに、電光石火でズバットを落としていく。なかなかに筋がいい。それに比べて、カミオはあさっての方向を向いて羽づくろいをしているだけだ。そのくせ、学習装置の効果でレベルだけは着実に上がっている。
特訓を続けた結果、バッサはLv.21でルカリオに進化した。
「よくやった!お前は健気だな」
「……」
バッサは無言でうなずいた。少し嬉しそうだ。ここで切り上げ、いよいよリッシ湖に向かう!

彼女はハルの空を飛ぶを使い、ハクタイシティに降り立った。カミオも少し距離を置いてついて来ている。バッサには再び学習装置を持たせた。レベルが上がったとはいえ、主要メンバーとの間にはまだ10以上の開きがあるためだ。バッサと秘伝用のボット、それにおまけのカミオを除き、実質3匹で難路に挑むことになる。

211番道路を通り、テンガン山の地下に広がる洞窟に入る。ボットは尾で小さな岩を砕き、頭で大きな岩を押し、進路を確保する。技マシン69「ロックカット」を拾った。体を磨き上げ、空気抵抗を減らすことで素早さを上げる岩タイプの技だ。
下層に降りると、霧がかかっていた。ハルの霧払いで消し去る。野性ポケモンのレベルが急に上がった。洞窟だけあってズバットが多い。その中で、未捕獲だったピッピを捕獲した。
巨大な地底湖があった。試しに糸を垂れてみたが、かかるのはコイキングやドジョッチばかりで、目新しいポケモンは見つからなかった。

坂を上ると、気温が急激に下がった。用意しておいた黒いフード付のマントを羽織る。洞窟の出口からは、外光と共に冷たい外気が流れ込んでくる。そこを抜けると、一面の銀世界が広がった。雪がしんしんと降っている。

待ち受けるトレーナーたち、そして、過酷な自然との戦いが始まる。

お小遣い778160円  ポケモン図鑑120匹(捕まえた数108匹)  バッジ6個  プレイ時間555:15

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