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P‐LOG ダイヤモンド編

#37
「オーホッホッホ!!」

大仰な笑い声が石造りの広間に響き渡る。メリッサはくるりとターンし、裾が膨らんだ紫のドレスを翻してみせた。
「お待ちしてました!!アタシ、この国に来て、いっぱいべんきょーしました。この町、コンテストします。だからアタシ、こんなかっこう。ポケモンのこともべんきょーした。そしたら、ジムリーダーになりました」
「フン。戦いを挑まれて逃げ、隠れるような奴でもなれるのか。程度が知れる」
彼女の挑発にも、メリッサは微笑を崩さない。絶対的な自信の表れだ。いや、言葉の勉強が足りないだけかもしれない。
「えーと、だからアナタ、チャレンジしなさい。アタシ、勝ってみせます。それが、ジムリーダー!」

メリッサはフワライドLv.32を、彼女はアスタ(フワンテ)を繰り出した。気球ポケモン・フワライドは、風船ポケモン・フワンテの進化形だ。体の大きさは約3倍、触手の数は2本から4本に増えている。
「妖しい風」
2匹は体を膨らませ、妖気の混じった風を噴き出した。互いに効果は抜群……だが、まだ余裕があるフワライドに対し、アスタは何とか持ちこたえているという状態だ。やはり、進化とレベルの差からくる能力の差は大きい。アスタを戻し、オリア(レントラー)を出す。
オリアは全身に電気をまとい、フワライドに向かって突っ込んだ。電撃をくらったフワライドのHPがたちまちゼロになる。それと同時に特性「誘爆」が発動した。フワライドは小爆発を起こし、オリアを巻き添えにした。
オリアの傷は深くはないが、後を引くことは間違いない。敵を惑わし不意を突く奇策……これは手始めに過ぎない。

2匹目はムウマの進化形、マジカルポケモン・ムウマージLv.36だ。頭部は三角帽子をかぶったような形をしており、スカート状の胴体は下に長く延びている。さながら魔女のようだ。それは赤子の泣き声にも似た不気味な声を上げた。
「ォギャアアアァァ!」
ムウマージが動いた。そのスピードは凄まじく、オリアはまるでついていくことができない。突然ムウマージが眼前に現れ、妖しい光を放った。オリアは混乱しつつも、噛みつく攻撃で相手に大ダメージを与えた。
しかしそれも束の間、ムウマージはオボンの実で体力を回復させ、黒いエネルギーの塊を放った。シャドーボールだ。

その瞬間、彼女は素早くポケモンを入れ替えた。ハル(ムクバード)だ。エネルギーはハルの体をすり抜け、壁にぶつかって消滅した。ノーマルタイプの技がゴーストタイプのポケモンに効かないのと同様、ゴーストタイプの技もノーマルタイプのポケモンには効かないのだ。
技を放つ前に気づいたからこそ、交代は成功した。彼女の見事な読みに、メリッサは初めて驚きの表情を見せた。
ムウマージのマジカルリーフとハルのつばめ返しが激しくぶつかり合う!2匹は床に叩きつけられた。
立ち上がったのは……ハルだ。

「あら?最後の1匹ダワ」

メリッサはゴースの最終進化形、シャドーポケモン・ゲンガーLv.34を繰り出した。ずんぐりとした黒い体には赤く光る目と大きな口があり、太く短い手足が生えている。レビアたん(ポッタイシ)が出る。
メリッサに焦りの色が垣間見える。ゲンガーは妖しい光を放ってレビアたんを混乱させ、毒を帯びた手で攻撃する毒突きを繰り出した。レビアたんの足元から水が湧き出し、大波となってゲンガーを押し流した。波乗りだ。ゲンガーのHPが半減する。
「ガンバリマショ!」
レビアたんを戻し、毒が効かないアロス(ドーミラー)に替える。すかさずゲンガーはアロスに取り付き、ゴーストタイプの技・シャドークローで斬りかかった。連続での攻撃に、アロスのHPが削られていく。

だが、彼女は落ち着き払っていた。
「メリッサ……お前は今、自分が読み勝った、と思っているのだろう。そして、一気に勝負を決めに出た……だが、その油断が命取りだ。確か、正攻法に対する奇策こそが、ゴースト使いの本分なのだったな」
メリッサは言葉の意味が掴めず、困惑の表情を浮かべた。
「アロス、妖しい光だ!」
アロスは目をカッと見開き、妖しい光を放った。それを目にしたゲンガーは混乱し、自らを傷つけた。メリッサの顔から血の気が引いていく。彼女は再びレビアたんを出し、言い放った。
「終幕だ。カーテンコールはない」
レビアたんは翼を大きく広げ、湧き上がる水を叩きつけた。ゲンガーは吹き飛び、そのまま気を失った。

メリッサはポケモンを戻し、残念そうに言った。
「アタシ、ビックリです!アナタも、アナタのポケモンも、とてもつよーい!その強さをたたえ、このジムバッジわたします」
レリックバッジを受け取った。銀色の円を中心に、3つの紫色の円が配置されている。
「そのバッジ持ってると、秘伝のなみのり使えます。あと、この技マシンも……アナタなら使いこなせる。アタシ、そー思う」
技マシン65「シャドークロー」を受け取った。急所に当たりやすい、ゴーストタイプの攻撃技だ。
「ジムバッジが5つ……でも、シンオウにはまだまだ強いトレーナーがたくさんいること、忘れないで。ひとつひとつ強くなっていくといいよ」
「ああ、わかっている。それと、程度が知れると言ったのは取り消す。ヨスガシティのジムリーダー・メリッサは実に強かった」
メリッサはにっこりと笑った。レビアたん、オリア、アロスはLv.31に、アスタはLv.30になっていた。


「おお!シィ!ジムリーダーに勝ったのか!何というか、お前はどこまでも強くなる!そんな気がするぜ」
エントランスで待つサングラスの男は興奮気味に話し、余計な一言を付け加えた。
「もっとも、みんなに同じことを言ってる俺だけどな」

男をぶっ飛ばしてジムを出ると、そこにはシロナがいた。
「会えてよかった!探してたんだ、君のこと」
「あのお守りなら、間違いなく渡したが」
「うん。おばあちゃんからカンナギでのこと、聞いたの。遺跡のこと、ありがとうね!」
「ギンガ団の雑魚のことか。目障りだからブッ飛ばした、それだけだ」
シロナは空を見上げた。
「それにしても……ギンガ団って……!!宇宙を創り出すとか、おかしな格好でおかしなことを言ってるだけ、そう思っていたけど、意外と困った人たちね。独り占めとか、そういうのダメよ!」
向き直って言う。
「ところでさ、遺跡、面白かった?」
「あ、ああ」
「よかったらなんだけど、ミオシティにね図書館があって、大昔の本が読めるのね。君がポケモン図鑑を完成させるのに役立つかも!ぜひ、行ってごらんよ。それじゃ、バイバイ!」

彼女は西へ、シロナは東へ……それぞれの旅は続く。同じバングルを持つ者2人、再び巡り会うそのときまで。

お小遣い719136円  ポケモン図鑑102匹(捕まえた数91匹)  バッジ5個  プレイ時間406:39



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#38
夜、ヨスガシティポケモンセンターの寝室 ―― 彼女は小さな明かりだけを点け、地図を眺めていた。次のジムはシンオウ地方西端の町、ミオシティにある。シロナが言っていた図書館も気になる。カンナギ遺跡の壁画に描かれていた、既視感のあるポケモンたち……それに関する文献が見つかるかもしれない。

今日はここまでだ。眠ろうと、上衣を脱ぐ。カットソーが右手首で引っかかった ―― そこにある灰色のバングルに。
―― 「 C I F E R
5文字のまま!?何も変化がない!……ジムバッジを得るたびに、1文字ずつ増えていくのではなかったのか?何か別の条件があるのか?それとも、文字列はこれで完成なのか?
彼女はベッドに倒れ込んだ。
「サイファー」と読めなくもない。これが自分の本当の名前なのだろうか?……いや……


「答えは、旅の終わりにある」

「……!」
彼女は目を開けた。カーテンの隙間から光が差している。もう、朝だ。いつの間にか眠ってしまったらしい。
少女の声が確かに聞こえた……行き着くところまで行くしかない、ということか。

彼女はソノオタウンに降り立った。地図によれば、この北には製鉄所があるらしい。調べ残しはなくしておきたい。そこへ行くには、205番道路を流れる川を下る必要がある。まずは谷間の発電所で、波乗りでの移動を試してみることにする。
「頼むぞ」
「ギョアッ!」
レビアたんが静かに川に飛び込み、彼女はその背中にそっと乗った。水面に波紋が広がり、それが戻る。喫水にほとんど変化はない。秘伝技は触れた水を操り、体を上方に押し上げる力を加える。その力は推進にも用いられる。
レビアたんは人を乗せるには小さく、乗り心地はかなり窮屈だ。スピードはあまり出ない。川面を漂う半透明の大きな塊にぶつかった。クラゲポケモン・メノクラゲだ。更に、その2倍近い大きさがある、進化形のドククラゲも現れた。次々と捕獲する。発電所の裏手で、技マシン24「10万ボルト」を見つけた。


のんびりと川を下っていく。川筋が曲がりくねり、流れが急な場所もあった。しばらく行くと、巨大な建造物群が見えてきた。高い煙突からは白い煙が立ち上っている。
「『タタラ製鉄所』 炎の溶鉱炉」
ヘルメットを借りて中に入る。溶けた鉄が流れる室内は非常に暑い。通路を歩いていると、急に床が動き出した。自動的に先に送られ、壁を蹴ってようやく止まることができた。どうやら矢印のついたパネルを踏むと、床が動く作りになっているらしい。
場内をぐるぐると回っていると、作業員に出くわした。
「特殊な床のせいで、好きなところに行けなくてイライラしてるんじゃないのか?」
男は火の馬ポケモン・ギャロップを繰り出した。ポニータの進化形で、額からは1本の角が生えている。ロネ(グレッグル)は強烈な突進を受け、炎の渦に閉じ込められたが、瓦割りで辛くもギャロップを倒すことができた。
「働くおじさんの汗は美しい……そして、負けて流れる涙も美しい……」

技マシン35「火炎放射」を見つけた。高炉の近くで汗だくになっているスーツ姿の男がいた。社長のタタラ氏だ。
「やあやあ。よくここまで来れたね!製鉄所の中の移動をらくちんにしようとして、勝手に動いちゃう床にしたら、目が回る!って怒られてね……
「お前のせいか」
社長から見学の記念にと、炎の石をもらった。

対岸の道は花畑に通じていた。持たせると草タイプの技の威力が上がる「奇跡の種」などを拾い、ソノオタウンに戻った。

「おめでとうございます!パソコンに預けているパチッチョちゃんのIDが見事に合っていましたよ!何と、5桁すべて合っていました!特等ですよ!すごい!!」
「……で?」
テレビコトブキ ―― 受付の女は、まるで自分が当選したかのようにはしゃいでいたが、彼女の冷めた声に我に返った。
「……あっ、賞品ですよね。興奮して忘れてました。さあ、こちらをどうぞ!」
女は最高の笑顔で、小さなアルミ製のケースを差し出した。蓋を開けると、そこには紫色のボールが入っていた。「M」のマークがある。どんなポケモンでも必ず捕獲できるという、究極のモンスターボール ―― 「マスターボール」だ。
「ぜひ、またお越しくださいね!」
他のボールで足りるとは思うが、あるに越したことはない。彼女はそれをバッグのボールポケットに無造作に放り込んだ。

町の西ゲートを抜け、218番道路に来た。目の前に海が広がる。ここに初めて来たのは、フタバタウンを旅立って間もない頃だった。いい釣り竿を使うと、紺と水色の体に鮮やかなピンクの模様が入ったケイコウオがかかった。すぐさま捕獲する。

桟橋から海に出る。野生のメノクラゲやキャモメを避けつつ進み、対岸に上陸した。岸辺にいたトレーナーを片付け、ミオシティに続くゲートに入る。
「シィさん、お久しぶりです」
眼鏡の男が彼女を呼び止めた。
「……あ?」
「なんですか?その顔は。誰?って、言ってますね。ナナカマド博士の助手であり、コウキの父親ですよ!?博士に頼まれて、君のポケモン図鑑パワーアップするため、なんとなくここで待っていたのです。それでは、シィさんのポケモン図鑑を貸してください!」
図鑑を渡すと、コウキの父はメモリカードを最新のものと差し替えた。
はい!これでポケモン図鑑、パワーアップできました!では、パワーアップの内容を説明させていただきます。ずばり、雄雌の姿を切り替えて見られるのです!」
「ふーん」
「それでは、博士のお手伝い……もお願いするのですが、ギンガ団はどうなっていますか?いやあ、コトブキでのことを博士が気にしていたもので……まあ、何もないでしょうけど。それでは、失礼しますね!」

さあ、ミオシティだ。

お小遣い662582円  ポケモン図鑑109匹(捕まえた数98匹)  バッジ5個  プレイ時間441:07



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#39
「ここはミオシティ 水面に映える町」
異国情緒あふれる港町、ミオシティ ―― 町の中央を大きな運河が通り、船着場には大小様々な船が停泊している。ポケモンセンターに寄り、街を見て回る。

1軒の民家に入ると、起きているのか眠っているのか、よくわからない老人が椅子に座っていた。
「えーと……わしは誰じゃったっけっか?………………………………おお、そうじゃ!わしは忘れ爺さんじゃ!おぬし、ポケモンの技を忘れさせに来たのじゃな?」
通常、一度覚えさせれば消すことができない秘伝技をも、この老人の手に掛かれば忘れさせることができる。そして、替わりに新しい技を覚えられるようになるのだ。
「技を忘れさせたくなったら、わしのことを思い出すのじゃぞ!」
別の家では、お互いの特性を入れ替える、技マシン48「スキルスワップ」をもらった。

運河に架かる跳ね橋を渡る。その中程まで来たとき、例の爆音が響いてきた。ジュンだ。猛スピードで走ってきた彼は、彼女の間合いの外でぴたりと止まった。
「おっと!シィかよ!」
「……」
「この先のポケモンジムに挑戦するつもりだな!じゃあ、オレが挑戦できるか、たしかめてやるよ!ついさっきジムバッジをもらったばかりのオレがさ!」
ノモセでの戦いが脳裏をよぎる。彼女は気乗りしなかった。
ジュンはムクバードLv.31を、彼女はハルを繰り出した。同種、同レベル同士の対決だ。ハルはムクバードが影分身をするよりも早く、燕返しで斬りつけた。燕返しと突進が交錯し、攻撃の反動を受けたジュンのムクバードが倒れた。

次はポニータLv.32だ。レビアたんは炎の渦を受けながらも、ポニータを波乗りで押し流した。
ハヤシガメLv.35にアスタを出す。アスタは葉っぱカッターやメガドレインを耐えつつ、風起こしでハヤシガメのHPを削り、妖しい風でとどめを刺した。
ブイゼルLv.32を、オリアはスパークで倒した。

ジュンは最後の1匹、ヘラクロスLv.30を繰り出した。彼の新しいポケモンだ。彼女は再びハルを出した。
「こんなピンチ、何度もはね返してきたんだぜ!!」
ハルは空高く舞い上がり、ヘラクロスの燕返しは空を切った。そして急降下し、一撃を食らわせた。4倍弱点である飛行タイプの技に、ヘラクロスが耐えられるはずもない。勝負あった。
「なんだってんだよーッ!オレ、負けちまったよ!?」
ポケモンのレベルは上げてきている。前より幾分ましになっただろうか。

「あいかわらず、オレより少しだけ強いな……」
彼が漏らした意外な言葉に、彼女は一瞬戸惑った。
「……フン、わかればいいんだ!わかれば」
「だけど、言っておくぜ!ポケモンリーグに挑戦してチャンピオンになるのは、このオレだからな!ま、おまえなら、ここのジムリーダーに勝てるだろ!さっさと勝負してこいよ!」
ジュンは親指を立ててみせ、走っていった。生意気にも、激励しているつもりらしい。彼女は微笑みでその後姿を見送った。

「ミオ図書館」
橋を渡ったすぐ先にそれはあった。歴史を感じさせる石作りの建物だ。
「はい!ここはミオ図書館です。建物の中では静かにお願いしますね」
案内係の女は声が妙に大きい。天井に届く大きな書架がずらりと並び、独特の本のにおいが漂う。彼女は場所を尋ねた。

3階、伝説・民話の棚を見る。いくつか手に取り、読んでみる。

「シンオウ地方の神話」
昔シンオウができた時、ポケモンと人はお互いに物を送り、物を送られ、支えあっていた。
そこで、あるポケモンはいつも人を助けてやるため、人の前に現れるよう、他のポケモンに話した。
それからだ。人が草むらに入ると、ポケモンが飛び出すようになったのは。

「トバリの神話」
剣を手に入れた若者がいた。それで、食べ物となるポケモンをむやみやたらと捕らえまくった。余ったので捨ててしまった。
次の年、何も獲れなかった。ポケモンは姿を見せなくなった。
若者は長い旅の後、ポケモンを見つけ出し、尋ねた。どうして姿を隠すのか?
ポケモンは静かに答えた。お前が剣を振るい、仲間を傷つけるなら、私たちは爪と牙でお前の仲間を傷つけよう。
許せよ、私の仲間たちを守るために大事なことだ。
若者は叫んだ。お前たちポケモンが生きていること、剣を持ってから忘れていた。
もう、こんな野蛮なことはしない。剣もいらない。だから許してほしい。
若者は剣を地面に叩きつけて折ってみせた。ポケモンはそれを見ると、どこかに消えていった。

不思議だ……読んでいて、文字以上の情景が浮んでくる。まるで、その眼で見たかのように。
だが、次の1冊は違った。それを読み終えた彼女は、説明し難い違和感を覚えた。

「始まりの話」
始めにあったのは混沌のうねりだけだった。
全てが混ざり合い、中心に卵が現れた。こぼれ落ちた卵より、最初の者が生まれ出た。
最初の者は二つの分身を作った。時間が回り始めた。空間が広がり始めた。
更に、自分の体から三つの命を生み出した。
二つの分身が祈ると、物というものが生まれた。三つの命が祈ると、心というものが生まれた。
世界が創り出されたので、最初の者は眠りについた。

お小遣い731404円  ポケモン図鑑111匹(捕まえた数100匹)  バッジ5個  プレイ時間463:24



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#40
図書館を出た彼女は、ポケモンジムの前にいた。今のレベルでもジム戦を勝つだけなら可能だろうが、楽しむにはやや足りない。バトルサーチャーで対戦相手を募るか、それとも野性ポケモンと戦うか……どこかいい場所はないものだろうか。
「ここのジムリーダーやトレーナーは、鋼鉄島に出かけていって、ポケモンと己を鍛えているぞ!」
通りすがりの老人が言った。その島へは連絡船で行けるらしい。さっそく船着場に向かう。

船着場に泊まる連絡船に乗り込む。出航の時刻になると、船は汽笛を上げ、ゆっくりと動き出した。キリキリという音を立ててワイヤーが巻き上がり、跳ね橋が上がる。運河を出た船はスピードを上げた。

船を降りる。ハクタイシティの沖合いに浮かぶ小さな鉱山の島、「鋼鉄島」。良質の鉄鉱石を産出することからこの名がついた。岩盤が露出し、草木はまばらに生えるのみだ。島に1軒だけある民家には誰もいなかった。長い階段を登り、中腹にある入り口から坑道に入る。

坑道を歩いていると、向こうから野性のゴローンが転がり出てきた。ロネを出し、睨み合う。相手のレベルは31、瓦割り一撃で倒すのは難しく、仕損じれば自爆される可能性もある。不本意だが、ここは引くしかない。
曲がりくねる坑道を進むうち、トレーナーの少女に遭遇した。相手のムクバードに対し、先頭のロネを戻してオリアを出し、スパークで撃墜する。再びロネを出し、花のつぼみのようなポケモン、チェリムを瓦割りで倒した。
2匹とも31と、トレーナーの手持ちのレベルもやはり高い。なるほど、これはいい修行になりそうだ。厄介なゴローンはレビアたんの水技なら一撃、ロネももう少しレベルを上げれば一撃で倒せるようになるだろう。

作業用のリフトに乗り、更に深い階層へと降りていく。下りの階段が2つある。一方の階段を降りた先は、程なく行き止まりになっていた。そこで技マシン23「アイアンテール」を拾った。
もう一方の階段を降りる。そこには若い男が立っていた。
「……君は?」
深い青色の服とつば広の帽子、長めの前髪から覗く眼差しは強い意志を感じさせる。只者ではない雰囲気だ。
「そう、シィというのか」
そういえば、ジュンが似顔絵と名前が書かれたチラシをばら撒いていたのだった。
「私はゲン。いつもここで修行をする物好きなトレーナーだよ。よかったら一緒に行こう。何やらポケモンが騒がしい」
「……別に構わないが」


「昔はそれなりに栄えた鉱山だったけどね、今は鋼も採り尽くされたのか、ポケモンしかいないよ」
ゲンは語った。そのとき、2人の前に作業服にヘルメットという格好の男2人が現れた。紛らわしいが、トレーナーだ。男たちはイワークとイシツブテを繰り出した。
彼女はレビアたんを、ゲンはルカリオLv.34を繰り出した。ルカリオは太い骨の棍(こん)を逆手に構えている。使うは格闘・鋼タイプを持つ波導ポケモン ―― 果たして、この男の実力はいかほどのものなのか?

ルカリオはイワークの懐に素早く踏み込み、発勁を放った。頑強な岩の体が崩れ落ちる。イワークは砂嵐を起こしたが、骨で打ち据えるボーンラッシュでとどめを刺された。レビアたんはイシツブテ、続いて出たゴローンをバブル光線で次々と倒した。
男たちはハガネールと2匹目のイワークを繰り出した。鋼の体を持つ鉄蛇ポケモン・ハガネールは、岩蛇ポケモン・イワークの進化形だ。頑丈な大顎を持ち、体の一節おきから棘状の突起が突き出している。
ルカリオが発勁、レビアたんがバブル光線を放ち、集中攻撃でイワークを倒す。レビアたんはハガネールの尾を叩きつける攻撃を受けたが、ダメージは左程でもない。見かけ以下の攻撃力だ。2匹の攻撃にハガネールは地響きを上げ、倒れた。

「鋼ポケモンを使うポケモントレーナーが、鋼ポケモンと戦うのは……自分と戦うようなものかな。そうだね、他人よりも、自分に勝つのが難しいから」
ゲンは、レビアたんに傷薬を吹きかけながら言った。この男、ジムリーダー並み、もしくはそれ以上かもしれない。
「それにしても、ポケモンが騒ぐのはなぜだろう?気になる……先を急ごうか」

ゲンと組み、トレーナーたちを次々と倒していく。彼女のポケモンのレベルは着実に上がっていった。

岩場に座り込む不審な2人組を見つけた。ギンガ団だ。開いたトランクには、大量のモンスターボールが詰まっている。それを見たゲンは男たちに詰め寄った。
「なるほど、君たちがポケモンが騒ぐ理由か。この鉱山に、どんな理由でも騒ぎを持ち込んでほしくないな」
男たちはトランクを閉め、立ち上がった。
「ギンガ団の俺らは全てのポケモンを奪うのだ!なあ、相棒!」
「おう、ブラザー!というわけで、この寂れた鋼鉄島のポケモン、全部奪っちゃいます!」
ゲンは拳を握り締め、語気を強めた。
「全ての喜び、そして悲しみを分かち合う。それがシンオウに生きる全てのトレーナー、そしてポケモンの生き方だ。それを邪魔する者は許さない。さあ、シィ!この勝負、絶対に勝つよ!」
「ああ、当然だ!」

ギンガ団はニャルマーとズバットを、ゲンと彼女はルカリオとオリアを繰り出した。ルカリオとオリアは発勁、スパークでズバットとニャルマーを倒し、グレッグルと2匹目のズバットをボーンラッシュ、スパークで倒した。
ゴルバットは落としたものの、スカンプーは倒れず、煙幕を噴き出し始めた。2匹の攻撃はかすりもしない。次第に濃度を増す煙幕の中、スカンプーは辻斬りで反撃に出た。スカンプーの攻撃自体は高くはないが、辻斬りは急所に当たりやすい技、長期戦に持ち込まれるわけにはいかない。彼女はゲンに目配せし、叫んだ。
「オリア、ルカリオ!2人で円を描くように走って間合を詰めるんだ!」
高速で走る2匹が作り出す円は、少しずつその径を狭めていく。ついにオリアのスパークがスカンプーを捉えた。ギンガ団に戦えるポケモンはもういない。

「まいった!凄いコンビネーションだ!お前ら2人、そしてポケモンと……相棒、帰ろうぜ!」
「だな、ブラザー!大体今、ギンガ団どうなってるかわかんないぜ」
煙幕が晴れていく中、ギンガ団の男たちはトランクを置いて逃げていった。


「君のおかげで助かったよ。良ければ、このポケモンのタマゴ、君がもらってくれないか?」
「任せてくれ」
彼女はゲンから、カプセルに入った1個のタマゴを受け取った。
「ありがとう!そのタマゴから生まれてくるポケモンに、いろんな世界を見せてあげてほしい。君と一緒にいて、とても面白かった。私もいろんな場所で自分の力、試そうと思う。じゃあ、また会おう!気をつけて帰るんだよ」
「ああ。次はあんたと戦ってみたいものだ」

帰りの連絡船の中で、彼女はジム戦の策を練っていった。レビアたんはLv.34に、オリア、アロス、ロネ、アスタはLv.33になっていた。いい戦いができそうだ……

ゲンから受け取ったポケモンのタマゴ ―― 後にそれは、波乱を巻き起こす。

お小遣い747576円  ポケモン図鑑113匹(捕まえた数100匹)  バッジ5個  プレイ時間465:23

INDEX 目次前項37383940メモ次項