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P‐LOG ダイヤモンド編

#0
暗雲が空を覆い、風が草木を揺らす。毛皮を身に付けた1人の若い男、そして十数匹のポケモンたちが、山あいの草地で対峙していた。男は声を振り絞り、ポケモンたちに訴えかけた。
「お前たちポケモンが生きていること、剣を持ってから忘れていた……もう、こんな野蛮なことはしない!剣もいらない!だから許してほしい……!」
男は剣を抜き、鞘を投げた。ポケモンたちが一瞬ざわつく。鋼ポケモンの角から研ぎ出したその剣は、刃がこぼれ、乾いた血がこびりついている。
男は剣を振り上げ、渾身の力で岩に叩きつけた。金属音が辺りに響く。何度も、何度も、何度も。ついにそれは二つに折れた。
「ううう……」
男は膝をつき、涙を流した。ポケモンたちはその様を見、草陰へと消えていった。
ぽつぽつと雨が降り出す。男は折れた剣先を拾い、自らの喉に向けた。

「生きて償え」
その声に男は手を止めた。目の前に黒尽くめの少女が立っている。ブロンドの髪を長く垂らし、ぴったりとした服にマントを羽織っている。
「お前は自分がこれまで行ってきたこと、感じたことを皆に伝えるのだ。人が二度と過ちを犯さぬようにな。それが償いになる」
手から剣先が落ちる。男は突っ伏し、泣き叫んだ。
「わあああああ!!」
少女は何かを感じ取った。とっさに左手を突き上げ、防御フィールドを張る。雲が光り、落ちた雷が視界を白に染める。


2人とも無事だ。少女は空を見上げた。感じた気配は既に消えている。今の雷は自然現象などではない。電気エネルギーと波導とを混ぜ合わせた、指向性を持つ「技」だ。あのざらついた波導はいったい……
男は依然伏したままだ。少女は苛立ち、右手にボールを持った。その手首に澄んだ青色をした二重のバングルが光る。ポケモンを出し、命じる。
「レビアタン、その軟弱者を岩屋にでも放り込んでおけ!」
「ギュア!」
「え?」
エンペルトは男の襟首を掴み、近くの岩屋へと運んだ。ボールに戻す。少女の体がふわりと浮き、弾丸のように飛んだ。

少女は雲を抜け、頭上に開いた穴に飛び込んだ。上昇し、無機質な灰色のチューブを抜ける。

空の青と木々の緑がまぶしい。数多くのポケモンが空を飛び、地を駆け、湖を泳いでいる ―― 小島の遥か上空に浮かぶ灰白色の巨大な球体。その内部には地上と変わりない自然がある。少女は湖のほとりに建つ白亜の建物に入った。
コントロールルームの扉が開く。白いローブをまとった短い髪の少女が振り返った。
「シィ!」
「エル」
少女はうなずき、視線を戻してキーを叩いた。メインディスプレイに地図が映し出され、いくつもの光が点滅する。
「全星規模で異常な雷雲が発生しているの。座標43.39N-3.00W、島の最高峰付近に、その原因と考えられる高エネルギー体の出現を確認。パターンからして、そこにあるのはおそらく、この船と同タイプの恒星間宇宙船……」
「……つまり、我々と同じ生き残りだと?」
「ええ」
「しかし、友好的とは言い難い。あたしが話してこよう。そういう交渉は得意だからな」
「くれぐれも無理はしないで、シィ」
「わかっている。あたしが出次第、空間潜行を」


球体はゆっくりと光の輪の中に沈み、姿を消した。次第に強まる風雨の中、少女は海面近くを飛ぶ。
彼女は突然に止まった。
「!!……ベルゼビュート。何が起こっているというのだ!?」
最強を誇るドラゴンポケモン、その波導が急激に高まり、そして消失した。少女は下唇を噛み、スピードを上げた。

丘陵地帯を越え、山脈を望む。最高峰の直上に浮かぶ暗灰色の巨大な球体が視認できた。上半球は雲に隠れている。球体の下方からビームが伸び、少女はテレポートでそれをかわした。

出現と共に感じた背後の気配に蹴りを加える。男はそれを片手で止めた。不敵に笑う口元が見える。男は体を捻って繰り出す二撃目をかわし、間合いを取った。痩身長躯、波打つ黒髪を持ち、白いローブを身に付けている。

「黒いポケモンを見なかったか?」
少女が口を開いた。
「ああ、見たとも。あれは私を見るなり飛びかかってきたのでね、異空間に閉じ込めさせてもらったよ」
「あいつらしいな……あたしも同じ意見だ。お前が誰かは知らないが、害意を持つ者だとはわかる。この星から去れ」
男は笑い、両手に持った2個のボールを開いた。光が伸び、巨体を形作る。胸に結晶を持つ四つ足の青いポケモン、そして肩に結晶を持つ二つ足の白いポケモンだ。2体は咆哮を上げる。
「グギュグバァッ!!」
「ガギャギャァッ!!」
「ディアルガにパルキア、あんなものまで……交渉は決裂か。ならば!」
少女は6個のボールを一斉に開いた。ポケモンたちが飛び出す!
「行け!レビアタン!バッサーゴ!オリアス!フォルネウス!アスタロト!アロケル!」

星空が見える。彼女は右手を顔の前へと運んだ。青い一重のバングルがそこにある。
体を起こす。ポケモンリーグ・チャンピオンの間の扉の前にいる。ポケッチを確認したが、気を失っていたのは、ほんの数分間だったようだ。

彼女は立ち上がった。その体に力がみなぎる。

お小遣い------円  ポケモン図鑑---匹(捕まえた数---匹)  バッジ-個  プレイ時間---:--



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#61
重々しい音を立て、最後の扉が開く。暗い。中に入ると扉は閉じた。
床に青い灯がともった。それはゆっくりと回転し、大きな二重円を描く。少し遅れて照明が点き、彼女は明暗の急激な変化に目を細めた。白一色の天井、壁、床が光を反射する。円で囲まれた部分がバトルフィールドとなる。

部屋に足音が高く響く。黒いヒール、ブーツカットのパンツ、ファー付きのロングコート、女は緩やかに波打ったブロンドをなびかせ、歩く。
―― シロナだ。

彼女に驚く様子はない。わかっていたことだ。シロナは人懐っこく微笑みかけた。
「元気にしてた?」
「ああ。いろいろとあった」
「そう。テンガン山のこと、感謝しています。どんな困難にぶつかっても、ポケモンと乗り越えてきたのね。それは、どんなときでも自分に勝ってきたということ。そうして学んだ強さ、君たちから伝わってくる!」
「確かに。乗り越えるべきは、自分自身だ」
シロナは首を振って髪を払い、表情を引き締めた。緊張感が走る。
「さてと!ここに来た目的はわかってます!ポケモンリーグチャンピオンとして、君と戦います!」

彼女はマントを取り、投げ捨てた。ストレートのブロンドが揺れ、青いマフラー、黒いハイネックのカットソー、ベスト、スパッツ、チャコールグレーのミニスカート、ロングブーツがあらわになった。モンスターボールを構える。


「我が名はシィ。持てる力全てを尽くし、シロナ、お前を倒す!」


黒衣の2人はモンスターボールを投げる。シロナはミカルゲLv.61、シィはバッサ(ルカリオ)だ。ミカルゲは紫色の円盤状の体を持ち、その末端は要石のひび割れに繋がっている。
バッサが悪の波動を放ち、ミカルゲが怯んだ。その正体を見破る。タイプはゴースト・悪、通常は無効な格闘技が今、弱点となった。サイコキネシスを受けつつも、バッサは構えた。波導弾を撃つ。倒れたミカルゲは、ひび割れへと吸い込まれていった。

シロナの2体目はトリトドンLv.60、カラナクシの進化形だ。フォウ(ガブリアス)を出す。フォウは高く跳躍し、標的をめがけ頭から突っ込んだ。竜の大技・ドラゴンダイブだ。トリトドンに大ダメージを与える。反撃のストーンエッジは外れ、フォウは再度のドラゴンダイブでトリトドンを倒した。

3体目のガブリアスLv.66、これがシロナの主力だ。シィはアロス(ドータクン)を出した。瓦割りを受け、妖しい光を放つ。ガブリアスは混乱し、技を出すことすらままならない。アロスは体を高速回転させ、ジャイロボールの連続攻撃を仕掛ける。それはガブリアスのHPを着実に削っていく。オボンの実での回復もわずかな時間稼ぎに過ぎない。
ガブリアスの混乱が解けた。全身を光が包み、全力を賭けた突進でアロスを弾き飛ばす。ギガインパクトだ。だが、アロスは止まらない。攻撃の反動で動けないガブリアスに、ジャイロボールが止めを刺した。

4体目はミロカロスLv.63、体は蛇のように長く、鱗は虹色に輝いている。オリア(レントラー)を出す。オリアは雷の牙でミロカロスを怯ませ、睨み付けるで防御を下げる。ミロカロスの体が一瞬光を帯び、すぐに元に戻った。特殊攻撃で受けたダメージを2倍にして返す技・ミラーコート。物理攻撃に対しては無力だ。
オリアは全身を帯電させ、猛スピードで突っ込む。スパークを浴びたミロカロスは気を失い、フィールドに体を横たえた。

5体目はルカリオLv.63、バッサを出す。ルカリオ対ルカリオの同種対決だ。シロナのルカリオは右手を突き出し、紫のエネルギー波を放つ。竜の波動だ。バッサは構え、波導弾を撃ち込む。波導弾は竜の波動を貫き、シロナのルカリオを吹き飛ばした。勝負は一瞬で決した。

シロナは最後のボールを投げた。ロズレイドLv.60だ。
「ここまで追い詰められたの、いつ以来かしら!」
シィは満を持してレビアたん(エンペルト)を送った。ロズレイドはエナジーボールを放つ。攻撃を受けたレビアたんは翼を交差させ、振り下ろした。剣の舞により、攻撃力が倍増する。ロズレイドの神通力を弾く。
「……惜しい」
翼のエッジが鋼の光を帯び、硬質化していく。
「これほど楽しい勝負を、今ここで終わらせるのはな」
シロナは悔しげに微笑んだ。シィは叫ぶ。
「レビアたん、鋼の翼だ!!」
「ギュアッ!!」
レビアたんは体を回転させ、両翼の大剣で斬り付けた。ロズレイドは花びらを散らし、静かに倒れ伏した。
シィは最後の戦いを終えた ―― フタバタウンを旅立って以来、一度としてポケモンたちを瀕死にすることなく。


「……さっきまでの君は最強のチャレンジャー。そしてたった今、最高のポケモントレーナーとしてチャンピオンになったのね」
シロナはシィに歩み寄り、優しく語りかけた。
「お見事です。素晴らしい戦いだったわ。ポケモンが最大限力を発揮できるよう応援しつつ、冷静な判断で見事勝利した……その情熱と落ち着き、二つを併せ持つ君とポケモンなら、いつだって、どこでだって、どんなことでも乗り越えられる。戦っていて、そう思ったの!シンオウ地方の新しいチャンピオン誕生ね」
シロナが右手を差し出した。
「ああ……ありがとう」
シィは自然に応じた。2人は握手を交わす。手首のバングルは、シィの青に対し、シロナは灰色のまま ――
「さあ!そのリフトに乗って!」


リフトが上昇し、シロナの姿が小さくなっていく。
幾星霜の時を経て、2人のルシファーはわずかに違う時代に現れた。失くしたピースの代わりにパズルの隙間を埋めるように。
失われた記憶をシィは求め、シロナは求めなかった。

リフトが停止する。その先には、チャンピオンとなった者だけが入ることを許される、殿堂入りの部屋がある。照明はなく、暗闇が覆っている。

―― あたしは自分がいるべき場所に帰ろう。さらばだ。もう1人のあたしよ。

彼女は足音だけを残し、闇の中へと消えていった。


―――― 終 ――――


お小遣い893113円  ポケモン図鑑203匹(捕まえた数193匹)  バッジ8個  プレイ時間999:59

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